中編4
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カラオケボックス

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これは私が体験した中で一番気味の悪かった話になります。

カラオケボックスと言えば、いつも賑やかな場所というイメージがあり心霊とは縁のない場所というイメージがありませんか?少なくとも私はそう思っていました。しかし、この体験をしてからというものどのようなところにも心霊は潜んでいるのだなと考えるようになりました。

その日私はサークルの飲み会に参加していました。15人程度の飲み会でとても盛り上がり、お酒にもいい感じに酔えて、気分は最高潮でした。

一次会が終わり時間を見ると21時。このまま帰るのはもったいない!ということで二次会でカラオケ屋に行くことになりました。参加人数は少し減り8人になりました。できるだけ安く済ませるため、キャッチのお兄さんを探しつつ歩いていると、案の定声をかけられ、交渉の末値段も抑えることができたので意気揚々とみんなでカラオケ屋に向かいました。

カラオケ屋は街の中心から少し外れたところで、始めて行くところでした。しかし、外観は綺麗でいいお店だなという印象を受けました。

店に入り通されたのは10人用ほどの広い部屋で騒ぐには充分でした。みんなで仲良く歌を歌いながら、二次会も盛り上がっていました。

30分ほど経った頃でしょうか、1人の女の子が『ちょっと眠たくなってきた』ということで横になり、寝始めました。男ならば『お前ノリ悪いなー!』などとちょっかいを入れるところですが、女の子なので寝させてあげて、他のメンバーとまた歌いあっていました。

その30分後、だいぶ盛り上がりも落ち着きバラードなどを歌いしんみりとした雰囲気でした。そんな時でした、先ほど寝た女の子がむくりと起き上がり、おもむろに扉の方へ向かって行きました。トイレにでも行くのかなと思って見ていると、女の子は扉を開けるやいなや『ちょっと何見てるのよ!やだ、入ってこないで!』と言って、扉を閉め席に戻ってまた寝てしまいました。扉の近くにいた友達が外を確認しましたが、廊下には誰もいなかったそうです。きっと寝ぼけていたのだろうということで部屋は笑いに包まれました。

数分後、その女の子は起き、目の前のドリンクを飲みはじめました。(おぉ、起きた。さっきのことについて聞いてみよう)と思い、名前を呼びましたが反応を返してくれません。まだ寝ぼけてるのかななどと思っていると、1人の友達がトイレのために外に出ようとしていました。その瞬間その女の子は立ち上がり『何で開けてるの!そこにいる人が入ってきちゃうでしょ!』と叫びはじめました。確認してももちろん誰もそこにはいません。さすがに2度目となると気味が悪くなってきました。

そして、女の子は奇行は続きます。いきなり立ち上がり外に出ると『ちょっと待って私のバッグ返してよ!』と言って、廊下の奥の方に歩きはじめました。バッグは部屋の中にあり、もちろん誰もとってはいません。

しかし、放っておくわけにもいかず私と友達2人で女の子を追いかけました。女の子を捕まえ、部屋に連れ戻そうとすると『何で邪魔するの!まだ取り返してないのに!私のバッグ返して!』と言っていました。何とかしなきゃと思い、女の子の正面に立ちひたすら『○○ちゃん○○ちゃん』と名前を呼びましたが、返事はしてくれません。

それどころか目の焦点が私の方ではなく、私の後ろの方に向いてるような感じで、『返して、返して!』と叫ぶばかりでした。仕方なく、友達と2人で強引に部屋に連れ戻し、席に座らせました。すると、いきなり落ち着いたかと思うと、また寝始めたのです。

今まで、目にしたことのない奇行にみんなも戸惑っており、とりあえずカラオケを出て、誰かの家に送ろうかということになりました。みんなすぐに帰宅の準備をし、寝ている女の子は友達がおんぶする形で部屋から出て、エレベーターに乗り込みました。

一階を押し、扉が閉まろうとしている時でした。先ほどまで寝ていた女の子がいきなり『ねぇ、何で閉めちゃうの、まだあの子乗ってないじゃん、ほら早くこっちおいでよ。』と一言呟いたのです。誰もいない廊下に向かって。そして何事もなかったのようにまた寝てしまいました。

エレベーターは閉まり、一階に降り会計を済ませました。外に出てタクシーを捕まえ、その女の子は友達3人ほどに任せ、その日は解散になりました。

後日、サークルの日、その女の子はいつもの様子でサークルに参加していました。どうしても気になった私は先日の奇行のことについて尋ねましたが、『いや、一次会までの記憶しかないんですよー、二次会カラオケだったんですよね?私も楽しみたかったなぁ。』と何も覚えてないようでした。これ以上詮索するのも無駄だと思い、会話はそれで終わりました。

その後、何度かその女の子とカラオケに行くことはありましたが奇行を起こすことはありませんでした。

最後に、実は誰にも言えなかったのですあの日、エレベーターが閉まっている途中で彼女が『何で閉めちゃうの…………』と呟いた時、見てしまったのです。無人であるはずのカラオケボックスの扉がエレベーターの扉と反して、少しずつ開いて行くのを。

きっとあの部屋には得体の知れない何かが存在し、女の子に乗り移り、奇行を起こさせたのではと私は思っています。

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菊さん
コメントありがとうございます。今、思い返しても気味が悪いです。私もカラオケ行くたびに思い出します。2度と出会いたくないです。

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寝ぼけてるで済まされないあの感じ怖いわ〜

カラオケとかよく行くから夜行ったらこの話思い出しそうw

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