僕の投稿は創作が多いんだけど、
幼少期の頃の体験をふと思い出したので、
書こうと思う。
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それは、ちょうど今頃の時期。
夏真っ盛りのシーズンだった。
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お盆ということで、親戚一同が本家に集まったときのことだ。
その中に小学生のやんちゃ盛りが5人ほどいて、
暇と体力を持て余していたので、
数人の大人と一緒に、近くの川に遊びに出掛けた。
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水をかけあったり、
魚釣りの真似事をしたり、
平らな石を探して水切りをしたり、
みんな思い思いに川遊びを楽しんでいた。
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そんな中、僕はふと川底に気になるものを見つけ、
視線を奪われた。
そして、じわじわと恐怖に包まれていった。
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僕が川底で目にしたもの、それは…
・・
・
人間の右腕のように見えたのだ。
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川底に人間の右腕なんてあるわけがない。
が、当時の僕には限りなく本物に見えた。
だが、確証はない。
本物というには少々の違和感もあったからだ。
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ただの作り物?
石がたまたま折り重なって偶然そんな形になった?
恐怖を払拭するため、いろいろな可能性を巡らせた。
だが、どれも説得力に欠けた。
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恐怖を拭い去るためには「本物ではない」と実証するしかない。
そのために最も簡単で確実な手段をひとつ、
小学生の僕は思い付いた。
棒でつついてみることだ。
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つついてみて、人間の肌が持つ弾力とは違う固さであれば、
本物ではないという証明になる。
早速、僕は近くで拾ってきた小枝を手にした。
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いざ、つつこうとしたその時、
全く逆の発想が頭をよぎった。
「でも…でも…」
・
・
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「でももし、人間の肌のような柔らかさだったら?」
つついてしまったあとに、
それが本物の人間の右腕だとわかった場合のことを考えてみた。
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「それはつまり、僕が死体を棒でつついたことになるわけで…」
死体をつつく、という行為…。
その時の僕は、こう考えた。
「それは物凄く罰当たりなこと」であり、
「死体の当人に恨まれ、呪われるんではないか」と。
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そう考えた瞬間、
あまりの恐怖で身体が硬直した。
さっきまで聞こえていたはずの
川のせせらぎや蝉時雨が
一瞬にして遠退き、
時間すら止まったような感覚が僕を襲った。
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それは一瞬の出来事だったのかもしれないし、
数分もの長い間だったのかもしれない。
とにかく「もう帰るぞ~」と遠くで叫ぶ大人たちの声で我に返るまで、
僕はその場に立ち尽くしていた。
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本家に戻ったあと、
見たもの、感じたことを大人たちに言うこともできた。
だけど、そうしなかった。
いや、できなかったのだ。
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もしあれが本物だったら、
死体を自分の目で見てしまったことになるわけで、
それまで一度も死体を見たことがなかった小学生の僕は
「死体を見ること自体も罰当たりなことだから、
その幽霊からどんな仕返しをされるかわからない」と、
根拠のない恐怖に怯えたからだ。
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僕の恐怖心はずっとくすぶったままだったが、
賑やかな雰囲気に包まれながら
大好物のスイカやかき氷、豪華なご馳走をたらふく食べ、
幸せな気分に浸るうちにそのまま寝てしまい、
他の子どもたちと一緒に、
隣の部屋で川の字になって寝かされた。
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その晩、僕は夢を見た。
それが夢だと気づかぬまま、
あの川辺に立っていた。
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足下は、膝まで川に浸かっている。
シュルシュルと魚のような影が近づいてきたかと思うと、
次の瞬間、僕の足首に食らいついた。
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「ひっ!!」と悲鳴を上げ、それに目をやる。
魚ではない。
・・・
あの右腕だった。
・・・
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右腕は、猛烈な力で僕を川の中に引きずり込もうとする。
右腕がひとりでに動いていること、このまま川に引き込まれて溺れ死ぬんじゃないかという、二重の恐怖が僕を襲った。
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暴れれば暴れるほど、口と鼻から息が漏れ、ますます息苦しくなる。
水面は遥か遠くに見え、どんどん遠ざかっていく。
絶体絶命と思った次の瞬間、ふと目が覚め、それが夢だとわかった。
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恐怖はいまだ収まらない僕だったが、
続けざまに僕を襲ったのは、下着と布団から感じた違和感だった。
・・・
「えっ?ヤベ!!やっちゃった…」
・・・
オネショだった。
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大失態だった。
オネショでベチョ濡れの僕を取り囲む親戚一同。
その中には、親戚といえどもついつい気になる可愛い女の子や、
自分よりも年下のいとこもいるわけで…。
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そう…。
幼少期、あれほどの恐怖体験をしたにもかかわらず、
この歳になるまで忘れてしまっていたのは、
このオネショ事件のためだった。
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あの恐怖の出来事は、
当時の僕にとってはよりショッキングな
オネショ事件という大津波に
全て押し流されてしまったのである。
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そして僕は、
この年のお盆に起きた出来事を全て引っくるめて、
心の奥底に深く深くしまいこんでしまったのである。
今でいう、黒歴史というやつだ。
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そんな黒歴史の封印が解かれたのは、
つい先日だった。
地元の神社祭をきっかけにして、
約三十数年ぶりに親戚一同が本家に集合したときのことだ。
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二日目の朝、息子がオネショをやらかしてしまったのだ。
その時に母が放った
「そういやアンタが子どもの頃にそんなこともあったね。血は争えないもんだね」
というヒトコトが、
オネショ事件の封印を解くとともに、
忘れかけていた恐怖体験の思い出を甦らせたのである。
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「まさか」と思い、息子に尋ねた。
「昨日の夜、怖い夢でも見ちゃった?」
「うん。見ちゃった。
本当は夜中にオシッコに行きたかったのに、怖い夢見ちゃって、布団から出るのが怖かったから…」
「どんな夢?」
「不気味な手に、川の中に引きずり込まれる夢」
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息子が言った「不気味な手」というものに心当たりがあった僕は、さらに聞いた。
「不気味って、どんな風に?」
「指が6本もあったの」
最大限の衝撃と恐怖が僕を襲った。
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そもそもあの当時、限りなく人間の右腕に見えるのに、
違和感をおぼえ「作り物じゃないか」と思ったのには、理由があった。
それは、その右腕が6本指だったからだ。
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恐怖体験の思い出は、自分ですら忘れていたことであり、
もちろん息子に話したことなどあろうはずがない。
偶然?
いや、6本指の右腕に川に引きずり込まれる夢を
時を隔てて親子で見るなど、
いくら偶然でも不自然すぎる。
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僕は、嫌な予感を感じずにはいられなかった。
そして、その予感は的中する。
話はこれで終わらないのだ。
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親戚一同が帰る間際、せっかくだからと集合写真を撮った。
先日、その写真が出来上がったので、
店で受け取り確認したところ、
恐怖がまたしても僕を襲った。
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ブレと言われればそれまでなのだが…。
僕の右手をよく見ると、指が6本あったのだ。
よく見なければ見過ごしてしまいそうな異変だが、
恐怖の出来事が甦ってナイーブになっている僕にとっては重大な事だった。
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僕は、意を決して母親に聞くことにした。
電話で突拍子のないことを聞いてくる僕に対して、訝しむ様子の母親だったが、それでも丁寧に受け答えてくれた。
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「昔、あの川で溺れた人いる?」
「あぁ、前に言ったことなかったっけ?事故のこと…」
「え、やっぱりあったの?」
「ずいぶん昔、男の子の兄弟が川に流されてね。
二人とも亡くなったよ」
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「どんな事故だったかわかる?」
「その頃は私も子どもだったけど、痛ましい事故だったし、奇妙なこともあったから、当時は随分話題になったからね。少しは覚えてるよ」
「詳しく聞かせて」
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「たしか、川遊びの最中に弟が足を滑らせて、近くにいた兄の足にしがみついたんだけど、そのせいで兄も足を滑らせてしまってね、一緒に流されてしまったらしいの。
すぐに探したけど見つからなくて、結局次の日に5キロ下流の堰で、二人とも死体で見つかったよ。
それが、見つかったときにちょっと不思議なことがあってね…」
「不思議なことって?」
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「二人は、同じ場所で見つかったというより、同時に見つかったのよ。
不思議なんだけど、弟はとっくに死んでいたハズなのに、その右手は兄の足を掴んだままだったらしいの」
「なにかの偶然というわけでもないの?」
「偶然とは考えにくかったみたい。
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なにせ、かなり強く掴んだまま硬直してしまっていたらしくて、
引き剥がすのにも相当苦労したんだとか。
大人3人がかりでようやく引き離したらしいよ。
不思議というか不気味なこともあるもんだね」
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「本当に不気味だね。
弟はよほど死ぬことが怖かったのかな?
それとも死後の世界に一人で行くのが嫌で、
兄弟を道連れにしたかったのかもな…」
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「あっそれと…溺れた弟にはちょっと奇形があってね…
『多指症』って言うんだっけ?
今では手術で治るものらしいけど…右手だけ指が6本あったらしいの…」
・・
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その言葉を聞いたとき、全ての出来事が一本に繋がった気がした。
・・・
・・
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僕は、一連の出来事をまだ誰にも打ち明けてはいない。
そう、まさに今打ち込んでいる最中の、この投稿以外には…。
そしてこれからも打ち明けるつもりはない。
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真実が、僕の想像通りだったとしても、
それを受け止める勇気が僕にはないから…。
ただの三流ホラー小説でも読んだつもりでいようと思っている。
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今年もいよいよ夏本番が来た。
我が家の息子は今日から夏休みだ。
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家族を連れてレジャーに出掛ける計画を立てたところだったが、今回の件で予定を少し変更しようと思っている。
自然の水がある海や川に近づくのはよそうと思う。
特にお盆の時期はね。
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なぜなら、次にあの6本指の右腕に出会ってしまったら、
今度こそは夢の中ではなく、本当に動き出して、
僕や家族を暗くて冷たい水底に引きずり込んでしまいそうな気がするから…。
皆さんもどうか、くれぐれも水の事故にはご注意を…。
作者とっつ
信じるか信じないかはあなた次第♪