ひとりの女性が、ある男性に恋をした。
今まで異性と交際したことがないどころか、告白すらしたことがなかった彼女。
「優しい彼なら、私のことを受け入れてくれるかもしれない」と、勇気を振り絞って告白することを決意した。
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そしてある日、好運にも意中の男性と二人きりのシチュエーションに恵まれたとき、彼女は思い切って告白をした。
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しかし、彼女の想いも虚しく、彼の答えは「ノー」だった。
彼の返事はこうだった。
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「気持ちは嬉しいけど、それに応えることはできないよ。僕はね、色白で、ポッチャリとした女性が、好みのタイプなんだ」
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人生で初めての失恋。
その失意の中、彼女は鏡に写った自らの容姿を憎んだ。
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肌は少し老けて見えるほど浅黒く、女性的な丸みを帯びたボディラインとは程遠い、ガリガリタイプだったからだ。
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すでに、意中の彼のことで頭がいっぱいだった彼女は、絶望の淵に追いやられた。
だが、彼女は諦めなかった。
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彼の理想のタイプに近づくためにはどうしたらいいのか、来る日も来る日も思い悩んだ。
その結果、彼女はひとつの答えをひねり出した。
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「彼に愛されたい」
その強い想いに突き動かされ、一心不乱で彼の住まいへと向かった。
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*********
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男性は長期出張を終え、一週間ぶりに独り暮らしのマンションに帰宅した。
出張の疲れを癒すため、シャワールームに向かう彼。
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そこで、言い知れぬ胸騒ぎを覚えた。
シャワールームに充満する、日常嗅いだことのないような不快な臭い。
「何の臭いだろう?一週間も家を留守にしていたから、排水溝にカビでも生えたかな?」
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不吉な予感に襲われながらも、とりあえずバスタブに湯を張ろうと、フタを開けた瞬間!!
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「ぅぅうううわあああああぁぁぁ!!」
ひきつったような悲鳴を上げ、後ろの壁にもたれかかる彼。
あまりにもおぞましく、信じがたい光景を目にしてしまったのだった。
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バスタブにはすでに水が張られていて、その底に人間が横たわっていたのだ。
それは女性のようだった。
全裸であり、死んでいるのは明白だった。
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皮膚は水分を吸ってブヨブヨに膨れ上がり、ふやけて真っ白になっている。
目は虚ろに開き、生気は失われ、無表情のまま微動だにせず天井を見上げていた。
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あまりの恐怖に狼狽える彼。
そんな中、どこからともなく女性の声が響いてきた。
それは頭の中に直接語りかけているかのようだった。
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「さあ、私を見て!色白で、ポッチャリ…どう?あなたの理想の女性になれたでしょ?もうこれで私達は恋人同士。いつまでも一緒よ」
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すると、死んでいるはずの彼女が、ほんの一瞬だけ、不気味に微笑んだように見えた。
彼は、水面が揺らいで、そう見えただけだと信じたかった。
・・・
・・
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作者とっつ
ホラーテラーに投稿していた過去作品のひとつです。
女性目線のサイコなホラーと言えば、奈加さんですが、その足元にも及ばないと重々承知の上で投稿させていただきました。
心理描写を上手く表現できたらいいのですが、やはり苦手です。
過去作品はほとんど思いつきと勢いだけで書いているので、新作を書くようになったら、もう少し心理描写や情景描写にも気をつけて書いてみたいと思っています。
あぁ、投稿者として一皮むけたい(-_-;)