ここは地獄の底。
あるひとつの魂が、地獄の世界に生まれ落ちてきた。
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魂はひとのかたちをしていて、鬼たちによって手枷、足枷がかけられ、一切の自由を奪われた。
そして、来る日も来るも、鬼たちによって地獄の業火に焼かれ続けた。
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あるときは灼熱地獄。
真っ赤に灼熱した焼き小手を、全身に押し付けられた。
あまりの熱さに身体が反射的に逃げようものなら、鬼たちは怒りの形相で、なおさら強く焼き小手を押し付けてきた。
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あるときは釜茹地獄。
煮えたぎる釜の湯を全身に浴びせかけられた。
醜く膨れ上がり、真っ赤に焼け爛れた皮膚は、ズルズルと剥がれ落ちた。
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あるときは水攻め地獄。
冷たい水桶に、力ずくで何度も沈められた。
失神しようものなら、巨大な足で踏みつけられ、
あまりの苦しみで意識を取り戻すと、再び桶に沈められた。
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この苦行からは逃れることはできない。
鬼たちは、身体の形こそひとと同じだが、
魂が宿る肉体と比べると、身の丈は2倍以上。
強大な力を持つ鬼たちが、
地獄の全てを支配しているからだ。
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魂は、地獄の苦しみを味わうたびに、必死に思いを巡らせた。
一体、自分はどれほどの悪行を現世で行ってきたのか、と…。
しかし、いくら考えても、思い出せることはなかった。
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あるとき、鬼たちの姿はなく、
冷たい石の地面に横たわる肉体だけが存在していた。
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五感はぼやけ、苦しみはなく、ただひたすら、自分の心臓の鼓動だけを感じていた。
その鼓動が少しずつ弱く、ゆっくりになっていくことに気づいた。
永遠に続くと思われた地獄での苦行が、ようやく終わりを告げようとしていた。
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「次のニュースです。5歳の女児を虐待して死なせた容疑で、両親が逮捕されました。虐待は日常的に行われていた可能性が高く、司法解剖の結果、タバコの火を押し付けたり、熱湯を浴びせたり、風呂で溺れさせたりするなど、暴行を加えられた痕跡が全身に多数残っているということです」
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作者とっつ
時事ネタです。
それこそが地獄でなくて、一体なにが地獄と言えるのでしょうかね…。