「神社の鳥居の前でかごめかごめをしたらダメだよ」
小さい頃に何回も言われた言葉です。
父方の祖母の家の近くに稲荷神社があり、その周りで遊ぶのがお決まりだったのですが、なぜかかごめかごめだけはダメだと言われていました。
私たち兄弟は真面目にその約束を守り、かごめかごめはしなかったのですが、どうやら約束を守らなかった子がいたようです。
そのお話をしたいと思います。
separator
ヒロはわんぱく坊主で近所の有名人でした。
「母ちゃん!お稲荷さん(神社のこと)で遊んでくる!」
「暗くなる前に帰ってきなさいねー」
お稲荷さんで毎日のように友だちと遊んでいました。
ある時、鬼ごっこもかくれんぼも飽きてきたので、別の遊びをしようということになりました。
「じゃあさ、かごめかごめしようよ」
その子は最近引っ越してきたばかりで、してはいけない遊びを知らないようでした。
「かごめかごめはここではできないんだよ」
友だちが言います。
「どうして?」
「お狐様が混ざっちゃうから」
「かわいいじゃん」
その子は理解していないようでした。
みんな「ダメだからしないよ」と言うのにふてくされてしまいました。
「一回だけなら大丈夫なんじゃない?」
ヒロが言いました。
でも、と他の子は乗り気ではありません。
「大丈夫だって、たぶん何も無いよ!」
ヒロが笑顔で言ったので、じゃあ…とみんなで一度だけすることにしました。
真ん中は引っ越してきた子です。
「やるぞー!せーの」
かーごめかーごーめ
かーごのなーかのとーりーは
いーつーいーつーでーやーる
よーあーけーのーばーんーに
つーるとかーめがすーべったー
うしろのしょうめんだーあれー
「〇ちゃん!」
「ちがーう」
「△くん!」
「ちがうよ」
「✕ちゃん!」
「ちがうー」
「じゃあヒロくんだ!」
「ちがう!」
「え?じゃあ、だれ?」
「「「「え?」」」」
5人で遊んでいたはずです。なのに全員その子の後ろにいないのはおかしいのです。
その子の後ろにいたのは、知らない子どもでした。
着物を着た同い年くらいの男の子です。
そして、みんな気が付きました。
「ここ、どこ?」
神社の中にいました。でも、何かが違う所にいたのです。
「こらー!!!」
いきなり声がしました。
驚いて声のした方を見ると、お宮でした。
お宮からまた声がします。
「こんなところで遊んでないで、早く帰らんか!」
みんな困りました。帰り方がわからないのです。
「ごめんなさい、帰り方がわからないです」
正直に言いました。
「かえしてやるから、とおりゃんせでも歌え」
声は怒っていました。
こわいので、言うことを聞くことにしました。
nextpage
とーりゃんせとーりゃんせ
こーこはどーこのほそみちじゃー
てんじんさまのほそみちじゃー
ちーっととーしてくだしゃんせー
ごよーのないものようしゃせぬー
このこのななつのおいわいにー
おふだをおさめにまいりますー
いきはよいよいかえりはこわいー
こわいながらもとーおーりゃんせ
とーりゃんせ
nextpage
不思議なことに、歌い終わった時にはいつもの神社でした。
しかし、真っ暗になっていました。
家に帰ると、両親が心配して待っていました。
こてんぱんに怒られましたが、帰ってこれたことに安心しました。
それ以来、神社では絶対にかごめかごめはしません。
あの時のように、お狐様に怒られたくないですからね。
nextpage
かごめかごめ
籠の中の鳥はいついつ出やる
夜明けの晩に鶴と亀が滑った
後ろの正面誰
通りゃんせ通りゃんせ
ここはどこの細道じゃ
天神様の細道じゃ
ちっと通してくだしゃんせ
御用の無い者容赦せぬ
この子の七つのお祝いに御札を納めに参ります
行きは良い良い帰りは怖い
怖いながらも通りゃんせ通りゃんせ
作者ひやま
創作です。
ですが、「神社の鳥居の前でかごめかごめしたらダメ」はマジで言われたやつです。
めちゃくちゃですが、生温い目で見てやってください…