「戻ってきて最初に言いたかないけど、最近めちゃくちゃ寒くね?」
「本当に。前は感覚そのものがなくなってたから全く感じなかったけれど、あっちから戻ってきて感覚が戻ってる気がするわ。これじゃまるで生きてる人間と一緒ね。」
「ま、まぁ色々服とかストーブとかあるから、ほら暖まって暖まって!」
この3人は「オカルト研究会」を自称し、今も他の生徒が帰った後、空き教室で勝手に集まりお喋りをするのが日課になっている。ある一件により学校から出られるようになったのだが、なんだかんだ学校を彷徨いている女子高校生の幽霊である。
いつもぼーっとしていて、少し抜けている楓
少し口が悪く、考え方にどこか時代を感じさせる舞
オカルト知識が豊富だが、その内容が少し偏っている咲。
この物語は、その3人による会話劇である
「最近の学校はストーブとかあるから、寒さを凌ぐには困らなさそうよね。進んだ所なんか暖房もあるみたいだし。」
「マジか。便利な時代になったもんだなぁ」
「今日は何についての話なの?」
「そうね‥折角だし、季節と怪談に関する話でもしようかしら。」
「季節?怖い話なんか年がら年中その辺に転がってねえか?」
「正確には、その季節だから効果がある話って意味よ。怪談には色んな種類があるわよね?中でも有名なのは山怪談、海怪談、等のアウトドア系話は夏が舞台の事が多いわ。最も、冬に海とか行かないから当たり前なのだけれど。」
「そんな当たり前のことを言われてもなぁ。あ、そういや怪談といえば夏の夜にやると涼しくなるとか何とか‥」
「納涼、というものね。怖いと思う感情を利用して涼しくなる事を目的とした肝試しとか怪談大会とか‥夏場に怪談が多くなる理由の一つね。昔からの名残よ。後はお盆の時期も夏で、それに絡めた話も作りやすいし、何より学生は夏休みっていう一大イベントかあるわね。ある程度余裕のある時出ないと怪談は怖さを発揮しにくいのよ。読む側も登場人物も。そういう意味では、大人より子供の方が怖がりっていうのは当たり前の事なのよ。あとは夏は日が落ちるのが遅いから、それに引っかけた怖い話もあるわね。夕方の時間が長くなるから。」
「逆に、冬の怪談はないの?」
「今回はそっちがメインね。冬にしか演出できない最高の舞台装置、雪山があるわ。」
「あ、何か変なスイッチが‥」
「凄いわよ。雪山怪談はごまんとあるけれど、旅客機が雪山に墜落して命は助かったけど、雪山に残された人達の行動記録を書いた「雪山」は雪山怪談の中で傑作だと思うし、雪山で遭難して救助された人が幻影を見る話「ゾンデ」、後は2人で遭難して、一人が凍死したからその場に埋めたはずの死体が、毎晩なぜか隣に戻って来てる原因を探る話も舞台は雪山よ。いずれにしてもキーワードは遭難ね。雪山は人気スポットであると同時に、すぐそこに危険がある場所でもあるから。その恐怖を煽る良くできた話よ。今度ちゃんと教えてあげるわね。」
「雪山かぁ‥確かに登山が好きな奴っているけど、まぁあたしら普通の女子高生には縁遠いはなしだよな。山なんか登らねーし。今一ピンと来ねえわ。」
「‥突っ込まないわよ。冬で意外と怪談に身近なものは例えばこたつね。」
「こたつ?あのみんなで暖まるやつだよね?」
「ベタだけど、誰もいないこたつに足を突っ込んだらいないはずの第三者の足があった、とか、こたつに潜り込んだら知らない顔が笑ってたとか」
「こっわ!冗談じゃねえよ!」
「大丈夫よ。そういうのはインパクト重視の短編怪談だから。じっくり読めば怖くなくなるわ。むしろしっかり読むと怖いのはむしろさっき言った奴よ。そこが面白いのだけれど。」
「あ‥雪だ‥!見て見て!」
「年明けそうそう雪なんて良いものがみれたわね。雪も大事な因子よ。儚さの象徴、見えない、見たくないものを綺麗なもので隠してくれる清純さ。美しいと同時に命を奪う恐ろしさ‥雪女なんて有名すぎる話ね。因みに私は同じ作者なら青柳の方が好きだけれど‥」
「何でもいいけど、つもったら雪合戦しようぜ!」
「あーもう!あんたって奴は‥少しは情緒って物を」
「今のハーンだよね。私は怪談じゃないかもだけど草ひばり好きだよ。」
「あら、珍しいわね。中々マイナーな作品なのだけれど。」
「おーい。腹減って来たし、何か旨い物でも食いに行こうぜ!」
「はぁ‥この続きはまた今度二人で話しましょうか。今はあのバカを黙らせることにするわ。」
「‥というか、食欲が戻って来たのはもう突っ込まないんだ。わたしも行こっと。今日は何食べようかな‥おでんとか食べたいな。」
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感想
あれ以来、ノートをとる癖がついちゃった。別にもう書かなくていいけど、折角のみんなとのやりとりは残しておきたいからね。出てこなかったけど、冬だとクリスマスの怖い話とかありそうなんて思った。追記、今日の晩御飯はやっぱりおでんになりました。おいしかった。お酒は‥まだ未成年だから飲めなかったけどね。
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「か~!やっぱりおでんって言ったら日本酒って相場は決まってるんでさぁ!旨いなぁこれ。値段も安いし庶民が出来る唯一の贅沢だほんと。大将、大根もう1つお願いしやす。つゆ多目で。」
作者嘘猫
シリーズ続編一段目ですね。本当に寒い。
今回、もとネタのある話が結構出てきました。これどれだけ有名なのか知らないんですけど、全部初めて見た、聞いた時に感激した作品です。
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