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中編4
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歌が聞こえる(前編)

「ねーねーAくん、私のオカルトコミュ見た??」

るんるんした目付きでNちゃんは言う。

「最近すごい話題になってるんだよ!!人魚姫!!」

もう次にくる言葉はわかっていた。

「行こって言うんでしょ?いーよ見に行ってみよ♪」

そう言うと、「やった~!!」と飛びはねて喜ぶ彼女は、わたあめを買ってもらった幼子のように可愛らしい。

これは兄貴が死んでからの俺達四人の話し。

Nちゃんの管理しているオカルトコミュには、その時流行りの都市伝説に心霊スポット、はたまた怪奇現象などなど、いろいろ書き込まれているのだが、日々チェックをかかさないNちゃんのお眼鏡にかなったのは、とある泉の人魚姫の伝説だった。

つい最近テレビでもコアな番組に取り上げられていたのだが、どうやら人魚のミイラが見つかったのだがツッコミどころは満載だった。

・人魚って海じゃないの?

・ど~せ猿の乾物と魚を組み合わせたんだろ?

・なんで姫ってわかるの?etc.

何にしろ、現場に行ってみればわかるだろうと、軽い気持ちで向かった。

そこは、山奥と呼ぶのにふさわしいほどの山奥で、村とも集落とも呼べるような田舎であった。

「うん、ここでまちがいないね…」

ボソッとつぶやいたNちゃんが落胆しているのはいうまでもない。来る前に予想もしていたものの…

「村おこしだね、これ。」はははと苦笑いをしたのは“ 人魚姫伝説の村”だとか“ 人魚のミイラが見つかった村”だとかを、大々的に村の至る所に貼り出し、人魚煎餅に人魚クッキー、饅頭にプ○チョとのコラボまである。

こういう所は大半がヤラセだったりする商業目的なのだ。

「まー見るだけ見に行ってみようよ!!」と、Nちゃんの背中を押し、いくつかのミイラを見て回った。

猿の乾物だったり、手だけだったり指の間に水かき(接着面が雑)を見せられたりして、Nちゃんはいよいよ不機嫌になっていた。

「村ぐるみでやるんなら、せめて一箇所でミイラまとめて展示しろよ。」ブツブツ言いながら、Nちゃんの怒りはおさまらなそうだった。

肝心の泉はと言うと村外れにそれなりに大きな泉があり、反対側は見えない程のもので、泉の真ん中辺りには祠のようなものがポツンと設置されていた。

泉の近くのお土産屋さん(一福亭という中華屋ぽい名前の古びた店)で人魚寿司なる手巻き寿司6個いりを買い、ぽかぽかと暖かい陽射しの中Nちゃんと座り込み食べていた。

すると「人魚伝説ですか?」と声をかけられ振り返る、そこには背の高い顔の整った、いわゆる俺達の敵「イケメン」が立っていた。

存在するだけで得をし、息をするだけで女がよってくる魔物だ。

俺は彼らを毛嫌いする。だがそれは決して俺がイケメンでは無いからではないので悪しからず。

「そうなんです。でも本物が見たくて来たのに、どう考えても偽物みたいなのしかなくて、凹んでいたところなのです。。」

なのです。は?何そのよそ行きボイスNちゃん。

Nちゃんの横からイケメンを睨みながら俺は尋ねた

「お兄さんは、この辺の人?なんか売りつけよーって思ってるならお金ないから買えないよ俺。」

我ながら最高にダサい。Nちゃんは俺を無視して彼を見つめていた。

「私はこの近くで絵の展覧やっている者ですが、特に絵を売りつけようなんて思っていませんよ」

と微笑み返してくるのであった。

スタートの時点で100-0ゲームの気分だった。

「え~見てみた~い♥」甘い声を出しているNちゃんはもう人魚に飽きていたのだろう。

彼の名はYといい、この村に生まれ育ち、ここで絵を書いて暮らしているのだと言う、彼のアトリエにお邪魔させてもうと風景画ばかりを書いており

その中には、泉の絵もあった。

そしてその泉の絵を見てすぐに俺は突っ込んだ。

「あんたも村おこしかよ。」

なぜならその泉の絵には、裸の女が長い髪を背にたらし、泉に映る月に飛び込もうとしているような、そんな一瞬を描いていたからだ

「そう言われてもしかたありませんね」

彼は少し笑うと、今度はイタズラな顔をしながら

「でも、とても歌声の綺麗な、人魚のような人でしたよ」と言った。

彼もこの村の人魚伝説が昔から好きで、自分の専門学校で仲の良かった、Mさんにこの時のモデルをしてもらったのだそうだ。

少し彼に興味が湧いたので村や、彼についてのことを教えてもらい、"こんな田舎"だからこそ出来ることもあるんだよ。という彼は、キャンプの用意を始めたのであった。

その夜3人で泉沿いの広がった場所にテントをはり。俺達は村のコンビニ?(一福亭)で買ったアルコール片手に話し込んでいた。

「なんで話しかけてくれたんですか?あの時」

Nちゃんは何か期待してる風に聞く。

「見たことない人達だし、ここに来るとすれば人魚かなって」

あははと笑ながら答え、それに・・・

「みんなは知らないけど、人魚に会うには本当は方法があるんですよ」

と、付け加えた。

これにはオカルト狂の2人とも多いに反応した。

「どうするんですか!?」

それこそシンクロする程に。

彼が言うにはやっぱり人魚は歌が好きなんだそうだ、そこで彼は Mさんと絵を書いていた時の話を聞かせてくれた。

Mさんはとても歌が上手く天真爛漫な人でことある事に歌を口ずさんでいるような人だったそうだ、その日 M さんは絵を書いている彼に向かって

「人魚姫なら歌わなきゃだよね♪絵のモデルするからには、その絵の登場人物になりきらなきゃって先生言ってたしね♪」といったが

「じっとしてるのに飽きたからせめて歌いたいんだろ?」と彼は返した。

Concrete
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