(…足が重い。)
これは帰宅の道のりが長く、疲れて重い訳じゃない。
もうすぐ、僕のアパートへ帰ることへの恐怖が重くしているんだ。
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「え、これお前の部屋なの?」
「………。」
「なんだよ、ビビってんの?というかこんな質素な部屋いくらでもあるぞ~?
こんな荒い画像じゃ確証はないし、他の似てる部屋かもしれないじゃん。」
笑いながら、からかいながらも、僕を励ます友人。
「そ、…そうだよな!こんな部屋いくらでもあるよね…。」
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そう言って、自分自身にも言い聞かせることであの場は収めた。
(あれは僕の部屋じゃない。僕の部屋じゃない。)
家の鍵の握りしめ、僕はアパートへ歩を進めた。
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所々サビた扉の鍵穴に、握っていたせいで生暖かくなっている鍵を差し込み、静かな共用廊下に開錠の音が響く。
ノブをゆっくりと回し、軋む音を立てながらドアを開けた。
「…。」
玄関からみる部屋は、窓から差し込む夕日で赤く染まっていた。
(そうだよ…あの画像は僕の部屋じゃないのに、なにビクついてるんだ。)
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「…はは、馬鹿馬鹿しい。」
独り言をぼやきながら、部屋に入る。
そして窓を施錠し、カーテンを隙間の無いように閉めた。
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窓際に腰掛け、カーテンから差し込む光で床に映し出された自分のシルエットをぼうっと見つめた。
(あの画像…他のも同じなのだろうか…。)
確かめた方がいい…。でも、確かめることで何か気づいてはいけないことに気づいてしまいそう…
そんな葛藤が繰り広げられていた。
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「今夜もメール、届くのかな…。」
スマホを手に持ち、真っ暗な画面を眺める。
(…考えても仕方ない。戸締りもしっかりしてるし、大丈夫だよね。)
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「よし。晩御飯食べよう。」
気を取り直して、顔をあげる。
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さっきまで床に映し出された僕のシルエットは大きく歪な塊の影になっていた。
そう、まるでたくさんの人影が、僕の影に覆いかぶさるように…
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「…ッ!…!?」
驚きで声が出ないまま、カーテンのかけられた窓を振り返る。
カーテンは夕日で赤く染まっていた。
人影なんでどこにもない。
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「ハッ…ハッ…ハァ…ハァ…。」
改めて床に移る自分の影を見る。
そこには、僕のシルエットが長く伸びていた。
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「…ん。」
まっくらな闇の中で目を覚ます。
(…今何時だろう)
夕方、あのあと僕は布団に飛び込み現実逃避をするために夕飯も食べずに寝た。
外はまだ暗い。
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時間を確かめようと暗闇の中でスマホを探す。
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…
…
shake
ヴーッ ヴーッ
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振動音と共に窓際の床でスマホが光った。
「…まさか……」
着信を知らせる点滅ライトの色は青。
…メールだ。
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⑧へつづく。
作者TYA
⑥のつづきです。
やっと第一話の終わりが見えてきました。
すみません昨日はさぼりました(笑)
夜勤から日勤になるときは、あえて休みの日に夜更かし(昼更かし?)をして体内時計を無理にあわせます。
最近そんな夜更かしが辛くなってきたお年頃。
ソフトホラーなのでガチ物がいいという方には物足りないかもしれません。もうお約束。
(メンタルと視力が激弱です。アンチ嫌いなので防衛線をめちゃくちゃはる人間です。)