最近、見えなくていいものが見える。
正確には『また見えるようになった』と言った方が正しい。足元に。腰元に。時には肩越しに。ふと気が付くとソレはいる。
「斎藤さんは全然仕事が出来なくて困るなぁ〜。僕なんてこんなに頑張ってるのに。」
「入野くんは本当にいい加減だねぇ〜。そんなんじゃ昇給してあげられないなぁ。」
呪詛の様に永延と紡がれる言葉には悪意が込められている。だから、それは生まれた。そして育っていく。
「皆、僕を困らせないでよぉ。僕ばっかり頑張ってるの気付いてる?」
ええ、気付いていますよ。貴方が頑張って育てているもの。私にはちゃんと見えてますから。
気付いていないのは貴方の方ですよ。
貴方の撒いた種から生まれた沢山のソレ。
「詩音ちゃんだけだよぉ。信頼出来るのは。他の人達は全く使えないんだからさぁ。」
ほら、また少し大きくなった。
もう腰元位の大きさまで来てますよ。
あと少しあと少し。
でもね、教えてあげない。
『口は災の元』
貴方の撒いた『悪意』から生まれた『呪』
もう少し大きくなって、あと少し濃くなって。
楽しみですね。
知らぬが仏とはよく言います。
ほらまた一つ、生まれた。
作者鯨