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中編3
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醜い争い

うちの愛犬のボンジョリアーノ三世は、なぜか彼女にだけ異様に敵意をむき出しにして吠える。

いや、犬が変な名前で申し訳ない。この名前が邪魔をして肝心の話が入ってこないかもしれないが、そこはうまく頭の中で脳内変換してもらえたらと思う。

つまり、ボンジョリアーノは普段はおとなしくて甘えん坊で良い子なのに、彼女とだけは何故か相性が悪いみたいなんだ。

そんな彼女も毎回ボンジョリアーノに吠えられるのが辛いらしくて、俺たちは自然と外で逢う事が多くなった。

そんな彼女が先月、交通事故で亡くなった。すれ違い様に秋田犬に吠えられ、びっくりした彼女は車道に飛び出してしまったのだ。

突然の事でとても信じられなかったけれど、彼女の遺体を見たら涙が止まらなくなってしまった。二年も付き合った彼女だったから、俺は彼女の両親が見てる前で取り乱して泣いた。

彼女のお母さんが教えてくれた。彼女は生前大の犬嫌いだったそうだ。理由はどんなに大人しい犬でも彼女を見たら気が狂ったように吠えてくるからだ。

なぜ、娘があれほど犬に嫌われるのかわからないとの事だった。

彼女を失った喪失感から今の仕事への情熱も失せてしまった。俺は食べる物も食べずに死んだボンジョリアーノを抱いて一日中布団の中でゴロゴロしていた。

ああ失礼、ボンジョリアーノを殺したのは俺です。絞め殺しました。実はボンジョリアーノは彼女が死んでからというもの性格が一変してしまったんだ。

ただでさえ気持ちが不安定だった俺の耳元で毎日ギャンギャン吠えるもんだからついカッとなってしまったのが正直なところ。気付いたらボンジョリアーノはもう動かなくなっていた。

だっていくらあやしてもダメ。今まで彼女にしか吠えなかったくせに、急に何もない空間に向かって狂ったように吠えまくるもんだから耐えられなかった。

腕の中で冷たくなってしまったボンジョリアーノ三世を埋葬しなくちゃならないのはわかってるんだけど、そんな元気も出ない。今の俺の頭にあるのは死んだ彼女に会いたい、ただそれだけだ。

「このまま俺も死ねたらどんなに楽だろう」

俺は夢の中でしか会えない彼女に早く会いたくて、いずれ訪れるであろう眠気を待ち焦がれながらジーっと天井を見つめ続けた。

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異常な犬の鳴き声を聞いた近所の包丁職人の土手下さんが、異変を感じて警察に通報した。

警察が家の中に踏み込むと二階の寝室からは白目を剥いた犬と、それを抱いて白目を剥いている男性の遺体が発見された。

男性の腐敗状況から鑑識は死後二週間はたっていると発表したが、通報者の土手下さんはそんな筈はないと首を傾げた。

昨晩も家の中から男性の笑い声や犬の鳴き声、それにヒステリックな女性の叫び声を聞いたというのだ。

「特に女性の声がうるさくてね。毎晩、毎晩、おかげでわたしら近所の住民はみんな寝不足ですよ」

警察は事件性もあるとして、土手下さんの証言をもとにその消えた女性を重要参考人として捜査を開始した。

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「ワン!(消えろブス!)」

「うるさいばか犬!死ね!死ね!」

「ワンワン!(うるせーストーカー!)キャンキャンキャン!(てめえに主人は渡さねー)」

「きー!ムカつく犬め!てめえも解体して埋めてやろうか!」

「ワン!ギャン!(おー、やってみろやこの殺犬鬼が!てめえは今まで何匹の犬や猫を殺してきたんだよ!)」

「いちいち数えてねーよアホ犬!だいたいなんだよボンジョリアーノ三世ってw?バカみたいな名前つけられやがって、犬の分際で人間様に意見してんじゃねーよ!」

「ワン!!!(くそビッ◯が!)

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ボンジョリアーノ三世と彼女の戦いはあの世でも続いているのかも知れない。

Concrete
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福山ま様、仰る通りです。動物や小動物に酷いことをする人はみんな氏んでオッケーです…ひ…

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ゴルゴム先生、夢姉、「ワン!」←ありがとうと言っています。

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