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中編3
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ファミレス

私はあまりファミレスには行かない。

1番の理由は知ってる人に会いたくないからだ。

それでも、行きつけの食堂やラーメン屋などに飽きてくると、時々ファミレスメニューが食べたくなるもので、そんな時には私の住んでるところから、車で30分くらいのところに行く。

今日がその日だった。

私の地区も田舎だが、郊外にあるそのファミレスに入ると、混み具合は7割というところだろうか。

夏休み期間ということもあり、友達とかき氷を食べている小学生もいた。

その近くに、1人でタブレット端末を見ているおじさんがいた。

見たことある…。

そのおじさんはコンビニを経営していた。コンビニ経営と言っても、ほとんど働きもせず、ギャンブル三昧でついにはコンビニチェーン店の資格を剥奪されたらしい。

らしいと書いたのは、そのコンビニがまだ経営していた時には私はまだ中学生だったからだ。なので、おじさんの話は周りから聞いた話だ。

そのおじさんはたまにしかそのコンビニで見なかったが、中学生相手に、時に理不尽なことで怒鳴ったり、時に意味が分からないことを言ったりしていたので、よく覚えていた。

私もその席の近くとなった。なぜなら、おじさんがいる席は少人数用のテーブルで、私も1人で来店したからだ。

私が注文を終えると、聞き耳を立てた。いや、聞き耳を立てなくても嫌でも耳に入ってきた。

画面は見えなかったが、おじさんのタブレット端末から「キャー」とか「ギャー」とかいう声が漏れていた。普通の音量でタブレット端末を見ていて、悲鳴があがるその動画をニタニタして見ていたのだ。

近くに座っていた小学生も恐がっている。

私は立ち上がり、おじさんに近付くと「失礼ですが、音を出しながら、公共の場所で見られるのは止めて頂けますか?お家で楽しむか、せめてイヤホンをご利用ください!」とちょっと強い口調で言った。

すると、おじさんは動画を止め、ゆっくりとこっちを見たと思うと、「家ではもう悲鳴が聞けない。だから、動画を見るしかない。でも、家にはネットがない。本当は動画ではなくて、ここにいる人の本当の悲鳴が聞きたいのだけど。」と言った。

さすがに私も絶句してしまい、そのおじさんのテーブルの上にあるナイフとフォークに目をやった。

相手がこの後どう出てくるか分からない。いざとなったら、これで………。

そう思った時に、おじさんが「なんで、俺の楽しみを邪魔するんだよ!」と怒鳴って、立ち上がろうとした。

私はとっさにナイフを取ろうとしたが、それよりも早く、横を何かが通って、おじさんは椅子ごと床に転がった。

警察官だった。

店員さんが、動画を見るおじさんを見て、さすがにヤバいと呼んだみたいだった。

私はことなきを得た。

あのおじさんは元からおかしかったが、更におかしくなっていた。ギャンブル好きな転落人生がそうさせたのか、薬か何かやっているのか…。

はっきり言って、ここ数年で1番の恐怖だった。

でも、家ではもう悲鳴が聞けないとはどういうことだったのだろう?

ネットが止められたということ?

それとも、家族全員………?

Concrete
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