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長編15
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校舎の真実

俺の通っていた高校での出来事を話そう

登場人物は全員仮名で表記する

かれこれ10年位前になる

俺の高校は少し変わった作りをしていた

校舎を真正面から見ると、4階建て、反対側から見ると5階建てになってる

これは、校舎が坂の途中にあって一階というか地下一階というのかわからないが、そのフロアが見えないからだ

実際このフロアのことを知らない生徒も少なくない

俺自身、2年生になるまで知らなかった

そのフロアは倉庫とか資料室とかで生徒は基本的に立ち入らないからなおさらだ

そんな高校での思い出だ

2年生のときに部活の合宿があった

合宿といっても、学校に泊まり込んで朝から晩まで練習って感じの

昼の間散々しごかれてくたくただったけど

やっぱり夜になるとみんなテンションが上がって

下ネタやら好きな女の子の話やら怪談話なんかで盛り上がった

翔「肝試ししないか?」

仲間の翔が言い出した

俺たちもテンションが上がってたのもあり、二つ返事でその提案に乗った

校舎は戦後割りとすぐたてられたものでそこそこ古い、美術室なんかは昼間でも不気味だったから、肝試しにはもってこいだ

おれは女子部員の何人かにもメールを送って肝試しにさそった

女子は女子で怪談話に花を咲かせてるところだったようで、何人か参加すると返信がきた

男子も部員は5人、女子は3人の8人で肝試しをする

俺たちは二人組を作っていくことにした

全員でまとまっていては怖さも減るし、なにより騒がしくて、すぐに先生にばれてしまうだろう

という理由だが

本当は女の子と二人で肝試しがしたいだけだったのだが

じゃんけんの結果、翔とちなみ、俺と香奈枝、健太と真由美、そして哀れにも男二人になった聡太と耕平に別れた

ルートはまず俺たちがいる3階から4階に向かい、図書室に行き中を一周して2階まで降り理科室と理科準備室を一周して一階へ

一階には職員室があるので先生に絶対に見つからないように保健室へいきさらに奥にある美術室へ行って3階まで戻ってくる

というもの

そこまで決めたとこで

翔「あそこも行かないか?ほら、地下みたいなとこ」

そう提案してきた

一同「いいね!」

みんなノリノリだった

俺「あそこ俺、行ったことないんだよなぁ

確か資料室とか先生の会議室とかだよな、とりあえずフロア一周する感じ?」

翔「実は俺も行ったことないんだけどそれでいいんじゃね?」

耕平「そういや俺も行ったことない」

聞くと男子も女子も一人もそのフロアに行ったことがあるやつはいなかった

下にいく階段は美術室のすぐ近くにある

その存在自体はみんな知ってる

でも、誰も行ったことがない

ノリで肝試ししようなんて好奇心旺盛なやつらがこれだけいて一人もだ

些かの違和感はあったがその時はとくに気にしなかった

なにせ、俺のパートナーになった香奈枝は、けっこうな美人、その香奈枝と二人きりってだけでドキドキしてそれどころじゃなかった

香奈枝は普段、無口であんまり愛想もよくない

そんな彼女の普段見れない表情が見れるかもと、期待してた

ただ、そんな香奈枝がこのイベントに参加したのは意外だった

以前、彼女は自分には霊感がある、みたいなことを言ってたし

こういうのには参加しなさそうだったからだ

そうこうしてるうちに、肝試しがスタートすることになった

前のペアがスタートしてから5分後にスタートするということになり、最初の翔・ちなみペアが出発した

俺たちは2番手だ、待っている間香奈枝に話しかけてみた

俺「なぁ、前に霊感があるみたいなこといってたよな?」

香奈枝「うん」

俺「この学校にはなんかいるのか?」

その会話にみんなも注目した

香奈枝「さぁ、、、」

香奈枝はいつもの調子だ

香奈枝は話しかけるとだいたいこんな感じなのだ

俺「そうか、まぁ、霊感あるお前が参加するんだし、なんもないってことだろ」

香奈枝「そうかもね」

そうこうしてるうちに5分が経った

俺「じゃ、行ってくるわ!」

聡太「香奈枝の体触ったりすんなよ!」

俺「当たり前だろ!」

そしてスタートした

まずは4階を目指す、校舎はもうほとんどの電気が消えてて、最低限の光でなんとか前が見える状態だった

携帯のライトを使おうかとも思ったけど、先生に見つかるとまずいからやめておいた

俺「さすがにこんだけ暗いとこえぇな」

香奈枝「そうだね、普段とはまるで別の場所みたい」

珍しく香奈枝が長めに喋った

大勢だと話せないタイプなのかもしれない

俺「とりあえず図書室か」

図書室はちょうど4階の端にある

4階の廊下を端から端に移動するルートだ

香奈枝「ついたね」

俺「さすがになかは暗いな、ライト使うか」

図書室の中を照らす

図書室っていうのは不気味だ、明るければなんてことないが、暗いと棚と棚の間になにかいるんじゃないかと不安になる

香奈枝を見ると彼女も不安そうな顔をしていた

俺「やっぱり恐い?」

香奈枝「そりゃね、でもここは平気」

その言い方に違和感を覚えた、「ここは」平気とは平気ではない場所があるという意味なのか

そんなことを考えていたら、図書室を一周した

次は2階だ

理科室と理科準備室、ここも不気味だった

特に準備室はわけのわからん薬品は並んでるわ

脅かし役の王道・人体模型、内臓の書かれた人体図と薄気味悪いものの宝庫だった

俺「いやぁ、やっぱ気持ち悪いなぁ」

香奈枝「ほんと、だけどそんな恐いって感じじゃないね」

たしかに恐いってよりは気持ち悪いって感じだ

そして一階へむかう

一階には職員室がある

細心の注意が必要だ

気分はさながら、某蛇が活躍するステルスゲームだ

肝試しとはまた違ったスリルを味わいながら一階を探索する

ふと、香奈枝を見ると

どうもソワソワしている

さっきまではなかったことだ

一階へ降りた辺りから、口数も減った

俺「どうした?具合でも悪いか?」

香奈枝「大丈夫、早く行こう」

そう促され、俺たちは例の地下?に繋がる階段の前までやって来た

階段の下は真っ暗だ、ライトなしには無理だろう

香奈枝はさっき以上にソワソワしている

その時だった

階下から、生暖かい風に体を押されたような感覚がした

その瞬間、体中に鳥肌が立った

俺「やっぱ、ここはやめとくか、香奈枝もなんか調子悪そうだしさ」

香奈枝「大丈夫、行こう、確かめたいこともあるから、戻りたければ戻ってもいいよ?」

そんなこと言われては行かないわけにはいかない

俺「わかった、じゃあ行こう」

携帯のライトで照らしながら階段を下る

その間もあの生暖かい風が体を押す

香奈枝はさっきまでより早足に階段を下りていく

確かめたいこととはなんだろう?

そんな疑問がずっと俺の頭の中を巡ってた

フロアについた

他のフロアよりだいぶ狭い、だいたい半分か3分の1くらいだろうか

まっすぐの廊下にいくつか部屋があり、その先に外へ出る扉がある、扉にはすりガラスがついていて、上に電気がついてる

フロアでついてる電気はそれだけだ

初めてきたところだしこの暗さだ、かなり恐い

俺「どうする?」

香奈枝「と、とりあえず、一番お、奥のドアまで行こう」

香奈枝も相当恐いのか、どもりぎみに答えた

この階にはもちろん誰もいなかった

だから一直線にドアを目指す

妙に長く感じたのを覚えている

扉の前までたどり着いた

俺「よし。じゃあもう帰ろうぜ?」

香奈枝のほうに振り向いた

しかし彼女の姿がない

俺は一瞬びっくりしたが、足元をみると香奈枝が座り込んでいた

俺「おい、どうした!?具合悪いのか?」

驚いて声を掛けたが、香奈枝はおれの言葉には答えず、なにか呟いている

香奈枝「来るんじゃなかった来るんじゃなかった来るんじゃなかった、ここはダメダメダメダメ、おかしいよここなにこれ、誰、どこにいるの」

支離滅裂なことを小声で呟いてた

その時気配を感じた

目の前の扉のほうからだ

俺「っ!!!!!!」

声が出なかった

すりガラスの向こう側そのすぐのところに、人影がある

女だ、俺たちとは違う制服を着た髪の長い少女が立ってこちらを見ている

恐怖で倒れそうになるのを必死に堪え、これは、他の連中が怖がらせようとしてるんだと無理やり考え、扉を思いっきり開けてやろうと思って前に一歩踏み出した瞬間

「ダメ」

声と同時に、俺は左手を捕まれ引き留められた

とても冷たい手だった

声は女の子の声だったが、香奈枝のとは明らかに違った

俺の右側で座り込んでいる香奈枝が左手を掴むのも無理だろう

その時、すりガラスの向こうのヤツが、ドアノブに手を伸ばしたのが見えて、俺は座り込んでいる香奈枝の手を掴んで全速力で上の階に駆け上がった

俺「はぁ、はぁ、はぁ、香奈枝、大丈夫か!?」

香奈枝「はぁ、はぁ、大丈夫」

それから息を整えながらゆっくりと3階のみんなのところへ戻ることにした

その道中

香奈枝「さっきはごめん、取り乱したりして」

俺「いや、あんな状況だろ、当然だ」

香奈枝「そうだけど、私はわかってて行った部分もあるし、巻き込んじゃったから」

俺「え?わかってたってどういう意味だ?」

香奈枝「それはまた今度、落ち着いたらちゃんと話すから、今のことは他のみんなには内緒にしよう?もしなにか言われたら、私に話合わせてね」

俺「わかったけど、今度絶対に聞かせてくれよ?」

香奈枝「約束するよ」

翔「おー!遅かったな、つーか大丈夫だったか?」

俺「なにが?」

健太「実は俺たち、一階で階段の前にいるお前らに追い付いちゃってさ、そんで後ろからこっそり見てたんだよ、したら下の階からさ、下に来たらダメだ!て声がして、お前らそのまま下に降りてったからてっきり先生に怒られてるんだと思って俺たち慌てて引き返して、聡太たちに二人がバレたから戻ろうって話になったんだわ」

ちなみ「あたしと翔くんは、下の階から話し声がするからそのまま戻ったんだよね、見つからなくてよかったわぁ」

香奈枝「そうなんだよ、まさか先生があんなとこにいると思わなかったからびっくり、すごい叱られたけどみんなのことは黙ってあるから大丈夫だよ、ね?」

俺「あ、あぁ、いやー、参ったよなぁ、お前らもこの事は禁句な!」

そして合宿はおわった

それから数日後のこと

香奈枝「こないだの件で話があるから、土曜日空いてる?」

俺はこの数日、ずっと気が気でなかったから香奈枝の誘いに乗った

俺「あれからずっと混乱しっぱなしなんだ、ちゃんと説明してくれ」

香奈枝「私のわかる範囲でね、他の人には聞かれたくないから私の家でいい?」

俺「お、おう」

あんなことのあとなのに、家に行けることを純粋に喜んでる自分がいた

約束の土曜日

香奈枝「なにから話そうかな」

俺「俺には何一つわからんから、全部話してくれ」

香奈枝「私に霊感があるって話信じる?」

俺「あんなことあればな、嫌でも信じるよ」

香奈枝「よかった、実は私、ずっとあそこが気になってたんだ、あの階段の前を通る度違和感というか、胸騒ぎがしてた

そもそもおかしいと思わなかった?

私たち8人、誰もあそこに行ったことがなかった、先生たちに止められてたわけでも、立ち入り禁止の看板とかがあるわけでもなく」

俺「確かになぁ、みんなあそこから下に行けるのは知ってたのに、俺も行こうって思ったことがない」

香奈枝「そう、それでこないだの健太くんの話、私たちが降りようとしたときに声がしたって」

俺「あぁ、でも俺はそんな声聞いてないぞ」

香奈枝「私は聞いた」

俺「は!?」

香奈枝「やっぱり聞こえなかったんだ、そうだよね、聞こえてたら降りるわけないもん

でもなにか感じたんでしょ?そんな感じだったけど」

俺「なんか、生暖かい風がきて、押し返されるような感覚はあった」

香奈枝「それだね」

俺「なにが?」

香奈枝「声だよ」

俺「いや、だから声は聞いてないって」

香奈枝「多分だけど人によって捉え方が違うんじゃないかな?

あれは警告だったんだと思うよ、でも私はそれを無視して降りた、その事については巻き込んで本当にごめん、でも怖くて」

俺「せめて、一言言ってほしかったわ

それで?たしか下に確かめたいことがあるって言ってたよな?」

香奈枝「うん、胸騒ぎの正体を確かめたかったんだけど、、、」

香奈枝は言うのを躊躇った

俺「なんだよ?全部教えてくれるんだろ」

香奈枝「うん、、、あそこは、思ってた以上におかしかった、まるで魔窟だよ

降りてる最中からずっと、すごい人数の声が響いてた」

俺「あのときソワソワしてたのはそれが理由か

俺にはなにも聞こえなかったけどな」

香奈枝「聞こえなかったならそれにこしたことないよ」

俺「なにを言ってたんだ」

香奈枝「帰れとか、どうして、とかいろいろかな、私たちに向けて言ってるのは確かだったよ」

俺「そんなんでよく進めたな」

香奈枝「あなたがいたからね、少しは心強かったよ、でもあのドアの前は、あそこだけは尋常じゃなかった」

俺「まぁ、あれはさすがにな、まさか窓の向こうにあんなのがいるとは思わなかった」

香奈枝「え、、、?」

俺「なんだよ?」

香奈枝「なにか、見たの?」

俺「おい、ドアの向こう側にいたじゃんか」

香奈枝「それは、私は見てない、、、」

俺「嘘だろ」

あの状況で香奈枝だけみてないなんてあるだろうか?

しかも、彼女は霊感があると言ってるのに

香奈枝「私もドアの向こうに誰かいるのは気配だけ感じてただけど、見てはいない

それより私が見ていたのは、あなたの隣にいた女の子だよ」

俺「そんなのいたのか!?」

香奈枝「いたよ、それで突然、ダメって言ってあなたの手を掴んだ、そしたらあなたがすごい勢いで私を引っ張って行ったから、てっきりあなたもあの女の子に気づいてたのかと思った」

俺「俺はダメって言われたとこで初めて気づいたよ、姿も見てないしな」

香奈枝「そうだったんだ、なにがダメだったんだろう?」

俺「多分、俺があのドアを開けようとしたからだ」

香奈枝「そんなことしようとしたの?」

俺「誰かが俺たちを驚かそうとしてるんだと思って」

香奈枝「なるほど、これでなんとなくわかった

多分あそこにいた女の子は私たちを助けようとしたのかもね、開けたらとんでもないことになるって

それまで、帰れとか言ってたのもそうなのかも」

俺「あの外にいたのを中に入れないために?」

香奈枝「多分ね。

さてと、これで私のわかることは全部かな」

俺「結局、詳しくはなにもわからないってことか」

香奈枝「この話はもうやめにしよう?

考えても答えなんか出ないわけだし」

俺「そうだな」

この後しばらくして、この時の縁で俺と香奈枝は付き合うことになった

でもあのときの話は本当にあれきりしなかった

香奈枝からはいくつか今までの霊体験談を教えてもらった、それについてはまた違うところで話すとしよう

それから1年半がすぎ、俺たちも卒業を間近に控えたある日

香奈枝「ねぇ、話さない約束にしてたけど、もう卒業だし、大山先生になにか知らないか聞いてみない?」

俺「あの下の階のことか?」

香奈枝「うん」

大山先生というのは俺が仲良くしてた理科の先生で、なんでも20年以上この学校にいるらしい

俺「確かに、大山先生ならなにか知ってるかもな」

俺たちは放課後、先生のところへ向かった

大山「どうかしましたか?改まって話なんて珍しい」

俺「あの、実は、、、」

俺たちはあの夜のことを細かく説明した

先生は最後まで黙って聞いていて、説明が終わると

大山「はぁ、ダメじゃないですか。

夜中にあんなとこ行ったりしたら」

俺「すみません」

大山「でも、その出来事の後、なにもなかったんですよね?

それならよかった」

香奈枝「どういうことですか?」

大山「うーん、、、二人はもう卒業だし、他の誰にも言わないって約束するなら、その原因かもしれないことを教えてあげます」

俺&香奈枝「約束します」

大山「じゃあ、教えてあげますね

二人はこの学校が戦後割りとすぐにたてられたものだっていうのは知ってますよね?

もともとは小高い丘だったのを市が買い取って建てたそうです

その建設中にね、あるものが大量に出土したんですよ」

俺「あるもの?」

大山「人の、骨がね」

俺「冗談だろ?」

大山「これがホントでね。

どうやらこの丘、戦時中に空襲で亡くなった人たちをまとめて焼いた場所らしいんだよ

戦時中だから、斎場なんかもちろん機能してない

でも死体を放っておくわけにもいかない

だから、ここに集めてきて、まとめて焼却ってことみたいだね

そしてその骨が一番多く出てきたのが、例の君たちの行った階のあたりだよ

そんなのが出てきたけど、もう建設に取りかかってたから、そのまま学校は完成したんだ」

香奈枝「あのときあんなに大勢の声が聞こえたのはそのせいなんだ、、、」

大山「君たち、あの階の部屋には入ったかい?」

俺「いや、そんな余裕なくて、入ってないっていうか、見てもいないよ」

大山「見なくてよかったかもね。

あそこ、生徒たちには、資料室とか、先生の会議室があるって言ってあるけど、実はなにもないんだよ」

俺「え!?」

大山「変に立ち入り禁止とかにしたら、君らみたいのが、逆に気になって入るだろう?

だから先生たちが使ってるってことにすれば生徒は寄り付かないかなって思って、そう決めたんだ」

香奈枝「どうしてそうしてまで?」

大山「最初は、普通に使ってたらしいんだけどね

そのうち、声を聞いたーとか、病気になった、とか、しまいには大ケガした人まで出て、これはただ事じゃないってことになってね

専門家にお払いを頼んで、使わなくなったんだよ

あそこの部屋の中にはね、すごい数の御札が張ってあるんだ」

俺「確かに、それは見なくてよかったかもな

てことは、俺が見たあの女学生も、戦争で死んだ子なのか、なんか可哀想だな、、、」

香奈枝「あれは、違うと思う」

俺「今の話ならそうなんじゃないのか」

大山「すごいね、本当に霊感ってのはあるもんだ!」

俺「どういうことですか?」

大山「その外にいた子、制服を着てたって言ってたよね?どんなの?」

俺「多分、セーラー服だと思う」

うちの学校の制服はブレザーだ、だからうちの学校の生徒ではないと思ったんだが

大山「それはうちの制服だよ

君たちが入学する何年か前に流行りのデザインに一新してね、それまでは女子はセーラー服だったんだ」

俺「てことは、あれは昔のこの学校の生徒!?」

大山「そう」

香奈枝「なにかあったんですか?ここで」

大山「これは話す気がなかったけど、仕方ないね、、、

僕がここの先生になったばかりの頃にね

1年生でひどいいじめを受けてる子がいたんだよ

僕は2年生の副担任だったからその子のことは話に聞く程度だったけど、かなり悲惨だったらしい

先生たちもなんとかしようと一生懸命だったけど、干渉すればするぼどエスカレートしていった

それでついに取り返しのつかないことをしてしまったんだ

その日も、いじめグループはいつものように女の子をいじめてた、でも女の子も我慢の限界で抵抗してしまったんだ

それに逆上したグループは、2階の廊下の窓から彼女を落としたんだ

グループの子達は、2階からなら死なないって思ってたみたいなんだけど、そこはね

学校の裏側なんだよ

つまり2階だと思ってた場所は、実は3階だったんだ、ビルの3階から落ちたら運がよくなきゃ助からない

彼女は頭を打って亡くなった」

俺「バカかよ!?例え2階でも打ち所悪けりゃ死んじまうよ!」

大山「そうだよね、でもいじめグループは本気で2階なら死なないって思ってたんだ

その子たちは、最初、自殺だって言い張ってた

でもその子達の様子でみんな気づいてたよ、殺してしまったんだって

でも、これが明るみに出れば学校はただじゃすまない、校長はいじめてたグループの言い分を聞き入れた」

香奈枝「ひどい、、、」

大山「僕も当時、抗議したよ

でもダメだった、他の生徒のためにも

こうするしかないって言われて」

俺「相当無念だったろうな、その子」

大山「事件の後、ご両親が来て、こう言ってたよ

あの子が自殺するはずない!

いじめになんか絶対負けないっていっも言ってたんだから!

て、お母さんが泣きながら言ってたよ

僕は教師をやめようかと思ったほどさ」

俺「これからも、あの子はあそこをさまよい続けるのかな、、、」

香奈枝「そうかもね、校舎には入れないようだし、学校の裏をさまよい続けるのかも」

大山「さ、これで僕の知ってることは全部だよ」

俺「ありがとうございました」

それから数日後、卒業式の日

おれたちはあの階段の前まで来ていた

そして、二人静かに手を合わせ、彼らに安らかな眠りが訪れることを祈り、母校との別れとした

Concrete
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