人形の森 X-4
music:6
三人が見上げる崖に巨大なトロールだ…
日本に生息する鵺と似た種類
しかし、その巨体は鵺に比べ物にならないほど大きく、再生能力は驚異的である。
知能は、さほど高くないが怪力を誇る。
トロールだけでも数十種類存在するが
崖からこちらを眺めるトロールは
1番古い個体で両肩には苔とキノコを生やしている
「ありゃ〜120年以上は生きてるな…厄介な個体に目をつけられるとは…」
アイボリーは緑色の液体が入った瓶を取り出し
レイモンドに手渡す
「お前達は下がってろ…30分でカタをつける」
レイモンドは緑色の液体を飲み干すと瓶をアイボリーに投げ
上着を地面に置き拳を強く握る
「トロールとやりあうのは3年ぶりだな!」
レイモンドの体に彫られた術式が飲んだ物の色に発光し、心臓近くにある術式が脈動する。
バーキン博士は興味深そうに、その光景を眺めていた。
「レイモンドさんに何が起きてるんですか?」
アイボリーはストップウォッチで時間を数える
「あれですか?あれは錬金術で生成した「エリクサーです。一言で言えば魔力の源ですね」
レイモンドはニヤッと笑いトロールの攻撃を躱す
「トロールだけにトロいな!」
レイモンドの右手が眩く光りトロールの頬を殴る
トロールの頬に直撃すると、その衝撃の強さがわかるほど鈍い音が辺りに木霊する。
トロールは頭を振りながら棍棒に手を伸ばした
「やっぱり、殺すには足りないか…トロール用の道具は持ってきてないしな…」
バーキン博士は、この光景を記録すべく写真を撮る
すると、アイボリーが叫ぶ
「あと、10分!」
レイモンドはトロールと殴り合いながら返事をする
「あいあいさー!」
レイモンドはトロールの一撃で吹き飛ばされ
集中しながら周囲を見渡す
ふと、枯れかけた枝を見つけ腰に付けたナイフで
先端を尖らせ、トロールの胸に向かって投げる
トロールの胸に向かって飛ぶ枝は微かに緑色に発光していた。
「殺せないなら、足止めだ!」
ブシュッ!という音を立てて、トロールの胸に刺さると、ドス黒い血が流れ、レイモンドはニヤリと笑い
「ゲッチュ!」
緑色に発光する拳をトロールに向ける
その瞬間に枯れかけた枝は急成長し、枝から無数の木の根が地面を目指して伸びていき
トロールを拘束する。
「ウガァァァ!」
トロールは腕を振り回しながら抵抗するが無駄に終わる
music:1
「さ、先に進むぞ!」
三人は草むらを掻き分けながら道無き道を進む。
すると、強烈な異臭が風に乗って臭ってきた。
吐き気、寒気、目眩が三人を襲う。それでも時間が経つと不思議なもので慣れてきた。
しかし、三人の前に突如現れた光景には耐えられなかった。
人の形をした灰色のブヨブヨとした塊
そこら中に塊が点々と空を見上げるように置かれていた。
その塊の下には黒ずんだ液体が溜まっており、それが一番の異臭を放っていた。
music:2
「これは…人間なのか?どうしてこんな姿に…」
バーキン博士が咳き込みながら布で鼻と口を押さえ異様な光景に驚愕していると
その奥から異様な体格をした男が、ノソノソと片手に赤く錆びた巨大な鉈を手に持って、こちらに向かってきていた。
「ありゃ…人間というより、巨人だな」
レイモンドが鼻を摘みながら笑う
異様な体格の男の頭部は毒々しい極彩色の花が咲いていた。
「ブフッ…ングフッ…ゴブォ…」
微かにニヤけた口元から緑色の液体を垂らしながら、嗚咽を繰り返す。
「ツリードピープルって確か…」
バーキン博士が何かを思い出したように呟いた
レイモンドは遠目でツリードピープルを視認すると
「あれがこの森を人形の森へと変えた張本人か」
ツリードピープルが三人に気付くと巨大な鉈を一心不乱に振り回しながら、三人に向かって走り出した。
「的が大きい分だけ当てやすいってもんだ!」
レイモンドが拳サイズの石を拾い上げ
ツリードピープルの顔面に向かって投げる。
ヒュン!!という空気を斬る音が聞こえ
その石はツリードピープルの頭部を吹き飛ばした。
ツリードピープルは糸が切れた人形のように
真っ黒な液体の水溜りの上に倒れた。
「100点満点!!」
レイモンドはステップを踏みながら意気揚々とツリードピープルの脇を歩いた、その時だった…。
頭部を失ったツリードピープルはレイモンドの左足を掴み、木々にぶつけながら振り回しアイボリーの近くに投げ捨てる。
レイモンドは汚れた服を眺め呟いた
「おいおい、まだ死んでないのか」
「頭が再生してますよ!」
アイボリーが、そう指摘するとレイモンドは
頭部が再生するツリードピープルを観察し気付く
「あぁ…なるほどー。再生の中心は、あの花か」
再生が終わったツリードピープルは巨大な鉈を掴み勢いよく投げる。
鉈は綺麗に弧を描きながらレイモンドに向かって飛んでくる。
鉈がレイモンドに当たる直前に、レイモンドの体中に彫られた術式が緑に発光し、鉈を右手で掴み取る。
「やれやれ…しつこい奴は嫌われるぞ!」
ツリードピープル…
通称「寄生花」とも呼ばれ「マンドラゴラ」とは系統が似ているようで異なる種類になる。
ツリードピープルは本来、呪いや業罰によって人間、妖精及び精霊が変化する存在とされる。
ツリードピープルは歩くことが出来ない
そのため寄生する対象を人間に限定する。
再生能力が高く本体である花を破壊されない限り
活動を続ける。
寄生された人間は土人形のごとく全身を「寄生花」の根が侵食し、肉体の破損した部分から寄生花の根が露出する。
レイモンドはツリードピープルの懐まで距離を詰め、強烈な蹴りでツリードピープルの体勢を崩し
頭部に咲く「本体」に向かって鉈を振り下ろす
ブシュッ!という音と辺りに赤紫の血が飛び散り
ツリードピープルは動かなくなった。
「これで終わりか?」
三人の背後に鎮座する人形達が不気味に蠢き始めた。
To be continued…
作者SIYO
いつも読んでいただきありがとうございます(๑╹ω╹๑ )
長い間、本当にお待たせしました。
「死神と俺の日常」も着々と書き進めているので
もうしばらく、もうしばらくお待ち下さい(๑╹ω╹๑ )