もし、僕等のような祓い屋がこの世界から消えたなら、怪異による被害は増えるのだろうか。もし、霊能力者と呼ばれる存在がこの世界に居なかったら、悪霊は増えるのだろうか。
夏の夜空を見ながら、そんなことを考えている。僕は神原零、この町でもトップクラスの祓い屋だ。ずっと、そう思っていた。僕の父さんは神原一門の当主であり、業界でも名高い祓い屋である。しかし父さんは僕に本当の実力を見せたことが無い。だから、僕と父さんにどれ程の実力差があるのか全く分からないのだ。
もっと、もっと強くなりたい。神原一門の次期当主である僕は、そう思い自主的に特訓を始めた。
僕は霊能力と呪術の他に、エレクトロキネシスという超能力が使える。ハッキングなどの細かいことは出来ないが、発電したり感電させたりすることは可能だ。そして、この超能力を上手く活かせた一つの技を編み出したのだ。
『プラズマサイズ』
通常、ただ電気を発生し体外へ放出させるだけの場合では、放電状態になってしまう。もっと細かい技術まで持ち合わせたエレクトロキネシストなら電操も可能思うが、僕にはそれが出来ない。
それならば、発生させた電気を念動力で纏めればいいのだ。僕は他の人と違い、妖力での物体生成に特化した妖術が使える(これは普通の人が見ることはできない)。この力で大鎌を生成し放電させた電気を念動力で鎌に閉じ込める。妖刀よりも強い武器を作り出すことに成功したのだ。
僕は強くなった。自信があった。それでも、勝てない相手が存在していた・・・。
「雨宮しぐる・・・あなたは何者なんだ」
彼自身は自覚していないが、潜在能力の高さは彼に憑依していたサキという蛇の妖怪が証明している。しぐるさんは、間違いなく強い。僕なんかよりもずっと・・・。
一体何が彼を束縛し、力を思うように発揮出来なくさせているのか。逆に、それが無くなれば彼は途轍もない力を使えるようになれる。僕とは違う、本物の天才なのだ。悔しいが、認めるしかない。
もう自惚れるのはやめよう、自分の実力を受け入れるべきだ。
静かな夏の夜空に、僕は自分の小ささを見た。
作者mahiru
こんにちは、休載おまけです。
今週は諸事情により夏風ノイズ本編の更新はお休みさせていただきます。すみません。
次回の更新は8月9日水曜日です。