あーあ、もうすぐ三十路を迎える男の人生初の金縛りが、よりによって大晦日の夜ってどうなの?
クリスマスも一人、大晦日も一人、せっかくの正月休みも予定がないからずーっと一人。それだけでも悲しいのに、もうすぐ年が明けそうなこのタイミングで金縛りって。とほほ、こりゃ来年も良い事はなさそうだな。
って、一人布団の中で嘆いていたら、なんとなく部屋の隅から人の気配がした。とっても見たらいけない気がするのに、意思に反して僕の目は泳ぐ。
やっぱなんか立ってる。
あっ、女だ。
ホラー映画かなんかで見たようなベタな白い服。ボサボサの黒い髪は腰ほどもある。両手は項垂れるようにブランと前にたれ下がってて無気力に見えるけど、顔はにこにこしてる。
ねえ、君が僕に金縛りをかけてる?それとも君は金縛りが見せている幻覚かなんか?まあどっちでもいいけどさ、そんな笑顔で僕を見ないでくれる?怖いから。
あっ、女の上にある時計の針が12時を指してる。あ、あの、あの、幽霊さん。明けましておめでとうございます。今年も…
今年も…
できたら、もうこの部屋から出て行ってくれませんか?
とは言うものの、こんな状況下でなんとなく一人じゃなくて良かったなーって感じるこの複雑な気持ちは何なのだろう。
んー、君ってなんとなくだけど、中学ん時に引っ越していった女の子に似てるなー。あの子はクラスで一番モテてたし、実は、僕もその子の事が大好きだったんだ。見ればみるほど君はあの子に良く似てる。
まあ、なんにしろ多分、いや間違いなく君のおかげで一生忘れられないお正月になると思うよ。
ありがとう。
了
作者ロビンⓂ︎
来年もよろしくお願い致します…ひひ…