「私じゃない!」ずっと叫び続けている。
俺は大手銀行に勤めていた。
妻と子供(小学一年生の女の子)が一人。
銀行での仕事はストレスもあるが、充実して幸せな毎日を過ごしていた。
幸せは失ってから気づくものだ。
その時はまだ、その当たり前の幸せに、気づいていなかった。
満員電車に揺られ通勤する日々。
ある朝の電車の中。
今日も詰め込まれ勤務先に運ばれる。
変わらない景色を車窓から眺める。
いつもと同じ。
そのはずだった…。
不意に目の前にいた女性が叫ぶ。
「やめて下さい!」
「この人痴漢です!!」
(は?)
俺の右手を掴み離さない。
「ちょっ、何ですか?」
訳が分からない。
周囲の視線が集まる。
汚物でも見るような目でみる女子高生。
呆れたように溜息をつく爺さん。
回りの男達に囲まれ、駅に着くと引きずり降ろされた。
「私じゃない!痴漢なんてしてない!!何かの間違いだ!」
「この人です、間違い有りません。スカートの中に手を入れて来たんです!」涙目で訴える被害女性。
女子大生だろうか、露出の多い服に短いスカート。確かに痴漢に会いそうな姿だが、断じて俺はしていない。
弁明を続けるも、駅員と共に駅事務所に連れられていかれた。
俺は無実を訴えたが、駆け付けた警察官は一切耳を傾けず。
話にならないので帰ろうとしたら、現行犯逮捕されてしまった。
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数日後、被害女性の代理人を名乗る男から和解を持ちかけれた。
「300万円支払えば被害を取り下げます。」
払えない金額ではない。
自分の弁護士からも和解した方が良いと言われた。
初犯だから実刑判決は無いだろうが、有罪となれば社会的信用を失う事になると。
さらに数日後、示談金を200万円にしても良いと女の代理人が言ってきた。
間違いない…あの女は金目当てで偽証したんだ。
俺はやってないんだ、臆する事はない。
裁判で争うことにした。
やってもいない罪を認めて和解など出来るものか。
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だが…結果的に裁判には敗れ、罰金刑を言い渡された。
勤めていた銀行は懲戒解雇。
妻とは離婚することになった。
「あなたの事を信じて無いわけじゃないのよ…。でも子供の事を考えたら…あの子…学校でイジメにあっているの。私も周りの視線が辛い。」
そう言われては判を押す他無かった。
全て失った…。
許せない…あの女への復讐を誓った。
略式起訴だったので、通知書から女の名前はすぐに分かった。
数ヶ月後、住所を突き止め、その家の前に車を止め待ち伏せた。
あの時と違い地味な格好だが、間違いない…あの女だ。
女が出てきたところで車のトランクに押し込み、人気のない山中に連れ去った。
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トランクから女を降ろした。
ナイフを突き付けながら問いかける。
「俺の事を覚えているか?」
「し、知りません!」
「お前が痴漢呼ばわりした男だよ!」
「私じゃない!人違いです!」
衝動的に顔を殴り付け、服を引き裂いた。
泣き叫ぶ女をなぶり、犯し、殺した。
因果応報…。
この女は俺の人生を奪ったんだ。
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数日後、女の遺体が発見されニュースになっていた。
被害者の名前がテレビに映しだされる。
その時、違和感を感じた。
何だ…
名前が…違う?
名字は一緒だが、名前が一字違う。
被害者の姉だという女がインタビューに答える「妹は真面目で誰からも好かれるコだったんです…。」
姉の姿が一部映った…派手な服に短いスカート…。
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あれから毎日、夜になると俺の横で女の霊が叫び続けるんだ…
「私じゃない!」
作者悠々人
残虐系です。
2つの冤罪、意味は解説不要ですね(^-^;