今回のお話は藍さんに聞いたお話です。
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うちの会社の社長はイケメンです。
私は自分の大きな胸がコンプレックスで、流石にもうだいぶん慣れましたが、それでも私の胸をじっと凝視する男の人の視線はあまり気持ちの良いものではありませんでした。
しかし、うちの社長はそんないやらしいそぶりは全く見せないさわやかな魅力にあふれた男性です。
まだ三十代後半で親の会社を継いで、やり手の実業家といった感じでした。
しかし、そんな社長がなぜあんな人を奥さんに選んだのかは私の中での七不思議のひとつでした。
あんな人とは私の高校の同級生で、この会社の同僚でもある絵梨花です。
うちの会社は家族経営で社長の奥さんである絵梨花も従業員として働いていました。
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その日の昼休み、私が翌日に行く仙台出張のガイドマップを見ているとその七不思議の同僚、絵梨花が話しかけてきました。
「ねえ、藍、明日から仙台に出張でしょ」
「え、ええ、そうだけど」
「いまねえ、イベントで東北にラプラスがいっぱい出るそうなのよ」
いつものことですが、珍妙なことを話し始めました。
「えっ、なに、ラプラス?」
聞きなれない単語に私が固まっていると、絵梨花が説明し始めました。
ラプラスというのは最近彼女がはまっているポケモンGOというゲームのモンスターでとんでもなくレアなものだということでした。
そして、そのレアなモンスターのラプラスがイベントで私の出張先の仙台によく出現するようになっているというのです。
「いや、私、ポケモンGOやったことないし・・・」
「大丈夫よ、すごく簡単だから」
彼女はスマホを取り出すと、強引にやり方を教えようとしてきました。
「む、無理よ・・・それにポケモンの一匹や二匹どうでもいいじゃない」
髪をツインテールにまとめた外見も中学生に見えてしまいそうなお子様でしたが、頭の中まで子供じみたゲームへの興味でいっぱいのようでした。
「何言ってるのよ、ラプラスよ、ラプラス、まったく胸にこんな大きなモンスターボールつけてるくせに!」
絵梨花は私の後ろに回り込んで、制服の上から私の胸をつかんできました。
悲鳴を上げる私を無視して、彼女は私の胸を揉みまくりました。
「うん、あれ、もしかしてまた大きくなった?」
思わず顔をこわばらせてしまった私に絵梨花はさらに力任せに胸を揉んで追及してきました。
「もう、いい加減にしてよ、そうよ、EカップからFカップになったわよ!」
「え、ええええ、えふ?!」
私の正直な告白に絵梨花は心臓が止まるような衝撃を受けているようでした。
「こら、さっきからいったい何をやってるんだ」
私達のやり取りに見かねたのか、社長が近づいて注意しにきました。
「ちょっと、パパ、藍の胸がFカップになったんだって!」
絵梨花が自分の旦那である社長にすがりつきました。
「だからそれがどうしたっていうんだ」
流石です、社長は卑猥な話題にも冷静に対応してくれました。
「あれ、興味ないの、そっかパパはいつも私の小さい胸が大好きって言ってるもんね」
絵梨花の衝撃の暴露に社長の顔からみるみる血の気が引いていくのが分かりました。
「ちょっと、お前何言ってるの、従業員たちの目の前よ!」
それは悲鳴にも似た絶叫でした。
「えっ、社長、まさかロリコン」
「そ、そんなわけないだろ、もうお前本当に死なないとその余計なおしゃべり止まらないの?」
「なによ、ちょっと藍に出張でラプラス捕まえてもらおうとしただけなのに!」
「彼女は仕事で行くんだぞ、何言ってるんだ!」
「あ、いや、そもそも、私、ガラケーだけでスマホ持ってないし」
私はお金もなく必要性も特に感じなかったので、いまだにスマホというものを持ったことがありませんでした。
「あっ、そうだったね、じゃあパパのスマホ貸すから」
絵梨花は私に社長のものと思われるスマホを差し出してきました。
「ちょっともう本当に馬鹿なの、何俺のスマホ貸すって、個人情報とか見られたくないプライベートな画像もあるのよ!」
「別に藍に見られて困るような画像なんて・・・ああ、巫女服のやつとかか」
「・・・えっ、社長・・・巫女服って?」
「もう、お前なんでまだ生きてるの、早く死んでくれよ!」
狂ったように叫ぶそれは祈りにも似た懇願だったのかもしれません。
そっか、社長、ロリコンで巫女服が好きなんだ・・・
もう男の人に幻想なんて抱きません、私はそう堅く心に誓いました。
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そのとき絵梨花の携帯に着信がありました。
「あっ、真央さんどうしたんですか、えっ、藍ですか、はい、隣にいますけど」
電話で私に代わってほしいと言われたようでした。
真央さんは神社の娘さんで、とても強い霊感を持つ女性でした。
社長の家族が懇意にしている関係もあり、私の周りで起こった心霊的な事件で何度かお世話になっていました。
「あっ、藍さんですか、突然すいません」
真央さんは神妙な口調で話し始めました。
「突拍子もないお話で申し訳ないのですが、ちょっと藍さんの良くないと思われる夢を見てしまいまして」
「えっ?」
「私がこのような夢を見るときは何かを警告する暗示のような場合が多いのですが」
「・・・予知夢のようなものでしょうか?」
「そうですね、しかし、私は今回の夢の意味が分からないんです」
「意味が分からない、いったいどんな夢を見たんですか?」
あの真央さんが私の凶事を暗示する夢を見たと言うのであれば穏やかではありません。
私は慎重に説明を聞こうと心の準備をしました。
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「・・・藍さんが、こんなことならラプラスのいるところを探していればよかったと叫びながら、どこかで生き埋めになる夢です」
話が一気におかしな方向へ移りました。
「藍さんの言っているラプラスという言葉と生き埋めになっていることの意味がよく分からないのですが、何か心当たりがありませんか?
私、ラプラスと言えばポケモンしか心当たりがないものでして・・・」
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・・・ていうか、これ仕込みでしょ。
ラプラスのいるところ、つまりこれから行く仙台でラプラスを探さないと生き埋めになるような事態になるなんて、そんなふざけた予知夢があるかと思いました。
あの真面目な真央さんにこんなばかばかしい芝居までさせていることに私は心底呆れてしまい、特に心当たりはないとお断りして電話を切りました。
私が絵梨花に文句を言おうと思ったところへ社長の娘さんの椎奈ちゃんが中学校から帰ってきました。
椎奈ちゃんは私の姿を確認すると声をかけてきました。
「藍さん、明日から仙台行くんですよね、もしよかったらポケモンGOでラプラス捕まえてきてくれませんか?」
母娘そろって同じことを頼んできました。
「なんだ椎奈、そんなにラプラスというポケモンが欲しいのか?」
「うんパパ、だってすっごいレアなポケモンなんだよ」
「よし、じゃあ、藍ちゃん、これ少ないけど餞別、よろしく頼むよ」
社長は財布から一万円札を三枚抜いて私に差し出しました。
「あまーい!」
そのあまりの甘やかしぶりに私は絶叫しました。
「あまいよ、日本で行列ができたアメリカのドーナツ屋のカラフルシュガーコートされたドーナツより甘いよ!」
結局、私は社長のスマホを預かって、ラプラス捕獲を業務命令として引き受けざるを得ませんでした。
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初日の仕事を終え、私は予約していたビジネスホテルに着きました。
少し郊外ですが、出来たばかりのようで内装はすごくきれいなホテルでした。
移動中に頼まれたラプラスを探しては見ましたが、それらしいポケモンを見つけることはできずにいました。
そこでチェックインの時にフロントのお姉さんにそれとなく聞いてみました。
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「ああ、ポケモンGOのラプラスですか、イベントで出やすくなってるみたいですね」
フロントの女性もラプラスのことを知っていました。
確かにラプラスというレアポケモンは仙台で見つけやすくなっているようでした。
「それにしても面白いですよね、ラプラスってあのラプラスの悪魔のことですよね」
「・・・ラプラスの・・・悪魔?」
わたしはてっきりポケモンの名前のことだと思っていたのですが、ラプラスには別の意味があるようでした。
「知りませんか、平たく言うと万物の動きをすべて把握することができれば未来に起こることがすべて予知できる、まあ悪魔とは言っていますが、私たちからしてみれば神様みたいなものですよね」
ラプラスの予知、神様の予知と聞いて、真央さんの夢のことが思い出されました。
「でも、そんな神様か悪魔の名前がついているラプラスはのりものポケモンなんですよね、なんでこんな名前が付いたんでしょうね」
フロントの女性の冗談を聞きながら、生き埋めになるという予知夢をみた真央さんの話が急に現実味をもって襲ってきました。
落ち着いて考えてみれば、あの頭にばかが付くほど真面目な真央さんがレアなポケモンを捕まえさせるためにあんなうそをつくでしょうか。
ありえませんでした。
しかし、それでも疑問は残ります。
予知が本当だったとして、生き埋めになるということはどういうことでしょう。
大地震でも起こるというのでしょうか。
しかし私は既に『ラプラスのいるところ』、つまり仙台を探しているのだから生き埋めになることはないのか、それともラプラスを見つけなければならないのか、真央さんの予知夢はじっくり考えても腑に落ちないところが多々ありました。
ホテルの部屋に入ると、仕事も終わったことで気も抜けて着替えもせずに私はそのままベッドに倒れこみました。
それにしてもなんで男の人はおっぱいが好きなんだろうとあらためて感じていました。
今日訪問した取引先の担当者も私の胸を気にしていたようでしたし、下心丸出しで夜飲みに行かないかとも誘われました。
ブラを外したいと思い、ブラウスのボタンをはずそうとしたのですが、体がだるく、力が入りませんでした。
廊下からでしょうか、遠いところで女の子の声が聞こえたような気がしました。
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「もういーかーい」
子供がかくれんぼでもしているのでしょうか。
私はとりあえず着替えて食事に行こうとしたのですが、体を動かすのが面倒になってしばらくそのままでいました。
そして食事などの娯楽タイムに入る前にラプラス捕獲の『仕事』は終わらせておきたい気分でした。
私はスマホを取り出して、ポケモンGOをとりあえず起動させました。
すると現れたマップ画面に絵梨花からしつこくレクチャーされた首長竜のような大きなシルエットがあります。
「うわっ、超ラッキー、部屋の中にいるじゃない!」
思わぬ幸運に私は喜んでラプラスを捕獲しようとしたのですが、そのスマホの後ろ、天井に奇妙なものが見えました。
「えっ、なに?」
それは着物を着た女の子でした。
ヤモリのように天井に四つん這いで張り付いて、こちらを覗き込んでいます。
「み・い・つ・け・た」
そう呟くと、女の子の体が天井から離れ、私めがけて落ちてきました。
「ぐえっ!」
子供の身体ながら、私は体の中身が口から飛び出るような衝撃を受けました。
私の上に乗っかった女の子を見ると、私の胸の間にうずめられた顔がゆっくりとこちらを向くように起き上がってきました。
大きすぎる黒目に灰色の尻尾と毛の生えた耳、その顔は本当にケモノのようでした。
「今度はあなたが鬼よ、私が隠れるから三百数えるうちに見つけてみなさい。
見つけられなかったら、今度はあなたも隠れるのよ」
着物の少女は私の身体からずるりと落ちて見えなくなりました。
私の身体は金縛りにあったかのように動きませんでした。
しばらくすると、部屋全体にもーいーよという声が響き渡りました。
そして三百からのカウントダウンが始まりました。
私はすぐに渾身の力を込めて起き上がりました。
突然のことに思考力はほとんど働かなくなっていました。
しかし、あの少女、それは今までも何度か経験したことがある並の悪霊など比にならない狂気でした。
寂しいから一緒に遊ぼうとかそんなかわいげのあるものでは全くなく、確実に私を殺しに来ている、それだけははっきりと感じ取ることができました。
「やばい、このままだと死ぬ、こんなビジネスホテルになんであんなのがいるのよ」
恐怖で呼吸が荒くなるのが分かりました。
すぐに部屋から逃げようとしてみましたが、当然ドアは開きません。
窓の外は漆黒の闇でした。
そもそも窓を割っても外に落下するだけです。
私はともかくホテルの部屋の中を探してみました。
ベッドの下、クローゼットの中、お風呂、トイレ、予想はされましたが、そんなところにはいません。
備え付けの電話でフロントにかけてみましたが、もちろん不通です。
スマホもGPS信号を探していますと表示が出ていました。
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少女の秒読みは二百を切っていました。
「本当に死ぬ、殺される、ああ、真央さんの予知夢は本当だったんだ。
こんなことならもっと詳しく聞いておけばよかった」
自分の早計に対する後悔が半分、そしてちゃんとラプラスは探したのにという裏切られた想いが半分の複雑な気分でした。
「ちょっと待って、私はラプラスのいるところ、仙台をちゃんと探したのに、なんで死にそうになってるの?」
それは確かに不可解なことでした。
真央さんの夢の内容からすると、私がラプラス捕獲の要請を断ると死ぬという風に感じ取れましたが、そうではないということでしょうか。
あくまで真央さんの予知が当たっているという前提で考えると、あの夢にはまだ隠された意味があるような気がしました。
そもそも生き埋めになるというのはどういうことでしょう。
私が少女に埋められて殺されるということでしょうか。
「ラプラスのいるところ・・・まてよ」
私はラプラスのいるところと聞いて先入観で自分の出張先の仙台だと思っていましたが、このラプラスとは今この場でスマホに現れているラプラスのことではないかと気づきました。
このスマホのマップに現れているラプラスの位置は・・・マップが小さいので分かりづらかったですが、その中心点は部屋の壁の中のようでした。
私はその壁の方を確認しましたが、何の変哲もない白い壁です。
あの少女は言いました。
私が見つけなければ今度はあなたも隠れてもらうと・・・
そして、その言葉が生き埋めで死ぬということを意味しているのだとすると・・・
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少女の秒読みは百を切っていました。
私は意を決して部屋にあった金属製の大きな電気スタンドを振り上げると、ラプラスの指示した壁に打ち付けました。
その鋭い一撃に少女の声が動揺します。
「何、何してるの、どうして、うそ、うそよ、なんでわかったの!」
渾身の力で何度も壁に強い一撃を与え続けると、徐々に壁が崩れてきました。
もはや少女のカウントダウンの声は止んでいました。
やめてという金切り声が頭の中に響くと、壁から大きなかけらが剥離して、その中からミイラのように皮と骨だけになった人間の死体が現われました。
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「・・・みいつけた」
私は自らの死が回避できたことよりも嫌な予想が当たってしまったことに消沈してしまいました。
もう、少女の声は聞こえません。
窓の外にも外の景色が映っていました。
私はフラフラになりながらも最後の力でフロントに部屋で死体が見つかったと連絡をしました。
それにしてもこのミイラの死体は何なんだろう、殺人事件だと思われましたが、このまま警察の事情調書などで私の夜の計画は台無しだなと感じていました。
程なくしてホテルの女性スタッフがやってきました。
「ひっ・・・えっ、あれ、オーナー?」
死体を見た女性はオーナーと叫びました。
事情を聴くと、一週間前からホテルのオーナーが行方不明になっているというのでした。
女性スタッフは死体の服装を見て、いなくなっているオーナーかもしれないと思ったようでした。
私は死体を見つけた時点であのケモノ少女のものだと思っていましたが、よく見ると体の大きさや服装が全く女性のものではありませんでした。
しかし、フロントの女性が言うようにこの死体がホテルのオーナーであれば一週間ほどでこんな干からびた姿になるのは不可解です。
私は何か事情が分かるかもしれないと思い、今回の事件を予知し、普段から霊視のできる真央さんに連絡を取りました。
スマホのフェイスタイムで現場を見てもらうと、霊視を終えた真央さんが説明を始めました。
「おそらく怪異の原因はその石像ですね」
真央さんに石像と言われて、あらためて崩れた壁の中を見るとミイラ死体の脇に陶器のような質感の狐の石像が埋まっていました。
「これが・・・もしかして私の見たケモノ少女ですか?」
「おそらく・・・何かの御神体のようなものかもしれないですが」
その説明はいつもの真央さんらしくありませんでした。
普段は霊視によってその心霊的な背景を視てとることのできる人でした。
「おそらく力をほとんど使いはたしてしまったのか、ここには霊的なものがほとんど残っていません」
霊的な手掛かりがほとんど残っていない、そのために真央さんも詳しい事情を視ることができないようでした。
結局、この死体の男性と私が襲われたのもおそらく生命力を吸い取るためだったのではないかと説明されました。
つまり先ほどの少女はこのオーナーと思われる人を壁に引きずり込み精力を絞り切った、それでこんな干からびた死体になったのではないか、しかし、私は引きずり込むことができなかったため、力を使い切ってしまったのではないかということでした。
「ともかく、これは単なる殺人事件ではありませんので、警察も専門の人達が当たらないとこのホテルの変な風評が流れてしまいますね」
確かに壁の中からオーナーの死体が出てくるなんてワイドショーがこぞって取り上げそうです。
「私の方からその手の事に対処してくれる人に連絡をしてみます」
真央さんは行政からの心霊的な案件も扱っているので、その辺のつては横のネットワークがあるようでした。
ホテルのスタッフもその場で真央さんの提案に同意しました。
「それにしても真央さんの予知で命拾いしました、すごいですね」
「いえ、そんな未来予知のようなものではないのですよ、あくまで虫の知らせ的な暗示です」
「でもかなり正確に状況を言い当てていましたよ」
「今のままだとこうなる危険性があるというような神様が見せてくれる警告なんです、もし正確に今回の事態が視えていたなら、藍さんの出張を力づくで止めていますよ」
そう言われてみれば、確かにそうかもしれませんでした。
「真央さん、本当にありがとうございました。お礼に真央さんのポケモンGOアカウントでラプラスを捕まえてきますよ」
「えっ、ら、ららら、らぷらす!」
あの落ち着いた真央さんとは思えないほどの取り乱しぶりにこちらの方がびっくりしてしまいました。
「そ、そんなつもりで予知夢のことを伝えたわけではありませんよ!」
「遠慮なんてしないでください、これはあくまで私の感謝の気持ちで私がそうしたいんです」
「そ、そうですか、それなら・・・お願いしても構いませんか?」
「はい、任せてください」
私の強引なお願いで了承してくれましたが、それでもあの堅物の真央さんをここまで興奮させるラプラスってすごいなと思ってしまいました。
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事件の後、私はホテルで用意してくれた別の部屋で就寝しました。
真央さんの分のラプラスも捕まえましたが、それだけでは味気ないので何か別のお土産も買って帰ろう、そんなことをベッドの中で考えていると部屋の電話が突然鳴り始めました。
少し驚きながらもフロントからだと思い、落ち着いて電話を取りました。
「お客様、今回は・・・大変ご迷惑をおかけしました」
男の人の声でした。
フロントからお詫びの電話が入ってきたのでしょうか、しかしその声はどこか遠く若干乱れていました。
「このホテルを建てる際、元々ここには小さな廃神社が建っていたのです」
なんだろう、いきなり何の説明を始めるんだろう。
「この土地を購入して、私はそのまま神社を取り壊してホテルを建てました。
しかし、ホテルが建ってから、お客様から夜に廊下や他の部屋で遊ぶ女の声が聞こえたり、天井や壁を這う人影を見たといった声が聞こえてきました」
どうも、あの少女が出るようになった経緯を説明してくれているようでした。
そんなこと私に話されてもとは思いましたが、気にはなったので続けて聞くことにしました。
「そしてあるとき私はあのかくれんぼをやることとなったのです」
何かおかしいことを言い始めたような気がします。
「私は彼女を見つけることができず、彼女の潜む壁の中に引きずりこまれました」
再び冷たい汗が浮かぶのを感じました。
「そして私はあの子に命を吸われました」
明らかに壁の中で死んでいたこのホテルのオーナーからの電話でした。
この電話は死者の世界と繋がっているのでしょうか。
「・・・私は・・・全くと言っていいほど・・・この世の視えざるモノへの思慮が足らなさ過ぎたのです」
さらに電話の中の雑音が溢れてきました。
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「二人目の・・・対象者が・・・あなたのような人で・・・よかった」
ついには電話の音声は激しく乱れ、やがて何も聞こえなくなりました。
しかし、音声が途切れる間際、オーナーの男性は確かに『ありがとう』と言ったように聞こえました。
私はオーナーの魂が無事成仏するようにと願い、静かに受話器を置きました。
作者ラグト
いつも私のお話を読んでいただきありがとうございます。
旅行先でのポケモンGOも楽しいですよね、しかし旅行にまつわる怖い話が多いのもまた事実ですね。
それでは心霊地でポケモンGOシリーズ第5話ラプラスの予知夢です。
ゴールデンウィークの息抜きにお読みいただけると嬉しいです。