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中編3
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いもうと

俺には小生意気な双子の妹がいる。

どう生意気かって、小さい頃から俺を兄として尊敬していないどころか、まあ、おそらく馬鹿にしている。

そんな妹たちにある日変化がおきた。朝起きて歯を磨いていると突然、後ろから「お兄ちゃんおはよう」と、これまでに聞いた事のないセリフが飛んできたのだ。

寝ぼけてんのかな?と一旦はスルーしたものの、朝飯が並んだ食卓についてみると、今度は妹の方の美菜が俺の目をジッと見つめて「お兄ちゃんおはよ。早く食べないとまた遅刻しちゃうよ?」と、間違いなくそう言い放った。

「お、お兄ちゃん…だと?」

俺は全身に鳥肌を浮かべながらもなんとか朝食を食べ終えたのだが、その時に何を食ったかなんて覚えちゃいない。何せそこで繰り広げられていた夏美と美菜の会話がとにかく気持ち悪かったからだ。

「ねえねえ美菜ちゃん、食べ終わったらマモルちゃん(飼い犬)のお皿も洗ってあげてね」

「うんお姉ちゃん、ねえ最近マモルちゃんたら少し太ってきてない?ごはんの種類変えた方が良くないかしら?」

「そうねえ、確かに首の肉に埋もれて顔のシワがチャウチャウ状態になってるわね。

とてもパグだとは思えないわ、ダイエットさせた方がいいかもね、うふふ」

美菜ちゃん?

マモルちゃん?

かしら?

うふふ?

き、貴様らはいったい何者だ?!

俺の事をいままで『兄貴』としか呼んだ事のない妹たちの変貌ぶりに、俺は驚きを通り越して少し心配になってきた。何者かが俺の可愛い妹たちの体を操っているのではないかと。

「あら、どうしたのお兄ちゃん?目が真っ赤よ、やだ風邪でもひいたのかしら?今日は学校休んでお家にいた方がいいんじゃない?ねえ美菜ちゃん、体温計持ってきてくれる?お兄ちゃんたら少し調子が悪いみたいなの」

「はーいお姉ちゃん」

夏美の体を乗っ取った『なにか』がじわじわと俺に近づいてくる。

や、やめろ!こっちに来るな!貴様、いったい何が目的だ!?

「どうしたのお兄ちゃん?やっぱり様子がおかしいわよ?ほら、お口あーんしてこれを咥えて?熱でもあったら大変だから、ふふふ」

な、夏美はそんな気持ち悪りぃ話し方はしねえよ!てめえ!それ以上俺に近づいたらぶっ飛ばすぞこの野郎!!

「はい、あーーーん!」

!!!

俺は後ずさりしながら何かにつまずいて転けた。後頭部への強い衝撃を最後に、俺の意識はそこで途絶えた。

ボンヤリと脳が覚醒するのを感じながら目を開くと、俺は洗面台の鏡に向かって歯を磨いている最中だった。

「ねえ兄貴!いつまで歯あ磨いてんのよ?早くしてよ私も顔洗いたいんだけどー!」

夏美の肘鉄が俺の背中に食い込む。

「いてて!悪い悪い夏美、ちょっと待ってくれ」

いそいそと口をゆすぐ俺に向かって、こんどは台所の方から美菜の声が飛んできた。

「ねえ兄貴ーー!早く朝ごはん食べちゃってよもう!私まで遅刻しちゃうじゃんかー!最低!」

「おう、ごめんごめんすぐ行くよ」

そうそうこれでいい。

これがいつもの日常。夏美も美菜も生意気だが、それでこそ俺の可愛い妹たちだ。

「ねえねえ早くー」

夏美がコンコンと俺の背中を突きながら急かしてくる。

「わかった、わかったよ」

濡れた口をタオルで拭いながら顔を上げたところで、俺の息は一瞬止まった。

鏡に映っている後ろの女は、いままで一度も見た事がない女だった。女は鏡越しに目が合うと、目尻にシワをよせて笑った。

「 …ねえ兄貴、これでいいんでしょ?」

俺は作り笑いをしながら、心の中で夢なら早く覚めてくれと願った。

Concrete
コメント怖い
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演出次第ですが、「世にも」でも上出来の部になるかも。

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夏美の話をここまで喜んでくださる方はラグト先生と欲求不満先生とNAOKI先生だけです!ありがとうございます!…ひひ…

あ、そう言えばお二人共、お元気ですかね…ひ…

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