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幼馴染み ⑦

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プルルルル

美「もしもし」

川「 あっ、美穂ちゃん? いま家の前に着いたからすぐに出て来てくれる? もう時間がないから急いで!」

プープープー

美「 ちょ、ちょっと川口くん!もう!今何時だと思ってんのよテッペン回ってんじゃん!

こんな時間に外出するだなんて、お母さんにバレたら怒られるなんてレベルじゃないのに、もう…ぶつぶつ」

20分後

川「 あっ来た来た!美穂ちゃんこっちこっち!」

美「 ちょ、ちょっとシーー!!馬鹿みたいな大声出さないでよ!近所の人にバレちゃうじゃないの!変な評判立ったらどうしてくれんのよ?」

川「 ごめんごめん、早く乗って! 詳しい事は車で話すからさ」

美「 ちょっと待ってよ。本当に大丈夫なの? まさかあんた、私に変な事する気じゃないでしょうね」

「 へへ、美穂ー」

美「 えっ、希美? な、なんであんたが先に乗ってんのよ?」

川「 ああ、希美ちゃん家の方が近かったから先に迎えに行ったんだ。ささ、美穂ちゃんも早く車乗って!稲河さんを紹介したいからさ」

美「 ん、もう!しょうがないわね。

でも、もし少しでも変な事しようとしたらこれが火を吹くからね!!」

川「 す、スタンガン!」

ブロロロ

稲「 いやいや、これはどうもはじめまして… わたくし稲河と申します。

美穂さんと言いましたかねぇ?突然の事で驚いてるでしょうが、川口君からお話をお伺いして、実は私も驚いてるんですよ。まさかあなた方、本当にアソコへ行っただなんて、ってねぇ…」

美「……… 」

稲「あの場所はダメなんだぁ… 絶対に近づいちゃいけない場所なんですよ。ましてやあなた方は素人でしょ?ダメだな~、絶対ダメだ~。

いやね、あそこは本当に出るんですよ… 強いのが居るんだぁ…」

希「………… 」

稲「トイレのドアをギィ~と開けるとね、中からふわーっと生ぬるい風が吹いてくるんだ。

なんかヤダな~、なんかヤダな〜なんて思う間もなく、辺りはゆーっくりと昼間のように明るくなってきて… 聞こえるんですよ。ジワジワジワジワ…と蝉の声が。

いやね、その昔そこのトイレである事件が起こってるんですよ。男の子が一人死んでるんだ。イジメですよイジメ。イジメられてたんですよね~その子。

暑い暑い、真夏の昼休みに閉じ込められてましてね。イジメっ子たちは、生まれつき心臓が弱い男の子を来る日も来る日も、トイレの個室に閉じ込めて笑い者にしてたんだ…」

川「ひ、ひどい」

稲「そしてその日。いつものように閉じ込められてトイレから出る事の出来ないその子は… 忘れられちゃったんだ。

イジメグループは閉じ込めた彼の事なんてすーっかり忘れて、家に帰ってしまったんですよ… いやあ、子供というものは本当に恐ろしいイキモノだ。

発見されたのは日曜日を挟んだあくる日の月曜日で、もう男の子は冷たくなっていた」

美「……… 」

希「……… 」

稲「それからですよ。次々にそのトイレで事故が起こったのは… 子供が亡くなったり消えたりしたんだ。男の子の祟りだ、と生徒達は震え上がりましてね。

やはり寂しいんでしょうかねぇ? 気にいったら容赦なく連れてっちゃうらしいんですよ彼、ひひひ。

結局そのあと、学校は同じ町の少学校と合併して廃れてしまいましたがね… 待ってるんですよね今も…

あの男子便所だけが、当時の暑い夏の日のままで刻が止まってる。今も男の子は新しい友達を探してるんですよね…」

美「……… 」

希「……… 」

川「 ちょっちょっと美穂ちゃん!希美ちゃんまで!なんで寝てるんだよ? せっかく稲河さんが話してくれてんのに!」

美「 …… んっ?あ~終わった?

だってそのオジサンの話、超長いんだも~ん! つかもう12時回ってんのよ!そりゃ普通の人間は眠いわよ!」

希「 えっ、やだ!私も寝ちゃってたの?全然気づかなかった。せっかく稲淳のお話生で聞けてたのにどうして…」

稲「 ひひひ…いいんですよお嬢ちゃん方。だってしょうがない。二人の魂の半分近くはもう、アッチ側に行っちゃってますからねぇ… 」

川「 いっ、稲河さんそれどういう事っすか?」

稲「 可哀想だがもう憑かれちゃってるんですよ。今はまだ泳がされてるだけで、結局はあの場所に呼び戻されるんです。そう…だから眠いんだぁ…」

美「う、嘘でしょ!」

稲「早く現場で男の子を供養して上に昇げてやらない事には、お嬢ちゃん達は確実に連れて行かれるでしょうねぇ~ 」

希「美穂怖いよー。死にたくないよー」

美「だ、大丈夫よ希美!私がついてるから平気だって!」

川「 ほらほら!やっべーじゃん急がないと!す、すいません真子さん、もう少し車の運転急いで貰えませんか?! 」

真「 …ふん。お前らが勝手に行くからだ」

川「 ど、どうしたんすか真子さん」

真「 だからお前ら行くな!つっただろうがーー!!

知らないよ私はどうなってもさ!!」

美「 ね、ねぇ川口君…その運転しながらめちゃくちゃ怒ってる人、誰なの?」

川「 あ、ああわりぃわりぃ!真子さんの紹介がまだだったよな。

彼女は稲河さんの助手で運転手の、北野真子さんだよ」

美「 き、北野まこと?」

川「 いやいや「まこと」じゃなくて真子さんね。彼女も今回、俺達に力を貸してくれるって言うから一緒に来て貰ったんだ! 」

美「 あっそうなんだ… どうも初めまして私吉岡美穂と言います。えとこっちは永田希美です。あの…宜しくお願いします… 」

真「 ふん。あんたら高校生でしょ?

まあ、いまさら何を言ってもしょうがないけど、よくもまぁあんな危険な場所に子供たちだけで行ったものよね。怖いモノ知らずもいいとこだわ! 」

美「はあ、す、すいません」

真「あの場所はさっき稲河先生が言った子供の霊とはもう一人。とても厄介なのがいるのよ。どちらかと言えばそっちの方が大変かもしれない」

美「 も、もう一人ですか?」

真「 そうよ。

亡くなった子供の「母親」がいるの」

美「 は、母親? 」

真「 そう。彼女は事件後、自分の息子の後を追ってみずから命を絶っている。とても激しい怨みを抱いてね」

希「……なっ!」

真「母親は、イジメの事実をもみ消そうとした学校側と、事件後何事も無かったように学校へ通うイジメグループの少年達が許せなかったのよ!

これはあくまで私と稲河先生の推測だけど、実際トイレに引っ張ってるのはその母親なんじゃないか?ってね。

あなた方は見てないかもしれないけれど、あの廃校では上下赤い服を着た中年の女性の霊も頻繁に目撃されてるの」

希「 ねえ、私たち本当にそんな怖い場所に行ったのかしら?!美穂は何か思い出した? 」

美「 ………赤い女。

う、痛い!!

だめ、頭が割れそう! やっぱり何にも思い出せない!!何か思い出そうとしたら頭が割れそうになるの!」

真「 やめなさい。無理に思い出す必要はないわ。まあ、おそらく今回の一番の相手はその母親で間違いないでしょうね」

稲「…そうなるでしょう」

真「川口くん見てみなさい、今回はその母親の私物をうまく手に入れる事が出来たのよ」

川「うわ!何んすかこのきったねえノート?!シミだらけで相当年季が入ってるじゃないすか」

真「 ふふ、シミ? 川口くんにはこれがシミに見えるのね。ちょっとそのノートを開けて見て」

川「 えーマジっすか?超気持ち悪いんすけど。うわ、マジか!!なんか人の名前みたいなのがギッシリと書き込まれてる!しかも赤い字だしキモっ!

うわー何だこれ、恨み事なんかも沢山書き殴られてるじゃん!

え?嘘だろなんすかこれ?髪の毛みたいなもんが所々、テープでとめられてますけど… 」

真「 ああ、それ? それは見ての通り、呪った相手の髪の毛だと思うわ。

それを彼女がどうやって手に入れたのかは分かんないけどね。それと、そこに書いてある字は全て血文字よ。相当な恨みよ。つまり母親の怨みが全部そこに詰まってるってわけ」

川「 うげー。つか真子さんこんな気持ち悪りいもん、いったいどこで手に入れたんすかー?」

真「 うふふ。知りたい?

残念!それは企業秘密なの。まぁ私と稲河先生は色んな方面にお知り合いが沢山いる、とだけ言っておくわ。うふふ 」

川「 いや、うふふ じゃなくて教えて下さいよー。つか、そもそもこんなもんが今回の件になんか役立つんすか?!」

真「 まぁ立つか立たないかは正直行ってみないと私にも分からないけどね。

それから現場に着く前にあなた方に渡しておきたい物があるの。ちょっと川口くん、そこの三列シートの奥にあるケースを取ってくれないかしら?」

川「 あ、はい!

うわ!なんだこの人形!気持ちわりぃ!!ズタボロじゃないすか!!」

真「 ちょっと川口くん!あなたいちいちリアクションが大きいわよまったく!イライラする!

それはあなた達の人形よ。それに自分たちの名前を書いて、体の一部を背中側に埋め込みなさい。

そう、たとえば髪の毛とか爪なんかがいいわね。分かったらぶつぶつ言ってないで、さっさと始めて頂戴!」

川「 えー、マジすかー?なんでそんなめんどくさい事するんすか?この人形って一体なんなんすかぁ?!」

真「 あーそれ? それはもしもの時にあなた達を守ってくれる身代わり人形よ」

川「 み、身代わり!」

真「 そうよ。その人形はいざという時の為の保険なの。

あと、御札やお塩やお酒。懐中電灯に防犯ブザーなんかも入れといたから。役に立つか分かんないけど、もしはぐれたりなんかしたら大変だから、一応持ってて」

川「 は、はい、真子さん。有難うございます! じゃあこれ、美穂ちゃんと希美ちゃんの分。

あっ!!

この二人なんか静かだなと思ってたら、またイビキかいて寝てますよー。なんだよこんな時に、緊張感ないなぁー!」

稲「 ん~、ちょっとこれはマズイかも知れませんね~。思った以上にやられてるようだ。北野くん、私たちは少し来るのが遅かったのかも知れません」

真「はい、そうですね」

川「 い、稲河さん本当すか?!もしかしてこの二人って… もう助からないんですか?! 」

稲「 いえいえ、まだ行ってみない事にはなんとも言えませんが…まあ一刻を争う事態には変わりないでしょう。

しかしこの二人…

奇跡的に助かったとしても、何らかの後遺症が残ってしまうかも知れませんねえ。

さぁさ北野くん、とにかく急いで参りましょう!」

真「 はい、先生!」

ブロロロ

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続く

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