きょうは最高のドライブ日和だな。
えっ、お前らなんかと来たくなかった?
おい、みんな。こいつこんなこと言ってるよ。
ああ、わかったわかった。お前だけビールも飲まずに運転してくれてんだから愚痴ぐらい言わせてやるよ。でもさ、結局俺らしかドライブするやついないじゃん、ははは。
まあそう腐るなって。いつかできるかもしれない彼女のために助手席温めてやってんだから、ははは。
ところでこの山の辺りにさ、牛鬼伝説あるの知ってる?
元ネタ? そういうの載ってる本を読んだんだよ。
夜に山越えしていた村人が巨大な黒い牛を見たって。大きな目が赤く光っていて、腹の底から響く唸り声を発していたっていう記録が残ってたらしい。
えっ、その牛をどうしたってか? そりゃ村人たちで寄って集って殺したんだろ。だって化け物だぜ。そのままにしておくわけないじゃないか。
都市伝説じゃねえよ。古い記録にあったれっきとした文献でちゃんと地名なんかも詳しく書かれてあったんだから。
そうだよ。だから言ってんじゃんこのあたりだって。え? 今から行こうって?
よしわかった。
おいみんな。今から牛鬼伝説の検証に行くぞ。誰かスマホで動画撮ってくれ。
あ、あれだ。標識に地名がある。右に曲がるみたいだな。
separator
結構狭い道だな。おい気を付けろよ。ガードレールのない道だ。落ちたらひとたまりもないぞ。それになんだこのでこぼこの山肌。もうちょっと何とかならなかったのかよ。飛び出たとこ尖ってるじゃねえか。おいっ、慎重に行けよ。っわ、あぶなっ、あんな岩でこすったら車体が抉られるぞ。
笑ってる場合か。ちゃんと走れ。スピード出すなって。
ああそうだよ。俺はビビりだよ。頼むからゆっくり走ってくれって。こんな狭いくねくね道だぞ。
おいっ前のカーブ急すぎないか。もっと速度落とせって、ぶつかるだろぉぉぉ――うわああああっ――
separator
ああ、痛たたた。おいっ、みんな大丈夫か。
もう夜じゃないか。俺ら気絶してたのか?
思いきりぶつかったと思ったけど、よくこれだけで済んだな。もう死んだと思ったぜ。
ったく、お前がスピード出すから。
な、暗いからライト点けて、とにかく車から降りようぜ。
街灯がないから真っ暗かと思ったけど、月が出てると結構明るいもんだな。
おい車体見ろよ。あーあ、でこぼこだ。黒のボディだから結構目立つな。
なにショック受けてんだよ。自分が悪いんだろ。修理代? 知らねえよ。
でもほんとにこれだけでよく済んだよ。
スマホ係、何撮ってんだよ。こんなとこ映しても仕方ないだろ。それより早くレッカー呼ばなきゃ。
えっ、電波届かない?
なんだよそれ。公衆電話探さなきゃいけないってことか? こんな場所にあんのか?
なっおい。誰かこっち来ないか? ほら。
お前ら何ひそひそ笑ってんだ? 格好? ど田舎過ぎるって? 時代劇の百姓みたいな? ははは、まさか。
あっ、すみませーん。事故起こしちゃって、家近かったら電話貸していただけま――
なんだよ。悲鳴上げて逃げてったぞ。
なあ、聞き間違いかもしれないけど――
今の人、牛鬼がどうのこうの言ってなかったか?
作者shibro
以前別名で某サイトのコンテストに投稿したものです。
800字制限があったので、今以上にめちゃくちゃでわけわからない代物でした。
書き直したからと言ってわけわからないのはそのままですが(;´Д`)>
わかっていただけたら嬉しいです。
実際に牛鬼の話はあるのですが、文献の部分は実際のものとは違います。