「ちょっとタバコ買ってくるね。」とコンビニに出掛けた彼女が行方不明になった。
一週間後、深い山中から切断された彼女の生首と、少し離れた場所からは焼かれた胴体も発見された。
毛髪のDNA鑑定と、彼女と仲の良い友人A子からの証言で背中のタトゥーが一致したという事から、彼女に間違いないだろうと断定された。
犯人は一年経った今でも見つかっていない。僕は彼女との思い出が詰まった部屋にいる事が苦しくて、引越しまでした。
でも僕は今でも月に一度は彼女の実家まで足を運んで仏壇に手を合わせている。少なくとも犯人が捕まるまでは、僕の中でこの事件は終わっていないのだ。
「いつもありがとう。こんなに優しい彼氏さんと暮らせて、あの子も生前は幸せだったと思うわ。」
彼女の母親は今日も遺影を見つめながら、目に涙を一杯にためている。
「それじゃあ失礼します。また来月来ます。」
「ありがとう」
とても言えない。
彼女の背中のタトゥーが実は蛇ではなく、蝶だっただなんて。
アパートに帰ると、今日も郵便物の中に差出人不明の手紙が一通紛れていた。
『 M様、ずっと好きです。ずっと見てます。ずっと、ずっとあなたの事を考えています。』
親にしか教えていない住所に届く誰とも知れない謎の手紙。少し気持ち悪いがこのご時世にラブレターだなんて、LINEとは違い真剣な気持ちが伝わってくる。
「僕も満更捨てたもんじゃないのかな?」
手紙の最後には小さくこう書いてあった。
『 良かったら明日、◯◯の喫茶店でお会いしませんか? 』
新しい恋の予感がした。
了
作者ロビンⓂ︎
岡花様の闇小噺の真似をして135文字以内に収めようと試みましたが、大幅にオーバーしてしまいました。本当にありがとうございました!…ひ…
ネタバレとしましては、この主人公は彼女の親友A子の顔を知らないという事です…ひひ…