「ねぇねぇこの噂知ってる?」
大学の1限の授業中に友達からそんな話をされた。
「噂?」
この友人はよく噂話を拾ってくる
いつも朝からハイテンションな友人だ。
それにしてもいったいどこで
聞いてくるのか分からないが、
変な噂をいつも俺に話してくるのだ。
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「そう!幽霊になれる噂!」
「は?何それ、死んだ後の話?」
死後幽霊になれるということだろうか?
それはなってみたいような
そうでもないような感じがする。
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「違う、違う」
手を振って大げさに否定する友人
「じゃーどういう話なの?」
友人の語る幽霊になる方法は以下の通り
まず、紙にあ~んまでの文字を書き、
紙の上部に鳥居を描く。
そしてその鳥居の横にはい、いいえと書くのだ。
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これこっくりさんじゃない?
その考えが分かったのか友人は
「最後まで聞いてくれ」
と言ってきた。
以下続き
あ~んまでの五十音に赤で○を予め描くそうだ
それは「か」「わ」「つ」「て」の四文字
そして鳥居の横にある「はい」に○を描く
これを書いた紙を枕の下に置くということ。
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「これなんでかわってなの?」
「噂だとこれで幽霊の見ている所を
変わって見せてくれるらしい」
嘘くさい。
非常に嘘くさい・・・
「これ幽霊になれる方法って言わなくない?」
「細かいことはいいじゃないか
今日一緒にやろうぜ!」
「お断りさせていただきます」
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「牛丼おごってやるからさ」
「しょうがないな」
俺の意思は弱かった。
貧乏学生にとって、
嘘くさい噂よりも食べられるご飯なのだ。
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そうして俺は牛丼特盛汁だく卵付を
満足気に食べ久しぶりに腹いっぱいになった。
「ちくしょー、遠慮なく食いやがって」
「ははは、でもその嘘くさい噂のやつ
ほんとにやんの?」
「やる!だって面白そうじゃん?
出来なくてもネタにはなるって」
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そういいながら友人の家に向かった。
夜遅くまでゲームやテレビなどを見て
時間は深夜0時になっていた。
「よし、そろそろ準備しよう」
そう言いながら友人は紙とペンを用意してきた。
俺がテレビ見ている間にまずベースとなる
こっくりさんのような紙を作っていたのだ。
「ほらこれお前の紙ね」
そう受け取り、いまさらになって
これほんとにやるのかと内心思い始めていた。
霊感はないが幽霊ってのは
あると思っている。
噂自体は嘘くさいが、
何か気味が悪いと
思い始めていた。
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友人はさっそく○を書いて枕の下においている。
俺はそれを見ながら自分に配られた紙にも
同様に○を書き始めた。
「よし、じゃー寝ようぜ!
どうなるか、楽しみだ」
「何もないと思うけどね・・・」
明日は朝から学校のため、
アラームをセットして
そのまま眠った。
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俺は外を歩いている。
ここはどこだろう。
今自分の意思とは無関係に
体が勝手に動いている。
だれもいない道路、
青で点灯している信号
でも車は通っていない
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信号まで来ると見覚えのある景色だった
そうだ、
あれは友人の家に行く途中にあるコンビニだ
場所が分かった瞬間、
どこか漂っていたような体が
明確に動き始めた。
そのまま俺の体は見慣れた景色の住宅街を
進んでいった。
あぁそうか友人の家に向かってるんだ。
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そうして玄関のドアまで来た。
不思議だった。
ゲームのようにまるで
外から町へ移動するように
一瞬で玄関の中に入っていた。
そのまま、進みドアを通りぬけて
部屋で二人の男が寝ているのをみつけた。
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誰かが寝ている。
誰だろうか。
部屋に入っても俺の体は勝手に進んでいく。
寝ている二人の男、
そのうち一人は友人だ。
じゃあ
その隣の男は?
俺だ。
俺が寝てる。
じゃあ今の俺はなんだ?
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そう考えていてもまだ体が止まらない
徐々に俺の体に近づいている。
まるで寝ている顔を覗き込んでいるように。
なんだかこのままではまずい気がしてきた。
その時、
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「♪ーーーーー」
スマホのアラームだ。
俺はその音で目が覚め
絶句した。
目の前顔20センチの所に
凄い形相をした女がいた。
「うわー!!」
俺は飛び起き、周りを確認した。
もうあの凄い形相をした女はいない。
あれが幽霊なのか?
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俺は息を整えて。
まずスマホを見た。
時刻は4時
どうやらアラームをセットするときに
時間を間違えたらしい。
俺はアラームを止め
隣の友人を見た。
寝ているのかと思ったが違った
目を開け、よだれをたらし、痙攣している
いや・・・様子が少しおかしい。
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「カワッテカワッテカワッテカワッテ」
小声でぶつぶつと何かしゃべっている。
「おい、起きろ!!」
ゆすっても起きない。
「おい!!目を覚ませ!!」
バチッッ!
頬を強く叩いた。
まだ友人の痙攣は治まらない。
俺は思いつきで
友人の枕の下にある
紙と俺の紙を二つ抜き取り、
外へ出た。
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まだひんやりしているが、
徐々に太陽が出てきているようだ。
俺は二つの紙をタバコで使っている
ライターで燃やした。
そして台所から塩を探し、
友人にぶっ掛けた。
そしてまた無理やり上半身を起こし、
叫んだ。
「目を覚ませ!!!」
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少しずつ痙攣が収まり、
友人が徐々にではあるが意識を
取り戻した様子だった。
「なにこれ・・・顔がすごいたいし
なんかしょっぱい」
俺はあきれつつ元に戻った様子の
友人をみて安堵した。
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翌日の大学1限
ほぼ単位取得のための授業であり、
教室の一番後列という中々の席を
確保していた。
「いやー・・昨日はほんとにやばかったよ」
いつもハイテンションの友人だが、
さすがに今日は沈んでいた。
「昨日さ、夢?なのかな
見覚えるある場所を動いていて
どんどん家に近づいていくんだ」
そこは俺と同じようだ。
ただ話を聞いていると俺よりも
早く部屋に戻ったようだ。
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「それで自分の部屋に行くとさ
自分とお前が寝てるんだよ
あれ?って思ったんだけど
段々自分の顔に近づいて
そこで意識がなくなったんだ」
あぶなかった。
俺ももう少しであぁなってたのか。
「これ「かわって」てのはほんとにそのまま
幽霊と代わるって事だったな」
ほんとだよと愚痴る友人
もう絶対こいつの変な噂に乗らない。
つまらない授業を聞きながらそう思った。
作者カル
友人が似たような体験をしたため、
それを加筆してストーリーを作りました。
少々長くなってしまいましたが、
楽しんで頂けると嬉しいです。
作中のやり方は創作ですが、
念のため真似しないで下さい。
悪い夢を見てしまうかもです。