私は私。他の誰でもないの。私は私。あなたはだあれ?
そう、〇〇っていうんだね。
そっかぁ、いい名前ね。
でもね、違う。違うのよ。〇〇なんていないの。
だってそうでしょう?
よーく考えてみて。
誰にそんな風に呼ばれてる?誰があなたをその名前で呼んでくれるの?思い出してみて。
あああ、ごめんなさい、言い方が悪かったわ。今よ、今。今呼んでくれる人はいる?あなたのママは去年ご自宅で首を吊られたみたいだし、お姉さまは行方不明だったよね?
ほらね、ほら。いないでしょう?
昔は呼ばれていたのかもしれないけれど、もういないのよ。みんないなくなっちゃったの。
そう、死んだのよ。この世にいないの。だから、あなたを〇〇だって知っている人はもういないのよ。
大丈夫。本当にいないわ。一人もいないのよ。大丈夫。私嘘は言わないの。
私?
私は、そうねぇ、なんて呼びたい?好きに呼んでいいよ。あなたに呼んでもらえるならなんでもいいの。
ヒトゴロシ?
あら、素敵な名前ね!私にも一応名前はあるけど、世界中で私のことをそう呼んでくれるのはあなただけ。その名前、大切にするね!
いい?あなたの名前は私が決めるの。呼んでくれる人がいなければ、名前なんて意味はないもの。
だからねあなたの名前は今私だけのものなのよ。だから、その名前は教えてあげない。後で、ね!
あ、あなたを信用していないわけじゃないのよ。ただ私が独り占めしたいだけ。そういう気持ち、あなたにもわかるでしょ?
…ごめんね、私のこと嫌いになったよね。
好かれてその他大勢に埋もれてしまうより、嫌われてでもただ唯一の存在になりたかったの。なんてね。
本当にごめんなさい。私はあなたのことは誰よりも知っているつもり。あなたの好きなことも、好きな色も、好きなコトも、誰よりも知っていたいの。
もちろん普通にしててもいちばんになれる自信はあったわよ。でもね、こうすれば、ほら。他にだあれもいないの。私しかいないの。ほら、いちばんでしょ?
だいじょうぶ。私がいるから。
あ…
ふふふ、
嬉しい。
あなた今私のことしか考えてない。
あなたの頭の中は私でいっぱい。
他の子を好きになって浮気することはあるかもしれないけれど、他の人を恨んだりしないでしょ?ふふふ、ひとりじめね。
この日が来るのをどれだけ待ちわびたか。
あなたのことばかり考えて考えて、
考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて、考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて、
もうおかしくなりそうだったの。でも大丈夫、私は正気よ。
あなたをずーっと見てたの。
あなたとっても人がいいから、いろんな人と仲がいいのね!そしていろんな人から名前で呼ばれて、やきもちやいちゃった。
あなたのママだって、あなたを生んでくれた人だもの、とっても大事なんだけど、でも、、、、ね。首しめちゃった。
あなたのお姉さん、とっても綺麗な人ね!肌も白くて美人で。お人形さんみたい。そのお肌がご自分の血で赤く染まるところ、今でも目に焼き付いているわ。
あ、勘違いはしないでね、そういうことが好きなわけじゃないの。本当よ。ほんとうは大嫌いなのよ。
でもね、一人また一人死を見届けるたびに、
あ、また一人あなたのことを呼ぶ人がいなくなった…って思うと、思わず数えてしまうんだ。
あと何人で終わりって。
ちょうど映った鏡の中で、返り血を浴びた女が笑っていたわ。ほんと不気味ね。
そしてやっとこの日が来たわ。あなたを私の、私だけのものにする日が来たの。
長かったわ。
ねぇ、
聞いてる?
聞こえてるよね?
ちゃんとわかってるのよね?
泣いてもダメよ。
そんなもので私の想いは揺らがないわ。
むしろ燃え上がるのよ。
ふふふ
ねえ、
わかってるでしょ?
あなたなのよ。
あなたが私にしたことを私があなたにしただけよ。
パパも、ママも、弟も、沙織ちゃんやみのりちゃん、かずやくんにももちゃん、真澄先輩…みーんな私からあなたは奪っていったんだもの。
ずるい。
ひとりじめはずるいわ。
だからね、私もあなたとおんなじように呼んであげるね。
あなたの名前は私だけのものよ。
ひ・と・ご・ろ・し
さあ、逝きましょう。大丈夫。私も一緒に逝くから。
ばいばい。
大丈夫、逃さないわよ。
作者春秋
6作目です。
勢いで書きました。
書き始めにイメージしていた内容とどんどんズレていってしまいましたがそのまま書ききってしまいました。
読みにくい文ですがどうぞ読後の感想などお聞かせ下さいませ。