これは、私が体験したお話しです。
…なんというか、オチどころが未だに分からない内容なので、読み終わった後、皆様には悶々と不快な感情を抱かせてしまうかもしれません。
その辺りをご了承頂いた方は、続きをお読み頂ければと思います。
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当時、私は小学校2年生だったと思います。
夏休みに入っていた私は、K県に住んでいる曾祖母ちゃんの家へ遊びに行きました。
曾祖母ちゃんの家は、それはそれは田舎で、以前紹介したE県の私の田舎よりもはるかに田舎で、最早【田舎】というよりは【魔界】という表現が似合う程、山々に囲まれ既に廃墟と化した民家が2,3件ほど残っているだけの土地に住んでいました。
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何度か引っ越しを提案したものの、認知症も半分来ていたのか、元が頑固故なのか、頑なにその地を離れることを拒み続けていました。両親はそんな曾祖母ちゃんに愛想を尽かす場面も多々あったのですが、私は単純に優しい曾祖母ちゃんが大好きでした。
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曾祖母ちゃんが作ってくれるおはぎは絶品でしたし、畑で取れた野菜は、野菜嫌いの私が唸り、かぶり付くほどフレッシュで美味しいかったのを覚えています。その日も、曾祖母ちゃんの作った手料理をたらふく食べ、おはじきやお手玉で遊び、畑仕事を手伝って…父親と虫取りに行ったり、母親と庭で花の種を蒔いたり、滞在期間の2泊3日を満喫していました。
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いよいよ、大阪へ帰る日の朝。
私は「帰りたくない。」とだだを捏ねました。
曾祖母ちゃんの家は、なかなかいけるような場所ではなく、次にいつ会えるか分からなかったが故に、別れるのがとても寂しく感じました。
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普段ワガママを言わない私があまりにもだだを捏ねるので、両親もすっかり困っていたと思います。
そんな私の手を握って、曾祖母ちゃんはしわくちゃの顔をもっとしわくちゃにして、私に笑い掛けました。
「雪ちゃん、心配せんでええ。またすぐ会える。」
その言葉に子供故に純粋だった私は、素直に頷き、大阪へと帰ったのでした。
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夏休みも終わり9月に入り、新学期でパタパタと忙しく過ごしていた私に、ある出来事が起きました。夜中、トイレへ起きた際、枕元に曾祖母ちゃんが座っていたのです。
驚いた私は声を上げようとしました。
「しーっ。」曾祖母ちゃんが私の口へ人差し指を当てます。
「雪ちゃん、約束通り会いに来たんよ。元気そうやねえ?」
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私は、小さな小さな声で言います。
「曾祖母ちゃん、いつ来たん?びっくりした。」
「今、来たんよ。会いたくなってねえ。」
「そうなんや、いつまでおるん?明日は学校も休みやから一緒に遊ぼう。」
そういうと、少し困った顔をした曾祖母ちゃん。
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「それは出来んのよ。ごめんね…でもまた遊びにおいで?」
「曾祖母ちゃんは、もう来てくれんの?」
「うーん…何回もは、難しいんだけどまた試してみるねえ。」
そう言って、私の頭を撫でた曾祖母ちゃん。
気が付くと朝でした。
曾祖母ちゃんに言われた約束があります。
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「お父さんと、お母さんには、今日バアちゃんが来たこと言っちゃダメよ?」
私は、その約束を守りました。
それから、曾祖母ちゃんが家に来ることもなく、私が遊びに行くこともなく、小学校5年生の時、曾祖母ちゃんは自宅で亡くなりました。老衰だったようです。加齢ということもあり、2日に1回介護ヘルパーさんが様子を見に来てくれていたらしいのですが、発見した時には布団の中で冷たくなっていたのだそうです。
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私が見た、あの曾祖母ちゃんは何だったのでしょうか?
曾祖母ちゃんは不思議な力なんてやつを持っていたのでしょうか?
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だったら…
最期の瞬間に、それでなくても、いつだって、会いに来て欲しかった…
何の謎も解けないままに終わってしまった曾祖母ちゃんの人生。
会いに行けなかった事が、今思い出しても悔やまれる。そんな思い出話です。
作者雪-2
長い間休業中だったのですが、8月より復活です。
夏もいよいよ本番…
皆様、如何おすごしでしょうか?
私は、絶賛夏バテ中です(ノД`)・゜・。
こんな暑い日は、背筋がゾーっとするような怖い話が聞きたいものです♬