中編3
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はんてん

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大学を卒業し私はおばあちゃんの家を離れ実家に

戻ることとなりました。

実は母親とは昔から虐待をされていたということもあり不仲だったためおばあちゃんの家で暮らすことになっていました。

私も大人になり就職をするということもあり、実家へ戻ったのです。

しばらくぶりの実家はなんだか緊張をして他人の家へ来たような感覚でした。

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部屋は幼い頃使っていた部屋を使うようにと言われました。それが悪夢の始まりだったなんて…。

母は虐待をしていた頃とは違いご飯をきちんと作ったり私の面倒を見ようとしてくれました。

久しぶりの温かい家族団らんを味わい私は自分の部屋へと向かいました。

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いくら久しぶりの温かい家族団らんを味わったかと言っても緊張をしていなかったわけではない。

直ぐに眠りにつきました。

次に目を覚ましたのは夜中の2時。

それまでつけていたテレビを消し再び眠りにつこうとした時でした。

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確かに背後に何者かの気配を感じたのです。

“それ”は部屋中に衣擦れの音を響かせて動いているようでした。

ズズズ…ズズズ…ズズズ…ズズズ…

次第にその姿が明らかになっていきました。

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「はっっ……!!!」

その姿はまるで某ホラー映画のヒロイン。

黒髪を垂らし細身の体を歪にくねらせる…。

私は布団をかぶりました。

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気が付くと空は明るくなっていました。

もちろんあの不気味な女性がいた形跡もなく…。

それからというもの部屋に備え付けられていた押し入れから夜な夜なドンドンドンと押し入れの中から音がするようになりました。

そして…私は覚悟を決めたのです。

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その扉を開けてみようと。

出来るだけ部屋の明かりという明かりをつけテレビを大音量にしました。

しかし緊張のせいか大音量にしたはずのテレビの音は聞こえませんでした。

何度も何度も開けるのを躊躇しました。

しかし覚悟を決め思いきって扉を開けました。

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中から出てきたのは大量の布団。

私は崩れてきた大量の布団の下敷きとなりました。

そして再び中を確認すると…

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そこには見慣れない子供用のはんてん。

そのはんてんは私のものではありませんでした。

父や母に確認をしてみましたがはんてんに見覚えがなく更に私のであればいくら長い間押し入れの中に入っていたとしてもそんなに色褪せないだろうと言うのです。それにみなみちゃんは私の家へ訪れたことはないそうです。私は翌日はんてんを持っておばあちゃんの家を訪れることにしたのです。

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実はおばあちゃんの家は実家の近くにあります。

このはんてんについてもおばあちゃんに聞けば分かるかもしれないということで持っていきました。

「あぁ、懐かしいねぇ」

「え?このはんてんのこと知ってるの?」

「もちろんこれは私が作ったものだからね」

「でも私のじゃないよね?」

「それは稲荷ちゃんのじゃなくてみなみちゃんのだよ」

みなみちゃんというのは近所に住んでいた私より4つ上の女の子で病死をしてしまった子。

私も幼い頃何度か遊んだことがあるというのですがすっかり忘れていました。

「みなみちゃんが生まれた時ね、私が作ったものなの…とってもよく似合っていたわ。でもどうして稲荷ちゃんの家にあったのかしらね」

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あれから部屋では怪奇現象は起きなくなりました。はんてんはみなみちゃんのご両親に渡しました。

とても懐かしんでくれて昔の写真を見せてくれました。

「これ!!可愛かったわ~」

はんてんを着ているみなみちゃんは本当に愛らしくて将来有望だと言われていたのがよく分かりました。

「でもどうしてみなみのはんてんが稲荷ちゃんのおうちにあったのかしら?みなみは稲荷ちゃんのおうちに行ったことがないのに…」

確かにそれだけが疑問でした。

「あれ…これ…」

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それは私の部屋の写真でした。

誰も写っていないただの部屋の写真は不気味で3人とも黙ってしまいました。

何のために撮った写真なのか?どうしてこんな写真を撮ったのかは未だに分かっていません。

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