【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編5
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Child's Play

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「いらっしゃいませー!お一人様ですか?」

店員さんが明るく元気な声で言った。

席に案内されると、店員さんの顔が仕事用から素の表情へと変わった。

「久しぶりだね、何しに来たの」

腕を組みわざとらしく不機嫌な態度で言った。用件を伝え30分程経ったところで店員さんが私服でやってきた。店を出ようと無言でジェスチャーをすると、せかせかと店から出て行ってしまった。慌てて後をついて行った。

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次に入った店はとても落ち着かない店だった。まず、店内のライトが煩い。青や赤の自己主張が強い。もちろん店内のBGMも煩かった。どうしてこの店にしたのか問うと、今はこういう気分なのだと気だるげに言った。

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music:1

光秀は2年前小料理屋でアルバイトをしていた。おかみさんに気に入られており、孫の様に可愛がってもらったのだという。

店の客層はサラリーマンやとび職の人が多く、ときどき怖い人も来る。

おかみさんは客に凄まれても動じない人で、店で揉め事がはじまりそうになった時はおかみさんの”友達”を呼んで対処してもらっていた。

あるとき、常連客の団体と一緒に新しい客が入ってきた。団体客とは少し離れた席に座り背中を丸めた。

メニューを渡しお勧めを何品か伝えた。

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music:2

客はありがとうと言うとじっと顔をみてきた。なにか言いたげに口を動かすが、何も言わずに俯いた。光秀は笑顔でおしぼりをひらいて渡すとまた、ありがとうと言いじっとみられた。変な間があった後その場を離れようとしたところで声をかけられた。

「お兄さん、この店は何時に閉まるんですか」

「11時位..ですかね」

客はそうですかというとまた俯いて黙った。この時、この客に対し厭な感じがしたのだという。

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残った従業員で店の掃除をし、片付けを終えると店を閉めた。

仲間やおかみさんと別れると自宅まで歩いて帰った。

いつもは電車で帰宅するのにこの日は歩いて帰った。賄いを食べ過ぎたからカロリーを消費しようと歩いたのだという。

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music:2

店から少し離れた所で電柱から人影がぬっと現れた。気が付いて居ない振りをしてその前を素通りした。

「おい!」

怒鳴って言い放った様に聞こえた。

振り向くと今日はじめてきた、やたらとじっと見てきた厭な客がそこに居た。自分よりも一回り身長の低い男。スーツは皺だらけで、サイズが全く合っていなかったのだという。

「あ、あ、あの、、、今日はありがとうございました」

客は猫背を折りたたむようにお辞儀した。お辞儀をすると、ぬっと近づいてきた。大股で一歩近づいてきた。それに対して光秀は後ろに後ずさる。

「いえいえ、あはは...それでは、さよなら」

言い終わると足早に歩いた。後ろの方で客が何か叫んでいたが無視して歩いた。

万が一を考え、途中でタクシーに乗り遠回りをして帰ったのだという。

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次の日も、また次の日もあの猫背の客はきた。そのうち、土産だと言って小包を渡してくるようになった。仕事だと思って笑顔でそれを受け取っていたのだという。

光秀が御礼を言うと、客はいつも嬉しそうに口を開けて笑った。客の口からは溝の臭いがした。

月日が経つと、今度は土産を渡すとその場で開けるよう言われるようになった。はじめは菓子やキーホールダーだったのが途中からおかしな物を貰うようになったのだという。

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客が店に通い続けて数か月経った日、変な物を貰った。

「包装紙を開けて驚いたよ、渡す相手を間違えてないか?ってね」

紙の中には子供用の絵本と積み木が入っていた。その積み木や本はどこかから拾ってきた様な、店で買ったとは思えない品だった。

「次の日が酷かった、すぐにおかみさんに話した」

客はいつもより大きな包み紙を持ってきた。そして、目の前で開けるよう言った。

包紙の中にまた包紙があり、店のシールの貼られた箱が出てきた。

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music:2

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中身は乳幼児の服と水色のおしゃぶりが入っていた。次に客の言葉に戦慄した。

「かわいいでしょう、すごく悩んで買ってきました。このおしゃぶり、今目の前で使って見せてください」

身長180cm以上の成人男性がおしゃぶりを使っている様がイメージに浮かび、気が遠くなりそうになったのだという。

「あはは、できませんよー」

「やって下さい...お願いします...頑張って買ったんです、頑張ったです、頑張った、頑張ったです...」

「できません、すみません」

shake

「なんでだよ!」

おどおどしていた客の表情が狂気のものに変わった。感情の無いプラスチックの様な目だったのだという。

「みっちゃん!おかみさんが呼んでるよ!」

従業員の一人から声がかかりその場を離れる事ができた。この時、はじめて土産を受け取らなかった。

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厨房に行くと声をかけた従業員にこれまでの経緯を話した。はじめて来た日から続く客のおかしな行動を。おかみさんにも話し、その客が来たら厨房で仕事をするように言われた。

この”おしゃぶり事件”が起きた後もあの客は来続けた。来る度に光秀はどこにいるのか聞いた。

あまりにもしつこいのでおかみさんは光秀は辞めたと、客に伝えるとそこから店に来る事はなくなった。

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花火大会やお祭り等で店が賑わっていたとある日の夜

おかみさんに買い物を頼まれ買い出しに店の外へ出ると、外は土砂降りの雨が降っていた。

傘を持っておらず店の屋根の下で雨が弱まるのを待っていた。目の前を通っていく人々も傘を持っておらず、びしょ濡れになっていた。

shake

「傘、どうぞ」

どこからか声がした。辺りを見回すと、自分から少し離れた場所に居た。

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music:2

あの猫背の客だった。

受け取れと言わんばかりに差し出された手に握られた傘は、ピンク色に何かのキャラクターの絵がかかれた子供用の傘だった。この時自分の顔が引き攣っていくのが分かったのだという。

傘を受け取ると、客はそそくさと立ち去った。

傘を開いてみると、中から女の子のアニメキャラクターのカードが地面に落ちた。カードを拾うと、一枚だけ裏に文字が書いてあった。

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music:3

”み っ ち ゃ ん”

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「気持ち悪さと怒りでカードを全て破って店のガスコンロで燃やした。傘はおかみさんの許可をもらって店のゴミ捨て場に捨てた」

傘の件もあり、光秀は小料理屋のアルバイトを辞めた。

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新しいアルバイトの仕事が終わり、帰路につく頃には既に12時をまわっていた。

駅から歩く気になれず、タクシーを使って帰った。

車内でうたた寝をしているとドライバーさんに着いたと声をかけられた。

清算を終えて車から降りたあと、自分がマンションの中に入るまでタクシーは停まっていた。

マンションの中から手を振ると、ドライバーさんも手を振り返し車を出した。

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自分のポストからチラシが一枚飛びしていていたので、鍵を開けてポストを開けた。

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sound:39

ポストの中には水色のおしゃぶりが入っていた。

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