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中編3
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幻の集落

怖い体験を思い返しているが、なかなかこれっ!といったものを思い出さないので、友人から聞いたお話を一つ。

その友人Aはバイクが大好きだった。複数台所有しており、結婚した今は少し落ち着いたが、バイクで遠出をすることを何より楽しみにしている。高速は使わず、下道で行けるところまで行く。その友人の勧めで、私もバイクの免許を取ったくらいだ。まぁ、私はその後教習所以外で乗ったことはないが笑

友人Aは遠くに行っては、お土産を買ってきてくれる。聞けば、自分が本当に遠くに行った証としても買いたいらしく、友人数名に買って来るのだとか。その友人の1人に私が入っていて、嬉しい限りである。

友人Aはその日もいわゆる峠道というのだろうか?山間部の道を走っていた。山間部の道といっても国道の大きい道路だ。すると、登り坂の途中で前に大型トラックが。追い越そうにも追い越せない。

仕方なくそのトラックの後ろに付いて行くが、登り坂のせいもあってか、あまりのスピードの遅さにイライラ。ふと、横を見ると細い道が…。

この道の先に続きはあるのか…?そう考えたが、道がなければ、戻ればいい。戻ったら戻ったで、もうトラックはいないだろう。どうせ、目的なく走ってるんだ。と思い、細い道に入った。

入ってしばらく走っていると、霧が出ていた。こんな時間に霧?と思いながらもバイクを走らせ続ける。すると、ガンッ!という衝撃があったと思うと、ふわっとAの体が浮く。

そのまま、Aは地面に叩きつけられた。Aは衝撃の割にはたいしたケガもなく、痛いところもなかった。何事か、と見てみると、コンクリート舗装の道路が砂利道へと変わっていた。岩か何かを踏んで、こけてしまったのだろう。

Aは倒れているバイクを起こすと。エンジンをかけようとする。

ギュルルル…。ギュルン…。

エンジンがかからない。故障か?

仲のいいバイク屋に電話しようと、携帯を取り出すと、圏外となっている。大きな道まで戻ろうか?そう思った時だった。

キャハハハ。

子供の遊ぶ声が近くでする。声をした方を見ると、嘘のように霧が晴れている。そして、古い民家が4~5件あった。

これは助かった。と思い、その内の一軒に伺う。

「すいませーん。すいませーん。」

家の扉が開く。中から、人が出てくる。

「すいませんがバイクが故障してしまって、お電話をお借り出来ないですか?」

そう言うと、その人は黙ったまま指を指す。そこには、黒電話。こんな古い電話、まだあるんだ!と驚きながらも、指を指されたので使用してもいいだろう。と思い、

「お借りします。」

と言って、携帯で番号を確認しながら、知り合いのバイク屋へ電話。

「ごめん。バイクが故障してさ。国道◯◯号線の◯◯を過ぎて5キロくらいのところ。ごめんだけど、その場じゃ直らないかもしれないから、トラックで来てくれる?」

そういうと、すぐに了解してくれた。

「ありがとうございました。」

とお礼を言っても、家の人は無視。よそ者は邪魔もの扱いなのかな?そう思い、あまり気にせずに帰ろうとする。

家を出て、大きな道路に出ようと、その方向に向かおうとする。すると、表で遊んでた子供たちが、

「そっちじゃないよ。こっちだよ。」

そう言って、大きな道へ続く道とは別な方向の道を指す。

「おじちゃんはね。こっちに行くんだよ。」

そう言うと子供たちが、

「ううん。おじちゃんはこっちだよ!一緒に遊ぼうよ。」

と、やはり別な方向を指差す。

「ごめんね。おじちゃん、急いでいるから。」

そう言って、バイクを押して、大きな道路に向かう方へ歩く。

後ろの方で「あーあ。」と子供の声。

ふっと、意識が飛んだ。

気付いたら、病院のベッドだったらしい。交通事故で大怪我をして救急車で運ばれたらしく、5日ほど意識不明だったとのことだった。

「あの日、もし、子供の指差す方に行ってたらどうなってたんだろうな。」

こういう話を教えてくれました。

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