【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編5
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奥さん

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「お前怖い話好きだよな、あまり怖くないけど一つ話をもってるよ」

どうだ、聞きたいだろうと言いたげなドヤ顔で龍平は問いかけてきた。

テーブルの上に置いてあるトランプカードをぐちゃぐちゃに混ぜながら、同じ言葉を繰り返し問うてくる。

僕は一度考える素振りをしてから聞きたいと答え、ぐちゃぐちゃになったカードの山の中からカードを数枚抜いた。

「話を聞かせてやるから後でハイネケン買ってきてくれ」

「はぁ?」

こちらの不平不満を無視し、友人は話はじめた。

「この話は友達から聞いた話で、本当にあったかどうか確証がないんだけど、小話の一つだと思って聞いてくれよ。大野君ていう友達から聞いた話....」

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午後7時30分、携帯に表示される文字を見つめながら大野は友人達の到着を待った。

スーツの上着を脱ぎハンガーにかけていると、携帯に友人達からもうすぐ着く旨の連絡が入った。

暫くすると、一人また一人と店にやってきた。集まったメンバーはブランドスーツ姿にくたびれた顔の者、ジーンズにポロシャツ姿の者。

皆学生時代の友人で、今日は相談事があるという事で集まった。集まって早々にビールで乾杯をし、一息ついてから一人が話を切り出した。

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「こうして集まってもらったのは、相談にのって欲しいことがあったからなんだ」

ポロシャツのボタンを一つ開けながら木村が言った。

「伊藤の事なんだけどさ、あいつの奥さんが亡くなって数年経ったんだけど、ずーっと暗い顔してるんだよ。顔だけじゃなくてなんていうか、こう、オーラが暗くて黒くて、どろどろどろーってさ」

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今から数年前、伊藤が家で奥さんの帰りを待っていると、電話が鳴った。

sound:32

プルルルループルルー

「もしもし」

「あなた?あら、今日は帰りが早いのね。ちょうど今夕食の買い出しに出かけているところなの。もうすぐ帰るから待ててね?」

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sound:24

この電話の後に、奥さんは車に轢かれ帰らぬ人となってしまった。

車は急ブレーキをかけたが間に合わなかったのだという。

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「要は伊藤が長年暗い気分から抜け出せないから、どうしたらいいかという話だろ?」

くたびれた顔の眉間に皺を寄せながら長谷川が答えた。

「今も伊藤はあの家に住んでるの?」

大野が木村に問う。

「まだ住んでるよ、伊藤はあの家に居るから気分が暗いままなんじゃないかな」

あの家というのは、伊藤が奥さんと暮らしていた家の事だ。ペットは飼っておらず、広い部屋に伊藤一人で住んでいる。

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「それで、俺は伊藤に提案したんだよ。こんな広い部屋に1人で住むのは寂しいし、部屋は

奥さんが亡くなった時のままで気持ちが切り替えられないし、そろそろ引っ越さないかって」

木村の言葉を聞いて呆れた様子の顔で長谷川が答える。

「お前、そういうのは余計なお世話っていうんだ。長年連れ添った奥さんが亡くなったんだ、簡単に気持ちの切り替えなんてできない」

長谷川は煙草をふかし遠い目をしながら、木村に御節介焼きは止めろと諭した。灰皿には半分しか減っていない煙草が数本捨てられている。煙草を吸うペースが早い。

「初めは伊藤も嫌だって言ってたけど、最終的には納得して引っ越す事を決心したんだよ。で、引っ越しの手伝いを一緒にやってもらいたくて今日呼んだんだ!頼む、一緒に手伝いをやってくれないか!」

両手を合わせ拝むようなポーズで木村は二人に頼んだ。大野はすぐに承諾し、長谷川は唸りながら考えた後に承諾した。煙草を吸うスペースがあるのならやると言う言葉も付け加えて。

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伊藤の家に来た3人は部屋の中の異様な空気を感じていた。

3人に霊感なる力はもっていない、ただ部屋の中には変な気が充満している。

皆がやりやすいように考慮したのか、部屋のあちこちに洋服が山積みになっていて、思い出の写真がテーブルの上に散乱していた。ただ、部屋が汚いのとは別の異様さがそこにはあった。言葉には出さず、互いの目で訴えた。

皆、同じことを考えてるようだった。

「どうした?なにかあった?」

伊藤が不安そうな目を3人に向ける。なんでもない気にするなと言い、引っ越しの作業を始めた。

段ボールに洋服や小物、本等を詰めていく。

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「伊藤、これ奥さんの物だよな」

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長谷川は眼鏡を手にし、伊藤の方を向いた。レンズが曇り、金具の部分が壊れている眼鏡は奥さんの物だ。

「そう、壊れちゃって使えなくなったのに、俺が買ってやった物だからってずっと取っておいてくれたんだよ」

伊藤は長谷川から眼鏡を受け取ると、寂しそうな表情で見つめる。

部屋の中に沈黙が流れる。

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shake

sound:32

プルルループルルー

伊藤の後ろ、テーブルの上に置かれた電話が鳴った。

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近くに居た木村が受話器を取る。

「もしもし」

木村は怪訝な顔をしながらまた、”もしもし”と言ったあと受話器を置いた。

「誰からの電話?」

伊藤が木村に問う。

「伊藤、奥さんの留守番電話消してないのか?だから気持ちを切り替えられないんだよ」

「奥さんの留守番電話?留守番電話はとっておいてない。今誰からの電話だったんだ?」

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「あなた?あら、今日は帰りが早いのね。ちょうど今夕食の買い出しに出かけているところなの。もうすぐ帰るから待ててね?って言ってた。え、これって...奥さん...」

皆お互いの顔を見ながらそんな筈はないと口々に言った。木村は両腕をさすりながら体を震わせていた。

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shake

「こんな時に言うのもなんだけど...電話の配線....繋がってないんだけど」

大野が電話の配線コードを持ちながら言った。

「奥さん、もうすぐ帰るって言ってたな...」

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「結局、伊藤さんの引っ越しはどうなったんだよ」

「引っ越しは無事に終わったんだけど、伊藤さんはまだその電話を持ってるらしんだよ。時々奥さんから電話がかかってくるんだと」

龍平が咥え煙草で話したせいで、灰がカードの上に落ち、更にそれを手で払ったせいでトランプが汚れた。

「うあートランプ汚れた、咥え煙草でババ抜きするなよ。そもそも二人でババ抜きってなんなの」

「大丈夫だよ、同じ物を買って返せば問題なかろう」

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shake

sound:14

ドンドン!ドンドン!

突然、ベランダの方から壁を叩く音が聞こえた。

ベランダの扉を薄く開けてあるので、外から吹く風がカーテンを揺らしている。

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「すみません、静かにしてもらいますか」

男の声がベランダの方から聞こえてきた。その声は大きな声ではなく、遠く離れた所から話しかけている様な音量だった。

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wallpaper:202

「あら、そんなに話し声うるさかったか?」

「いや、注意される程でかい声で話てないだろ」

僕達は決して大声で話していなかった。もちろん、部屋の壁も薄くない。

同じ部屋の中に居る、もしくはこちらの部屋のベランダに居ない限り声は聞こえない筈。

龍平に視線を送ると、立ち上がりベランダをみに行った。

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shake

シャーッ

カーテンを開けるとすぐにカーテンを閉め、焦った様子でベランダの鍵を閉めた。

ドタドタドタ!

音を立てながら龍平が戻ってくる。その顔は強張り、冷汗が出ていた。

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sound:19

「女がいた、女の顔が、ベランダの壁横の手摺の...手摺に顔半分が乗ってたんだよ...なんだよあれは、怖すぎるだろ...」

ドンドン!ドンドン!

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再び壁を叩く音がしたが、怖くて確認しに行かれなかった。

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@shibro さん お久しぶりです。お元気ですか?
こちらこそ、ありがとうございます。
そう仰って頂けて嬉しいです!これからもっと怖いと思って頂けるような話を書けるよう精進致します。

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わざわざメセボに来ていただきありがとうございました。
次から次へと皆さんの作品を読むので、どんなお話だったかな(覚えてなくてごめんなさい(≧σ≦)>テヘ)と再度読みに来ました。途中から、あっこれほんまに怖いやつや、怖いやつやと心臓がドキドキし始めページボタンをびくびくしながらポチしてました。
何度読んでも怖いものは怖いもんですね。

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梨ジュースさん
怖いボタン&コメントをありがとうございます!
怖がって頂きありがとうございます!とても嬉しいです。次作はもっと怖がって頂ける話を書きますね。

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月舟さん 怖ポチ&コメントをありがとうございます!
う~ん、どっちなんでしょう...怖くて確認できなかったのが残念でなりません。
それは怖いですね笑 悪夢は勘弁です笑

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珍味さん 怖ポチ&コメントをありがとうございます!
今回は霊の話にしてみました。あの話の続きは聞かずじまいになったので、今度友人に聞いてみます。簡単には終わらなそうですね...

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