短編2
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smile

かなり前の話だ。

 ある日、俺は夢を見た。

 近くの公園の白いベンチに腰掛けていた俺の隣に、美しい金髪の女性が座った。

 蒼い瞳をしたその女性は、隣に座るなり俺をジッと見つめた。

本当に人形のような女性で、心を奪われるというのは、こういうことかと思った。

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 この女性との奇跡の出逢いを無駄にはすまいと、俺は思い切ってその女性に話しかけた。

 その女性は意外にも日本語が堪能で、名前は『すみれ』だと言った。

 見た目とは裏腹に古風な日本的名前に驚いたが、弾む会話にウキウキしていた俺に、すみれは哀しげな笑みを浮かべて言った。

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 「私から去っていったのは誰?」

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 俺は首を傾げた。

 そんなことを俺が知る訳がない。

 彼女の問いをはぐらかして、俺は別の話題に変えた。

 何とか話を盛り上げようと必死に話していた俺に、彼女が潤んだ瞳を細めて微笑んだ。

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 「私からいなくなったのは誰?」

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 まただ……。

 俺は「知らねぇよ」と思いながらも、何処か寂しげな彼女を刺激しないように、どうにか話を逸らせて話し込んだ。

 すみれが退屈しないように、時折、話を盛ったりしながら、彼女を笑わせようと頑張った。

 すると、彼女は立ち上がり、俺の方に体を向けて見下ろすと、狂ったような笑顔で俺の首を絞めてきた。

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 「私から消えたのは誰なの?」

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 苦しみながら、すみれの言葉の意図を理解した俺は、彼女に掠れた声で答えた。

 俺の回答に満足したのか、彼女は掴んだ俺の首を離した。

 「そうね……」

 そこで、俺は目を覚ました。

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 この話を古い付き合いの悪友に話したら、ソイツは俺を小馬鹿にしたように笑っていた。

 所詮は夢だからな。

 数日後、ソイツが死んだと俺に連絡が入った。

 あんなに元気だったのに。

 ソイツは朝、自室のベッドの上で、変わり果てた姿で見つかったらしい。

 死因は窒息死だった。

 どうやら、すみれの質問に答えられなかったみたいだ。

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 答えなんか目の前にあったのに……。

Concrete
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