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ギラギラと肌を照りつける太陽。青々とした稲穂が田の中で育ち、さわさわとそよ風に揺られていた。
黒いアスファルト舗装がされていないあぜ道を、車がのろのろと動く。
そしてしばらく進むと、遠くに日本特有の貫禄を持つ、立派な屋敷が姿を見せた。
私はお盆ということで、おじいちゃんの家へ来ていたのである。
どこからともなく、美しい風鈴の音がちりーんと鳴っているのが聞こえた。
ガラガラと玄関の引き戸を開けると、おじいちゃんが出迎えてくれた。
「よく来たなぁ、いつもの部屋でのんびりしておくれ。」
そう言っておじいちゃんはもともとしわしわな顔をさらにしわくちゃにさせた。
私はその顔を見ながら、心の底からワクワクしていた。
というのも、この家の周りは育ち盛りの子どもにとっては素晴らしい場所だからだ。
小川のきれいなせせらぎを耳にしながら川で遊び。広い空き地ではみんなで鬼ごっこなどをし、深く涼しい森の中では珍しい虫を見つけることができる。...と言っても、奥に入ることは滅多になかったが。
そんな場所だから、同じく帰省した従兄弟達と自然の中で遊び回り、退屈しない日々を過ごした。
と言った思い出話を、この間久しぶりに会った母に話すと、彼女はきょとんとした顔で「何言ってんのあんた。おじいちゃん家に遊びに行くも何も、そもそもおじいちゃんはとうの昔に死んどるし、おばあちゃんだってお前さんが生まれて間もなく亡くなっているじゃないか。」と言った。
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shake
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これは本当に、私の記憶でしょうか?
作者天狗風
短めに書いてみました。
あなたの記憶は大丈夫?