これは、恐いというか不思議な話
そして俺が、幽霊とか怪奇現象を信じるようになったきっかけの話だ
俺のじいちゃんは、俺が物心ついた頃には老人ホームに入ってた
俺が生まれる前に脳梗塞で下半身は動かなくなって、まともに話すこともできなくなってた
それでも俺はじいちゃんが大好きだった、遠くに住んでたから年に何回かしか会いに行けなかったけど、俺と姉ちゃんがいくたびに、凄く嬉しそうにニコニコしてた
俺たちは最近の出来事とか、いろいろ話しかけてた
会話はできなかったけど、俺たちの話を聞いて頷いたり、笑ったり凄く幸せそうだった
そんなじいちゃんだから、ホームのスタッフからもすごくよくしてもらってた
たとえ体が動かなくても、老後ああやってみんなから愛されるようになりたいって思うよ
俺が8歳のとき、じいちゃんがそう長くないって聞かされた
実際結構年だったし、それは仕方ないことなんだと、子供ながらにわかってたけど
やっぱり悲しかった
そして、それから何日か過ぎたある夜
俺はじいちゃんの夢を見た
じいちゃんのことたくさん考えてたからかもしれない
夢の中は、とにかく綺麗な場所だった
光に満ちてるというか、そこらじゅうがキラキラしてた
目の前には大きな川?なのかな?
海かもしれない、そんくらい広い場所だった
そこにじいちゃんがいた、凄く気持ち良さそうにその綺麗な川を泳いでた
俺はじいちゃんが泳いでるどころか歩いてるのすら見たことなかったから
ビックリして
俺「じいちゃん!泳げんのー?」
て聞いた
じいちゃん「おー、もう泳げるんだよー、気持ちいいぞー」
て答えた
俺がじいちゃんと初めて交わした、ちゃんとした会話だった
じいちゃんは悠々と泳いでって、そのうち見えなくなった
そこで目が覚めた
外は少し明るくなってきてた
9月だったから、4時くらいだったのかな
俺はうっすら涙を流してた
翌朝、居間にいくと、お袋と姉ちゃんが話してた、俺はさっそく昨夜の夢のことを話た
すると
お袋「あんたもなの!?」
と、凄く驚いた
聞くと、姉ちゃんもお袋も同じ夢を見たという
しかも、じいちゃんに掛けた言葉まで全く同じ
3人で驚きながら話していると
親父が出てきた
親父「いやぁ。明け方びっくりしたよ
4時くらいかなぁ、いきなり雨戸をノックする音が聞こえてさぁ」
俺たちはまたしてもびっくり
ちょうど夢を見てたくらいの時間だからだ
その日の夜、じいちゃんが亡くなったと連絡がきた
俺たちは、じいちゃんが最後に会いに来たんだと悟った
もう体も動く、話もできる
だから先に行って待ってる
そういうメッセージだったんじゃないか
あれが三途の川なんだとしたら、その先にあるあの世はさぞいいところなんだろう
じいちゃんならそこに行っても、回りから愛される人になってるんだろうなぁ
俺も同じ場所にいけるよう、みんなから愛されるじいさんになりたいもんだ
作者名も無きビビり