わたしは駄目な子だったと思う。自分でいうのもなんだけどね。成績も一番下から数えてすぐだし、かと言って運動も全然だめ。歌も下手だし、絵も書けない。はっきり言っちゃうと何にも出来ない駄目な奴。それがわたしだった。
変な話だけど、こんなわたしにも友達っぽい人達はいた。休み時間とか、学校の後は何となくその人達と一緒にいたし、それなりに楽しかった。「ほんと楓ってどんくさいよねw」がその人達の口癖だった。勘違いしないでほしいんだけど、それはいじめとかじゃなくて、冗談っぽい感じだった。結構いるのかな?弄られキャラってやつ?別に不愉快でもなかったし、そういうものって割りきってやってた。ほんとの話だし。
よく前は成績よかったのに、高校に進学してから成績悪くなる人っているんだよね?でもわたしはそういうのじゃなくて、最初っから悪かった。毎日毎日わかんない授業を受けて、下手な運動をさせられて‥授業そのものが嫌いだったな。それでも受験生になったから死ぬ気で頑張って、高校に進んだら何か変わるかもって思って。だから、こんな私があの高校に受かったのは神様からの奇跡かもしれないって本当に嬉しかった。
結局何にも変わらなかった。勉強は更に難しくなったし、レベル的に無理して入ったんだから付いていけるわけないよね。運動も同じ。昔の苦しみをもう一回味わっただけだった。周りのみんなは出来るのにわたしだけ出来ない‥そんな気持ちわかる人いるかな‥?友達がそうやってからかいたくなる気持ちもわかるよ。
実は、こんなわたしでももう大学進学は決まってたんだよね。もう周りについていくのに疲れてたわたしは、名前を書けば受かるような大学を推薦で受けて、もう受験は終わってた。周りのみんなが必死に勉強頑張ってるなかで、わたしはそれを見てるだけだった。「え、もう受験終わったの!?いーなー楓は。じゃあうちらの応援しててよねw!」
そういって笑ってたけど、みんなそんな大学かよって感じで内心バカにしてたんじゃないかな。
友達なんてこんなもんだ。自分より出来ない人が目の前にいると安心するんだよね。あんまり低レベルな人って苛められもしないんだよ。みんなの言うことわかんないふりをして、その場で笑ってればこいつ鈍いなーって受け入れられるんだよね。わたしは今までずっとそうやって来たんだし。多分これからも‥
本当は言いたいこと一杯あったし、わたしの気持ちを聞いてほしいことだってあったけど、「頭の悪い」わたしはそれをみんなに主張しちゃだめなんだって。みんなとうまくやってくにはそれが必要だってずっと自分をおさえてた。
みんなが受験終わった春休みに、みんなで学校に集まるときがあった。勿論合格したひと、落ちた人もいた。「俺大学行ったらひたすら遊ぶんだぜ!今まで勉強したぶん取り返してやる!」
「今回落ちちゃったけど、もう一年勉強して絶対あそこ受かるから!」‥そんなのをたくさん聞いた。
みんなすごいよね。やりたいこととか一杯あって。
努力とかできて、結果を出せてさ。わたしには無理だな‥なんか、これから大学行ったとして何が出来るんだろ。また人にあわせて、出来ないまんまで‥つまんない人生を送るのかな‥やだな‥ちょっと疲れたな‥
気がついたら、誰もいない校舎に忍び込んでた。こんな悪いことをしたのは生まれて初めてかも。屋上のフェンスに持たれて下を見下ろした。こんな景色、見たことなかった。このまま飛び降りたら、どうなるのかな‥「ちょっとそこのお嬢さん。あっし‥」ザザザッ!
‥まただ。ここから先が思い出せない。次に思い出せるのは、二人と出会えた所から‥
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「あー、やっぱりやっちまったか。あたしら現実には何にも出来ねえからなぁ。こういう時はやるせねえよなぁ」
「それを言っても仕方がないじゃない。それが出来たらそれこそ大問題よ。」
「‥二人は?誰?」
「あたしは舞、こいつは咲だ。よろしくな。」
「よろしく。といってもあなたは死んでるんだけどね。」
「え‥わたしやっぱり死んだんだ‥」
「やっぱりって何だよ。自分で飛び降りておいてよ。」
「自分が死んだことを自覚できない幽霊なんてごまんといるわ。というか、そういう類いの幽霊は死んでる事を伝えたら成仏するのだけれど‥このこは違うみたいね。成仏する気配がないわ。」
「えっと、じゃあ二人も死んでるってこと‥?」
「そうよ。成仏の条件がわからないから、ここにいるだけ。だから時間だけはあるの。取り敢えず、あなたの話を聞こうかしらね。」
「えっ‥?わたしの話?」
「なんだよ。いきなり知らねえ奴と話なんか出来ねえからよ。ここに来た以上、お前もどこにもいけないんだぜ?」
嬉しかった。わたしの事を聞いてくれた人なんかいなかったから。この二人とならきっと‥
「わ、わたしは楓。好きなことは‥」
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時は流れて、わたし達は色んな話をした。いつもの考察だけじゃなくて、下らないこと、生きてたら出来たこと、これから出来ること、本当にたくさん。
生きているときには出来なかったこの二人と巡り合わせてくれた神様には少し感謝をしなくちゃ。勿論わたしの口数はそんなに増えた訳じゃないけど、ちゃんと聞いてくれる初めての人に出会えた。本当に幸せ。こんな生活がいつまでも続いてくれたら‥
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「ちょっとそこのお嬢さん。あっしの頼みをきいて下さいよ?」
「わっ!?だ、誰?」
「名乗る程のものじゃありませんぜ。お嬢さん、今死のうとしてらっしゃる。この世に恨みでも?」
「恨み‥?恨みなんかないよ。ただ疲れちゃった。邪魔しないでほしいな。」
「やっぱり。いいですかい?自殺者の末路は2つ。凄まじい恨みで悪霊になるか、恨みがない奴は‥」
「ど、どうなるの?」
「未来永劫、それを繰り返し続けるんでさぁ。あんたなら飛び降り続けるって事。大変ですぜ来る日も来る日も。しかも終わりが無いんですから。まぁ中にはインチキで助かった奴もいるんですが、普通はあんなこと有り得ません。耐えられますかい?」
「わかんないよ。死んだあとのことなんて。」
「そりゃ尚都合がいい。じゃあ黙ってきいててくだせえ。今この学校には、存在してはいけない存在が2ついるんですよ。そいつらを消したい。あっしもそこそこの力があるとはいえ、二人は凄まじい力を持ってて手が出せないんですよ。」
「わたしに何しろっていうの?」
「簡単です。あっしの力で、あんたに仕掛けを施しやす。まぁ簡単に言えば、次元爆弾みたいなもの。時期が来ればあの二人の霊力をすいとるんです。いや、たぶん二人は自分から霊力を差し出すでしょう。そうすれば、二人は消滅しやす。まぁとにかくあの二人と仲良くなってくだせぇ。あと、その仲良くなってく様子を記録してくだせえ。それさえしてくれたら、死んだあとのループをやらなくて済むようにしてあげやしょう。悪い話やないでしょう?」
「よくわかんないけど、それで死んだあとも苦しまずに済むの?」
「それはお約束しやす。肉体的には、ね。」
「わかった。好きにしてよ。」
「助かりやす。あ、そうそう。思念を読みとられても困るんで、このやり取りは記憶から消しておきやす。頑張ってくだせえ。」
作者嘘猫
明けましておめでとうございます!
年末忙しくて、1週間空いてしまい申し訳ございません!次でこのシリーズを完結させます。お待ちくださいね!