とある山里にお爺さんとお婆さんが住んでいました。2人は子供には恵まれませんでしたが、仲睦まじく暮らしています。
お爺さんはガチの夢遊病者で、気づいたら山を彷徨っているなんて事は日常茶飯事でした。
その夜も気づいたら山の中。辺りは猛吹雪で目も開けていられない程の過酷な状況でした。
「このままでは死んでしまう」
慌てて家に帰ろうとしたその時、目の前にお地蔵さんが6体並んでいるのに気付きました。
その内の5体は頭に笠を被り雪をしのいでいるのですが、残りの1体は何も被っておらずとても寒そうです。
優しいお爺さんは自分の履いていたブリーフをお地蔵さんに被せ、「これでよし!」とご満悦の表情で家路に着きました。
家に帰ると、お婆さんが鬼に夜這いされていました。寝巻きを剥がれ、白いお尻が露わになっています。
婆「お爺さんや、助けておくれなしー」
鬼「ぐへへへ、ほら尻をこっちに向けんかババア!!」
爺「こんの色鬼め!ワシが成敗してくれる!」
お爺さんが鬼に殴りかかろうとした時、足元から「ちょっと待った!」と声がしました。
見ると、一寸にも満たない小さな子供のお侍さんが、針を片手にお爺さんを見上げています。
「お爺さん、この鬼を倒したら私をあなた達の子供にして貰えませんか?」
お爺さんが頷くと、子供侍は鬼に飛びかかりました。しかし鬼は大きな口を開けてあっさりと子供侍を呑み込んでしまいました。
ドスーン
ドスーン
その時、家の外から大きな地響きがしました。
曇った窓から外を見ると、巨大化したお地蔵さんが6体、こちらに向かって歩いてきます。5体は頭に笠を被っていますが、1体だけ白いブリーフを被っていました。
「わいにブリーフを被せたジジイはどこなー?!ぶち殺しちゃる!!」
めちゃくちゃ怒っています。お爺さんはヤバいと思いました。
「グエエええ!!」
その時、鬼が苦しみながら子供侍を吐き出しました。
「へへ、どんなもんだい!」
子供侍は呑まれながらも鬼の胃袋の中から針を刺したのです。子供侍は物凄いドヤ顔です。お爺さんは少しだけイラっとしました。
鬼が退散した後に見慣れない小槌が一つ落ちていました。お婆さんがそれを拾うと、子供侍は得意げに言いました。
「それはどんな願いも一つだけ叶う打ち出の小槌です。それで私を人間の大きさにして下さい。そして約束通り私をあなた達夫婦の子供にして下さい」
お婆さんが困ったようにお爺さんを見ると、お爺さんはまだ窓の外を見ていました。
「い、いかん!見つかった!」
お爺さんはバカなので巨大ブリーフ地蔵と目が合ってしまったのです。その瞬間、巨大地蔵はニタリと笑いました。
ドシーン
ドシーン
「おい!一寸法師!その小槌はどんな願いも叶うのじゃな?地蔵を!今すぐあのクソ地蔵どもを消してくれるように頼んでくれ!!」
一寸法師と呼ばれた子供侍は、もちろん首を横に振ります。
「お爺さん、それでは約束が違います。私をあなた達の子供として受け入れてくれると仰ったではありませんか?」
窓の外から巨大地蔵が部屋の中を覗き込んでいます。白いブリーフを被って幾分マヌケではありますが、両目が血走っているのが分かります。
「みーつけたー」
錯乱したお爺さんは一寸法師を踏み潰し、打ち出の小槌を両手でシャカシャカ振りました。
「いでよ、神龍!ワシの願いを叶えておくれー!!」
「……… 」
ヒョロヒョロと小槌から小型犬程の小さな龍が出て来ました。
龍はしばらくその辺を這い回った後、壁の穴から顔を覗かせているネズミを見つけ、ふらふらとその後を追って消えてしまいました。
「……… 」
お爺さんとお婆さんが目を合わせたと同時にバキバキバキ!!と物凄い音がしてお爺さんの家は巨大地蔵達に踏み潰されてしまいました。
「天誅!!」×6
お地蔵さん達は事が終わると元の大きさに戻り、山に帰って行きました。
…
…
分厚い雪が溶けだし、春の風が吹いた頃、お爺さんの家があった場所には一輪の花が咲いていました。
その花は誰も見た事がないくらいに赤く、いつまでもいつまでも枯れる事なくその花弁を大空に向かって開かせているのでした。
了
作者ロビンⓂ︎