田舎のビルの二階の一角なんかに、占いのお店なんかがあったりするのを見かけたことはないだろうか?
僕の仕事も正しくそういう店の受け付けだったりする訳で、こういうお店に来る人は、大体少し変わっているか、好奇心旺盛な人だけだ。
そもそも、占いの金額が高いことが多いので、働いている僕が言うのも変な話だが、勿体無いことだと思う。
では、どうして僕がここで働くことになったのかと言うと、就職が続く方法を占って貰いに来たら、まんまとここに採用されてしまったのだ。
実際、もうかれこれ一年働けているので、あながち占いも間違っていなかったのかと思うが。
さて、前置きが長くなったが、此処は怖いと思った話をする所なので、今日は僕が体験した怖い話をしようと思う。
この間来たお客さんに、都市伝説や怖い話、凄惨な事件があった場所に向かったりする様なリポーターを生業としている男の人がやって来た。
僕は、すぐに嫌な予感がして、双輪さんに報告したが、双輪さんはそんな男の人を受け入れ、中で話を聞き始めた。
もちろん、僕は気が気では無かった。
ここは、お祓いの類の店ではなく、占いをする場所なのだ。
僕は、どうして双輪さんが彼を受け入れたのか理解出来なかった。
今回の依頼内容は、仕事が成功しないので、今後どうするべきかと言った内容だった。
なんでも、彼は結婚していて、息子さんも1人居るそうなのだが、奥さんが病気になり、入院することになったそうだ。
けれど、収入が安定していない彼が生活費を稼ぐ為には、面白い記事を書くしかない。
結局、お見舞いにも碌に行かず、息子の面倒もマトモに見れず、仕事を続けてしまっていたのだそうだ。
そうしているうちに奥さんの病状は悪化し、彼女は他界。奥さんのお母さん、つまり、彼の義母に当たる人が息子さんを引き取り、自分の仕事をしている意味があったのか、また、もっと良い仕事があるのではないかと占いすることを決意したらしい。
そんな男の人に、双輪さんは笑顔で言った。
「お辛かったでしょうね。でも、貴方は今の仕事を続けるべきです。」
男の人は、怪訝な顔をした。
けれど、双輪さんは真剣な顔つきでこう続けた。
「貴方の仕事が上手く行かないのは、いわゆる悪霊と呼ばれるものの仕業です。彼らからすれば、貴方は住処を荒らす悪人。そんな人に成功して欲しい訳がない。けれど、今、そんな悪霊と闘う細い手があります。貴方の奥さんの手です。奥さんが、貴方に成功して欲しいが故に、一生懸命悪霊と闘ってくれているのです。貴方がこの仕事を投げ出してしまっては、奥さんの努力も無駄になってしまう。必ず、貴方の仕事で有名になれるはずです。なので、もう少し踏ん張ってみませんか?まず、一年踏ん張って、それでも上手く行かなければ、またうちに来てみてください。必ず、お力添え致しましょう。」
男の人は、その話を聞いた時に、涙目になってお礼を言った。
僕は、その時の双輪さんの顔が忘れられない。
僕も双輪さんも、いわゆる霊感があるという奴だ。
けれど、霊感があるだけで、お祓いが出来る訳ではない。
彼の背中には、尋常じゃない量の人が憑いていた。
そして、彼の守護霊に奥さんなど憑いていない。
それもそうだろう。
病で苦しんでいたのに、自分の見舞いは愚か息子の面倒すら見ない旦那を守りたいと思う人がこの世に居るのだろうか?
彼が今、やる気がでないや仕事が成功しないで済んでいる理由は、彼に復讐したい幽霊が多すぎて、彼の背後で争っているからに過ぎないのだ。
もし、彼らが手を組んでしまえば、忽ちあの男の人は、この世に居られなくなるはずだ。
「どうして本当のことを教えてあげなかったんですか?」
僕がそう言うと、双輪さんは冷たい眼をしてこう言った。
「例えば、お前の部屋や家族が荒らされて、世間の見世物にされて、気分は良くないだろう。ましてや、自分の家族すら大切に出来ない男だ。その上、自分が回りを大事にしていないのに、いっちょまえに愛されていると天狗になっている。もしも家族が大事に思えたなら、奥さんが息子さんを守りに行くと分かってるだろうさ。つまり、そんな男が生き長らえた所で、誰も得しない。それなら、いっそ仕事を続けて、幽霊に取り殺された方が、幽霊の気分もスッキリするし、良いんじゃないかと思ってね。」
双輪さんは、言葉を上手に使うからクライアントの欲しい言葉を伝える。
けれど、アドバイス自体がクライアントの為になるかどうかは分からないのだ。
「双輪さんて、絶対敵に回したくないタイプですね。」
「ま、否定はしないね。」
双輪運命堂に来るときは、一度自分の胸に手を当ててくる事をオススメする。
作者適当人間―駄文作家
初の幽霊モノ?ですかね。
私は、怖い話は好きなのですが、いかんせん霊感がないので、幽霊系の怖い話を書くのが苦手です。