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小学生に上がる以前だったと思う。当時、私は毎日のように友達と外で一緒に遊んでいた。公園に行ったり、川に行ったり。遊ぶ場所には困っていなかった。ただ、親から一箇所だけ絶対に近づくなと言われている場所があった。
それは山の中にある沼だった。聞いた話によると、その沼に足を踏み入れてしまうと、大人でも飲み込まれてしまうほどの深さであるということだった。
冬のある日、いつものように友達と遊んでいると友達が『例の沼観に行こうぜ!』と言い出した。私も興味があったので、すかさず『いいよ!』と返した。
2人だけで森に行き、噂の沼を探してひたすら歩いていた。すると、前を歩く友達の足が止まった。私は友達に『どうしたの?』と聞いた。すると友達は『足が動かないんだ。なんかどんどん沈んでるんだけど⁉︎』と答えた。
冬に来たのが間違いだった。枯れてしまった落ち葉や枝で沼の存在に気づかなかったのである。私は友達の手を取り引っ張ったが動かない。それどころかどんどん沈んでいっている。気づけば友達は胸のあたりまで飲み込まれていた。友達は泣きながら『助けて、助けて…』と叫んでいた。
しかし、目の前で起こっている状況と危険な場所に行ったことが親にバレてしまうという恐怖から私は怖くなり逃げ出してしまった。必死に森から出ようとする私の後ろからはずっと『助けて、助けて…』という叫びが耳に響いていた。森から出た私は家に帰った。誰にも友達と沼に行ったことはいわなかった。
その夜、当然のように友達が行方不明ということで街は大騒ぎだった。大人数で捜索したが見つかるはずはなかった。沼の中にいるのだから………………私はとうとう誰にも言えず、友達は見つかることなく捜索は打ち切られた。その後、私がその沼に近づくことはなかった。
月日は流れ、私は大学生になった。地元を離れ、一人暮らしをして大学に通っていた。1年ほど実家に帰っていなかったため、親から『たまには顔を見せなさい』と言われて、帰省することになった。
電車を使い2時間ほど、目的の駅に着いた。見慣れた景色に私は懐かしさを覚えた。実家までの帰る途中、あの森が目についた。この森を通れば多少の時間短縮になる。私はこの森を通って帰ることにした。きっと自分の中に自責の念があり、友達に謝りたいという気持ちがあったからだったと思う。
森の中を通ってる時、私は当時のことを思い出しながら、『本当、見捨ててごめんな。』と呟いていた。すると、遠くから声が聞こえて来た。
『助けて、助けて……』と。子供の声だった。
私はゾッとした。やっぱり友達は成仏できていなかったのだろうか。10数年経った今でも私に助けを求めている。私は怖くなり、あの頃と同じように走った。『ごめん、ごめん』と言いながら。その間もずっと『たすけて、たすけて』という声は聞こえていた。
森を抜け、少し歩くと実家に着いた。玄関を開けると兄が迎えてくれた。『おう、おかえり。帰ってる途中で俺の息子に会わなかったか?お前を迎えに行ったはずなんだけど、入れ違いになっちゃったかな。』と言った。
私はまた自責の念にとらわれた。
作者HIRO
意味怖になります。過去に聞いた話をうろ覚えですが文字におこしましたので、読みにくいかもしれません。