人形の森 X-8
もう殺す…すぐ殺す!
湧き上がる殺気は魔人ネケンの姿を変貌させるほどだった。
木目状の肌が蠢きバキバキと音を立てる。
レイモンドは魔人ネケンの変貌が完了するのを待っているわけもなく、すかさず攻撃するが躱されてしまう。
アイボリーはバーキン博士をカバーしながら
レイモンドの近くまで走る。
さっきまでの短期的な戦いの最中、魔人ネケンは確実に成長していた。
レイモンドは軽やかにステップを踏みながら断続的に攻撃を繰り返す。
アイボリーは魔人ネケンがどんな魔人で、どこに弱点があるのか観察する。
木目状の肌、異常な再生能力、長く硬い爪
いや、当てはまらない…この特徴を持つ怪物は確かに存在するが、それらは決して交わることのない種類だ。
レイモンドは重い一撃を魔人ネケンの腹に命中させる。レイモンドは自分の拳が魔人ネケンの腹に命中した時、違和感を感じる。
「この感じ…外骨格マーマンに似ている?」
だが、魔人ネケンがマーマンだとすると、あの姿はなんだ?何故、サハギンを連れていない?
戦闘は激しくなっていくと、魔人ネケンの背後数百メートル離れた位置に拓けた場所が見える。
その頃…アーロンとアルは巨木が横たわる拓けた場所で焚き火を焚く準備をしていると…
「私の側で火を起こすのは止めてくれないか?」
その謎の声に驚いたアーロンとアルは銃を構え
アーロンが辺りを見渡し叫ぶ
「誰だ!姿を見せろ!」
すると、背後の巨木が動き出しアーロンとアルは目の前に現れた巨大なバジリスクに呆気を取られていると
「私は、この森に住むバジリスク。そなた達はハンターだろう?」
バジリスクは煌びやかな瞳を輝かせ、苔が生い茂る美しい体に陽の光が射す。
アーロンは気を取り直し銃を再び構える
「この森が猛毒に侵されたのは、お前が原因だな?」
バジリスクは緩やかに首を横に振る
「私が原因ではない。私は遥か昔から此処に住んでいた。39年前に複数の黒衣を着た者達が、この森に訪れた時から瘴気が森を侵食し始めた。」
アーロンはバジリスクの言葉に耳を傾ける
「詳しく話を聞こう」
バジリスクは瞼を閉じ語り始めた
黒衣の者達が現れてから数日…
この森に頻繁にグール、毒性の強いマンドラゴラが現れた
だが、それは始まりに過ぎなかった
魔人ネケンと名乗る怪物が私の卵を狙い襲ってきた。3つあったが1つは魔人ネケンの攻撃の反動で落としてしまった。割れたかは確認出来なかった。
それから何年間も、この森で逃げ惑い隠れながら
卵を温め続けた。
そうして生き延び君達ハンターに出会えた
アーロンは銃をホルダーに入れ腕を組み
「では、これよりバジリスクの保護を目的とした任務に変更する。アル、照明弾を撃て」
アルは鞄から照明弾を取り出し上空に向け撃った
眩しい緑色の発見と保護した、という合図がレイモンド達に送られる。
その頃、レイモンド達は変身を完了した魔人ネケンを相手に苦戦していた。
ふと、アイボリーが高く打ち上がった照明弾を確認し、レイモンドに伝える。
レイモンドは拳をグッと握り魔人ネケンの腹を捉え殴り飛ばす、その距離は数百メートルに及び
あまりの衝撃に拓けた場所まで吹き飛ぶと
アーロン達と魔人ネケンが合流してしまった。
魔人ネケンはゆっくりと立ち上がり笑い声をあげる。
「こんな場所にいたか!バジリスク!」
アーロンとアルは魔人ネケンの忌々しい姿に唾を飲む。
アルはナイフを構え
「その姿…お前は何なんだ?」
魔人ネケンはレイモンドから受けた攻撃のダメージが残っていたのかフラフラしながら
「復讐の鬼だ!そのバジリスクに愛する者を全て殺された哀れな男の成れの果ての姿だ!」
魔人ネケンの叫び声と共にレイモンド達も合流する。
バーキン博士は美しいバジリスクに見惚れていた
アーロンは銃で魔人ネケンに先制攻撃を仕掛け
「バジリスクは殺させない、お前の事情は知らんが黒衣の者達の話を聞かせてもらおう!」
魔人ネケンは空を見上げ憎悪に満ちた笑い声を上げる。
「この森にいるのはバジリスクだけじゃない」
魔人ネケンが大きく鳴き声のような叫び声を上げると、巨大な何かがやって来た。
木々を薙ぎ倒し咆哮を上げ猛毒を撒き散らしながら、その姿を見せる
魔人ネケンの背後に現れたソレは
バジリスクと同じ大きさまで成長したヒドラだった。
ヒドラは鋭い牙を剥き出しにし、レイモンド達に威嚇する。口から滴り落ちる液体が地面に触れるとジューッ!!という音を立てて煙が上がる。
アーロンはレイモンドに合図をして攻撃を仕掛ける「遅れるなよ!銀髪野郎!」
レイモンドは鼻で笑い構える
「お前こそな、犬っころ!」
その後ろでバジリスクとバーキン博士を庇うアイボリーとアル。
アイボリーが青く光る液体の入った瓶を取り出し
「私がヒドラをやります!」
しかし、アルが腕を掴みそれを止める
「馬鹿野郎!お前一人でどうにかなる怪物じゃないぞ!」
バジリスクは口から守っていた2つの卵を吐き出し、三人に告げる。
「私がやります…親の役目は子供達を守ること」
バジリスクは雄叫びを上げバジリスクの気を引く
バーキン博士は慌てながら
「残された子供達はどうするんだ!あなたがいなくて、誰がこの子達を育てるんだ!」
バジリスクは優しい眼差しで呟いた
「私は人間を信じている」
それを告げたあと、バジリスクはヒドラに戦いを挑む。
レイモンド、アーロンは歪な姿をした魔人ネケンに苦戦を強いられていた。
レイモンドは腰に掛けた小瓶を手に取り、それを飲み干す。「こっから手加減はできない」
魔人ネケンはレイモンドの自信に
「手加減?ふんッ必要ない!!」と言い放ち攻撃を繰り出すが、魔人ネケンの腕をアーロンの大口径の拳銃で撃ち抜く
「お前は一人で、俺たちは二人だぞ?」
アーロンの攻撃に魔人ネケンは距離を置き
「それがどうした?心が咎めるか?戦いに平等なんてありはしない!」
魔人ネケンは目にも留まらぬ速さでレイモンドの懐に入り強烈な一撃を脇腹に食らわせる。
さすがのレイモンドも呻き声を上げ後方へと殴り飛ばされてしまう。
アーロンは舌打ちをした瞬間に拳銃で魔人ネケンの頭を撃ち抜こうとするが、全て躱されてしまう。アーロンは魔人ネケンの頭に標準を合わせながら呟く「前に会った時よりも強いな」
魔人ネケンはアーロンに撃たれた箇所を右手で押さえると左手の傷は瞬時に再生する。
「この程度の攻撃では簡単にはやられん!」
しかし、横から飛び出してきたレイモンドの拳が魔人ネケンの頭を捉え、その勢いで吹き飛ぶ
「余所見をする暇は無いぞ!」
魔人ネケンは深く息を吸い紫色の煙を吐き出す。
体中の傷が瞬く間に回復していき、魔人ネケンは首を鳴らし真っ赤な爪を尖らせ、アーロンに向かって走り出した。
「余所見をするほど余裕があるんだよっ!」
アーロンは近付く魔人ネケンに向かって発砲するが全て虚しく泥濘んだ地面に命中する。
魔人ネケンはアーロンの間合いに入り鋭い爪をアーロンの喉元目掛けて突き出すが、アーロンは拳銃を握っていない手で逸らすが魔人ネケンの爪はアーロンの頬を裂いた。
空振りになった瞬間にアーロンは膝を上げ魔人ネケンの腹を蹴り上げたあと、怯んだ隙に銃口を腹に押し当て最大12発の大口径弾を連続して撃ち込んでいく。
その攻撃が効いたのか魔人ネケンは後退りをしながら、腹を抱え膝を地面に着く
アーロンは息を切らしながら拳銃に弾を込め
再び魔人ネケンの額に銃口を突き付け黒衣の者達の事を聞き出そうとする
「黒衣の者達とは、何者だ!!答えろ!」
魔人ネケンは頭を左右に振りながら
「すでに気付いているはずだ…髑髏星。」
レイモンドは髑髏星という言葉を否定する
「ありえない…髑髏星はとっくの昔にリードの死が理由で解散し、その後にカフマンが超常現象調査委員会として新たに組織した!」
「新たな髑髏星として生まれ変わったのだ!」
魔人ネケンは緑色の血を吐きながら笑みを浮かべ
「リードの意志は"ネア"様に受け継がれ新たな(髑髏星)が誕生した…もう誰にも止められない!」
魔人ネケンは一瞬にしてアーロンから拳銃を奪い
アーロンの胸に向かって発砲する
レイモンドは駆け寄りアーロンを突き飛ばし
放たれた弾丸はレイモンドの背中に命中する。
魔人ネケンはアーロンから落ちた弾丸を拾い装填する
アーロンはレイモンドを抱え距離を取る
「レイモンド!」
力無く倒れ込むレイモンドをアーロンは庇いながら、もう一つの拳銃で応戦する。
魔人ネケンが発砲した弾丸をアーロンは弾丸で防ぐ。
魔人ネケンはジリジリと二人との距離を詰める
「その銃は、この銃と同じ装填数だな?そいつを庇いながら戦うのは愚かだぞ?」
アーロンは頬の血を拭い笑う
「そうだな、俺もそう思うぜ」
お互いの全ての銃弾が衝突し相殺されると魔人ネケンは銃を投げ捨て赤い爪でアーロンの喉元を狙う
「言い忘れたことがある、こっちの銃は最大13発装填できる」
アーロンは残りの1発の弾丸を魔人ネケンの眉間に撃ち込んだ。
魔人ネケンの再生能力は驚異的だが脳へのダメージの回復には時間が掛かると踏んだアーロンは
その隙にレイモンドが持っていた紫色の液体が入った瓶の中身を口に含ませる。
すると、みるみると傷口は塞がりレイモンドは意識を取り戻した。
「やったのか?」
アーロンは首を横に振り魔人ネケンが横たわる姿を見つめる
「いや、決定打に欠けるダメージだ…脳へのダメージ、腹に複数の大口径の弾を撃ち込んでも死なない…」
レイモンドは自分の拳を眺め
「ああ…外部からの衝撃に強く、驚異的な再生能力…ダンピールの報告にあった外骨格マーマンに当てはまる特徴はあるが、アイツは何だ?」
考えている間に魔人ネケンの傷は再生し、立ち上がり雄叫びを上げる。
その頃、バジリスクはヒドラの複数の頭に悩まされていた。
「この森に賭けて、我が子のために、貴様の息の根は私が止める!」
バジリスクは首に噛み付いたヒドラの頭を
腕で掴み噛み切って吐き捨てる。
ヒドラは千切れた箇所から二つの頭が生え再び大きな口を広げバジリスクに噛み付こうとする。
「これでも再生出来るなら再生してみなさい!」
バジリスクはヒドラの頭を掴み、猛毒が滴る口の中に炎の息を体内に送り込む。
ヒドラはもがき苦しみながら、バジリスクの腕から逃れようとするが鋼を切り裂く腕力を誇るバジリスクの両腕からは逃げられない。
最後の抵抗で残りの頭でバジリスクに噛み付き毒で犯しヒドラは燃え尽きた。
バジリスクは毒に苦しみながらバーキン博士の近くまで行くが倒れ込んでしまう。
「ヒドラは倒した…あとは魔人ネケンを…」
アーロン、レイモンドは魔人ネケンと激しい戦闘を繰り広げ、お互い憔悴しきっていた。
ここで余裕ある魔人ネケンは頭を右手で叩き笑う
「ここまでだ人間共…俺の復讐の邪魔はさせない」
レイモンドは最後の瓶を取り出し飲み干すと、
歯を食いしばり拳を強く握る。
「復讐を終えたら、どうする?」
魔人ネケンはレイモンドの質問に対して答える
「復讐は終わる事はない。バジリスクを根絶やしにするまで終わることはない!!」
アーロンは拳銃に弾を込め溜息を零す
「復讐なんてしたところで虚しくなるだけだ」
魔人ネケンは赤い吐息を吐き苛立ちをみせる
「虚しくなる?笑わせるな…貴様如きに何がわかる!?」魔人ネケンはアーロンに急接近し、赤い爪で攻撃を仕掛けるがレイモンドがカウンターを入れる。
「おい…お前だけが辛い訳じゃないんだよ!」
レイモンドは怯んだ魔人ネケンの頭部に向かって踵を振り下ろし見事なまでに魔人ネケンの頭部に命中する。
そのあまりの衝撃波で大気、木々が揺れる。
土埃が立ち込める中、レイモンドは確かな手応えを感じていたが魔人ネケンの姿はそこには無かった。「どこに消えた?アーロン!」
レイモンドはアーロンに見失ったことを伝えると
魔人ネケンはアーロンの背後を取り、長く伸ばした爪でアーロンの背中を突き刺す。
「背中がお留守だぞ!」
アーロンは激痛に悶え背中から腹に突き抜けた爪を掴み
「クッ!もう限界だ!」
魔人ネケンは笑いながら爪を深く突き刺す
「なんだ?なんだ?情けない声を漏らすじゃないか!なら、さっさと死ね!」
魔人ネケンの爪をアーロンはへし折り拘束から逃れると、アーロンの体から蒸気が立ち上がる。
その姿を見たレイモンドは感じ取る
アーロンが本気を出す…
魔人ネケンから受けた傷が瞬く間に回復していき
アーロンは獣の雄叫びを上げる
「畜生…カフマン。賭けには負けた。」
アーロンは巨大な狼の怪物に変身して、驚く魔人ネケンを殴り飛ばす。
「人間じゃなかったのか!?」
魔人ネケンはすぐさま立ち上がり体勢を整える
しかし、アーロンの鋭利な爪による連続攻撃に対して反撃することも出来ず防戦一方だった。
レイモンドは先程の攻撃の反動で動けない。
アーロンは魔人ネケンを鋭い爪でズタズタに引き裂いていくが魔人ネケンの再生能力が、それに追いついていた。
アーロンの変身時間は短く短期戦であれば問題ないが魔人ネケンは未だに倒れそうになかった。
「こいつ…しぶといな。」
魔人ネケンはアーロンから上がる蒸気を見て
獣化にはタイムリミットがあると踏み、逃げて時間を稼ぐことに専念する。
「ここまで逃げれば時間切れ…!?」
逃げ回る魔人ネケンの先回りをして目の前に現れたのは、ギラギラ光る長いナイフを構えたアルだった。
アルの長けたナイフ捌きは魔人ネケンの回避能力を上回り、魔人ネケンの体に傷を負わせていく。
「そこッ!!」アルは気合いを入れてナイフを胸に向かって投げ魔人ネケンの胸にナイフが突き刺さる。
魔人ネケンは刺さったナイフを抜きアルに向かって投げ返すがアルは予備のナイフを振るっただけで向かってくるナイフを弾き返した。
「クソっ!!」
初めて魔人ネケンは自分が劣勢だと理解し、再び逃げ出そうとするが、逃げた先には弱ったバジリスクが待ち構えていた
「逃がさないわよ…」
バジリスクの掌で押し潰そうとするが魔人ネケンはギリギリ耐えてしまう。
「ふ、ふざけるなぁー!」
アーロンの獣化が解け、銃を拾い魔人ネケンの右腕を撃ち落とすと、魔人ネケンの体勢が崩れる。
魔人ネケンの右腕は即座に新しい腕に生え変わりバジリスクの掌を支える。
「まだだ…まだ!?」
アーロンは容赦なく魔人ネケンの両脚の膝を撃ち抜くと、ガクンッ!と体勢を崩し抵抗も虚しくバジリスクの力によって押し潰されてしまった。
最後の力を振り絞ったバジリスクは魔人ネケンの息が止まったのを確認すると静かに手を上げ
苔た地面に横たわった。
「やっと…。この森で静かに眠れる」
To be continued
作者SIYO
いつも読んでいただき、ありがとうございます😊
私の暇潰しが、誰かの暇潰しになればいい。
「カフマン」「死神と俺の日常」シリーズを書き直すことになりました^_^
まあ書き直すっていうのは、もっと面白く、もっと分かりやすくするためにするだけなので、内容は変わりません👍
ちょこちょこ書き直しをしていきます。
ちょっとだけ勉強しながら頑張って書いてます!
そしてネットだけでなく、ちっぽけな書籍にもしようかと笑
自作ですが!!
イラストも絵が上手い人に頼もうかと笑笑
少しでも、私の頭の中の世界観を形に出来たらなと思ってます
「カフマン」シリーズには続々と新たな勢力、怪物、ユニークな登場人物が登場する予定です!まだ模索中ですが!