どうか神様。わたしの恋を実らせてください。
あの目障りな女より先に彼をわたしのものにしてください。
この神社は恋を成就させてくれると聞きました。
だから真夜中に、親の目を盗んでこんな山深いところまでお参りに来たんです。
だってそうしないといけないんでしょう?
裏サイトでそう読みました。
彼の写真と自分の写真もちゃんと持ってきています。彼を隠し撮りするの結構大変でしたけど。お供えも必要な道具もこのバッグに入ってます。それをどうするのかもちゃんとわかってます。
もちろん覚悟の上でやってきました。あいつには絶対負けたくないから。
彼のことを好きになったのはわたしのほうが先なのに、あいつは違うクラスのくせに休み時間になるたび覗きに来て――その視線に気付いた彼が意識しだすなんて。
わたしの視線には気づきもしなかったのに。
あいつの一番むかつくところは自分をかわいいと思ってるとこ。自信満々で、ほんとにほんとにむかつく。
ああこんなことグチってる場合じゃない。はやくお供えしてお願いしなくちゃ。
お供え、捕まえるの大変だから買ってきたんです。子猫や子犬は高いからうさぎにしました。動物ならなんでもいいんですよね? これでもわたしにとっては痛い出費に違いないんだけど。でも恋愛成就のためだもの。
さあ始めよう。
お社の裏にある木――あった、あった。
その下に――ああごめんね。うさぎちゃん。
お供えのお腹をナイフで裂いて――いやっ、血がいっぱい。ううっ。がまんよ。がまん。
この中に彼の写真と自分の写真を恋の成就を祈りながら埋め込む――うっ、これでいいんだよね。
こんな気持ち悪いことをしたんだから、きっとこの恋実らせてください。
神様、どうかお願いします。
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ねえ、神様っ、どういうことよっ。ぜんっぜん、うまくいかなかったじゃない。
結局あの女に負けちゃったわ。あの二人、今ではみんなが認める恋人同士よ。
噂ではあいつもこの神社に願掛けしたっていうじゃない。
にしても、お願いするのわたしのほうが早かったよね? なんで後から来たあいつの願いが先に叶えられるの? おかしいでしょ。それともなに? 神様も顔がかわいいほうがいいってわけ? そんなことないよね。平等だよね。
ってことはお供え物の違い?
きっとそうよ。だからわたし、あいつが何をお供えしたのか見に来たのっ――
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「きゃああああああ」
少女の悲鳴が森の中に響き渡る。
目の前にある木の根元にはライバルの少女が死んでいた。
自分で切り裂いたのか、開いた血まみれの腹の中には二枚の写真を握りしめた手が突っ込まれてあった。
少女は震えながら後退る。
「じゃ、じゃ、彼と付き合ってるあいつはいったい――いったいなんなのよっ」
作者shibro
ちょこっとグロ注意。
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