オヤジの行動がとんでもない方向へと・・・まぁ結果的にこれが最高によかったのだけれどね
慰霊祭まで1週間ほど
お寺では慌ただしい準備をしていたそうである
費用面はすべておふくろの財団から出すということで話がまとまった
近隣の住職たちも話を聞き大いに感動して参加するとのこと
こちらもレンタカーの予約をしたりお寺へ行く準備で慌ただしかった
お寺には今回は宿泊はせずに慰霊祭が終わったらそのまま自宅へ帰る予定だ
ただ、慰霊祭までの時間の間だけ仏間と隣の部屋を使ってほしいとのこと
後の部屋は一般客が宿泊しており使用は無理と住職から電話があった
その一般客もその慰霊祭に是非参加したいとの要望があり連れていくことになった
あっという間に1週間が過ぎた
土曜日の朝にいつものレンタカーへ行きハイエースを借りてきた
お昼前には出発する予定だ
朝10時ごろにS子の両親がやってきた
オヤジやおふくろと挨拶をしてリビングで孫たちと一緒にいてもらった
またしても大所帯である
荷物を車にどんどん載せていった
やはり後ろの座席は荷物でいっぱいになった
私とS君で交代で運転することにした
いつもの如く高速を走りお寺までのんびりと走った
お寺についたのが午後4時ごろ
今回は荷物を降ろすことはないのでそのまま全員仏間へ
和尚様がスケジュールのお話をしはじめ
午後9時ごろには終了する予定にしようかということでおふくろに承諾をもらっていた
本堂には関係者が集まって雑談をしていた
一般客も泊っておりお寺は賑やかだった
「おっちーー、すごい、賑やかなんだぞ」
「すごいな、今日はどのくらいの人が集まるんだろね、ママ!」
「やはり、みんな、心のどこかで何かひっかかるものがあるから参加するんだと思う
今みたいな、物があふれてる時代に生きてる者は絶対にオハル・オアキちゃんたちの生きた時代を理解することは絶対に無理だと思う」
「だな・・・・」
「だとおもうよ、パパ!!」
午後5時になった
「さぁ・・・皆さん、そろそろあそこへ行きましょうか・・・
今日は一般のお客さんも参加しますので私は一般のお客さんを案内しますので少し早めに出ますわい
あわてずにゆっくりと来てくだされ」
「はい、のんびりといきます」
子供たちや義理の両親を車に乗せ
忘れ物はないか確認して出発した
お寺からおよそ20分ほどの距離
会場付近にさしかかると路上には車がたくさん停まっていた
空いてるスペースを探してなんとか停めれた
「すごいなぁ・・・車の数・・・」
「だよね・・・これはちょっと問題だな・・・クレームが入らなければいいけど・・・」
路上にはまたすごい数の人々
およそ300人はいるだろうな・・・・
お坊さんの数も25人くらいはいそうだ
会場には祭壇やら供養の道具がぎっしりと置いてあった
一応私たちは来賓として特別な席に座った
すごい熱気だ
午後6時になり村長の挨拶が始まった
村長から今回の慰霊祭の感謝の謝辞をもらいおふくろが壇にあがり
今回の経緯を説明をしていた
やはり総帥というか元学級委員長
堂々としていておふくろではないような感じを受けた
「ばっちゃ、緊張していないのかな・・・こんな大勢の前で・・すごい!!」
「楓、ばあちゃんは総帥だよ、財閥の長だからこういうことは慣れてるよ
関係会社100社を抱える総帥だからね」
「うん・・・」
「俺・・・いずれ・・ばっちゃの跡を継ぐんだよな・・・俺・・・自信なくなってきた
こんな大勢の前で話ができるかどうか・・・」
「仁!!大丈夫!徐々に慣れていくよ・・・ばあちゃんは成績優秀だったし人前で話すのは得意だったからね、ばっちゃが徐々に教えてくれるさ、本当はパパが跡を継ぐはずだったんだけどな・・・ばあちゃんから「お前は人を仕切る、管理する能力はないから総帥は無理だ」とはっきりと言われたよ」
「パパ・・・」
「仁はこれから勉強していけばいい、お前なら財閥の総帥として絶対にやれるよ」
「かな・・・・」
村長の話が終わりいよいよお坊さんたちの供養がはじまった
25人のお経が会場全体を包みなんとなく空気が変わった気がした
会場にいる全員が目をつぶったりお経をあげたりして
ここで亡くなった者たちへの成仏を願う声が天まで届いてると思う
「パパ!!!蛍が飛んでるよ!!!」
「え!今は秋だよ、蛍は飛ばないよ、楓!!」
いや・・・飛んでいた
草むらから小さな光がひとつ、ふたつ、みっつとどんどん天空に飛んでいく
会場にいた人たちもこの光景にざわつきはじめた
気づけば・・・数百いや数千の小さな点が天空を飛んでいた
「おっちーーー、綺麗なんだぞ!!!こんなの初めて見たんだぞ」
「すごい!!!どんどん空へ上がっていく!!!」
「ここで亡くなった人たちがどんどん昇っていくんだね
奇跡だよね!!」
もう会場は歓喜の声が響いていた
小さな点が大空を覆いまるで天の川みたいな感じになっていた
およそ1時間のショーだった
「綺麗だったね、ママ!」
「おっちーー、みんな、天国へ行けれたね
やっと呪縛から解かれたんだね」
「そうだよね、みんな解放されたんだ、俺、絶対にこの光景を忘れないぞ」
口々に感嘆の声をあげていた
午後9時を過ぎてもなかなか帰る人はいなかった
思い出話や雑談やら・・・・
午後10時を過ぎたあたりから徐々に帰り始めた
「いやはや・・・ものすごい奇跡を見ましたわい
慰霊祭をやってよかったですわい
これでこの地区もどんどん良くなっていくでしょうな
これもすべておふくろさまのおかげじゃわい」
「和尚様、ほめすぎですよ、うちの手下が余計なことをしたばかりに事が大げさになってしまいました・・・まぁ・・・結果的に良かったと思いますけれどね」
「いやいや・・・オヤジ殿の行動がなければ慰霊祭はなかったですわい
これも縁ですわい」
((大きなお兄ちゃん、大きなお姉ちゃん、トト様、カカ様たち、ありがとう!!!
村の人が天国へ来てくれたよ、またお祭りができるよ、ありがとう!!!))
「え!?今のオハルちゃんの声?」
「パパ、私も聞こえた、オハルちゃんだよ」
「アタチも聞こえたんだぞ、オハルちゃんだぞ!!!」
全員がオハルちゃんの声を聞いたようだ
「わしゃも聞こえましたわい
これで天国の争乱も落ち着くんじゃないですかな
お経をあげてると耳元で「ありがとう」の声が聞こえましたわい
ここで無念の死を迎えた人たちの感謝の言葉ですかのぉ・・・
本当に飢饉はむごいですわい
ここらへんの地区でも全滅した村がたくさんあったと聞き申したわい
もう2度とこのような飢饉で飢え死にするようなことがないように
願うしかないですな」
「オハル・オアキちゃんたちのような子供たちを出さないようにしないとね」
「ですわい・・・」
「これで一つ、因が消えましたと思いますわい
でもまだまだ餓鬼たちは狙ってくるでしょうな
特に楓ちゃんや葵ちゃんは狙われやすいですからな」
「はい、必ずお守りと薬は肌身離さずに持たせます」
「うん、和尚様、私はちゃんと持ち歩いてるよ」
「あたちもだぞ!ママが作ってくれた袋に入れてるんだぞ」
「おおお、それはそれはいいことじゃ
肌身離さずに必ず持ち歩いてくだされ
気分が悪くなったな、と思ったらお薬を1粒飲んでくだされ」
「うん、わかった、和尚さま」
「あたちもわかったんだぞ」
毎朝、必ずお守りと薬を持っているか点呼している
「アニキ・・・もうそろそろ帰ろうよ・・・もう私たちだけが残ってるよ」
「だな・・・」
「たしかに、帰りましょう、まだまだこの土地には因がたくさんあるようですし・・・
徐々に慰霊をしていきましょう・・・わたしもここには長居したくはありませんわい」
「でわ・・・私たちはこのまま家へ帰ります」
「本当はお泊りしてのんびりとしてもらいたかったですわい
ですが・・・宿泊客がいますので・・・年末にはのんびりとできると思いまわすわい」
「はい、また年末にお邪魔します」
F子がひさびさに何かを感じたらしい
「アニキ・・・久々に鳥肌が立ったよ
まだ・・・ここの土地は浮かべれない者たちがウヨウヨしてる感じ
あんまし・・・長居はよくないよ」
「そっか・・・わかった・・・帰ろう」
「みんな、車に乗ってくれ、忘れ物ないかもう1度確認するんだぞ」
「帰ろう、パパ、わかったぞ」
忘れ物の点検をしてそれぞれ車に乗った
もうあたりは私たちしかいなかった
シーンとしていて静寂さを超えて少し恐怖を感じた
和尚様の車が先に出て私たちはその後についていった
途中で和尚様と別れ一路自宅へ向かった
もう午前0時を回っていた
「パパ、眠いよ、寝るね」
次々と眠気が来たのか子供たちは眠りについた
「おっちーー、パパ、私も眠いんだぞ、先に寝るね」
「私しも、アニキたち、気を付けて運転してね」
F子とS子も眠ってしまった
義理の両親も寝てしまっていた
一気に車内は静かになった
車のエンジン音だけがよく聞こえてきた
「S君、静かになったね、S君も先に寝てくれ、次のSAで交代だ」
「おっし、分かった、少し寝るわ」
SAで順番に交代しながら運転をし無事に家に着いた
もう朝方の4時を回っていた
今日は日曜日、ゆっくりと寝よう
作者名無しの幽霊
いや・・もうびっくり
秋にホタル(霊)が舞うとは・・・・
25人の僧侶たちによるお経は迫力があった
見物客もそれぞれの思いがありその念がここの土地で呪縛されていた者たちを解放させたと思う
まさかこんなにもギャラリーが来るとは思っていなかった
本当は静かに慰霊祭をするつもりだったんだが・・・・
お祭りのような賑やかな慰霊祭となってしまった
和尚様の話だと月に1回はここで慰霊のお経をあげることになったらしい
F子も言った通り、まだこの土地には不浄な霊がいるみたい
「少しでもお経をあげて解放してあげたい」と和尚様は言っていた
少しずつだが解決していってるような感じはする
でもまた油断はできない
当分の間、子供たちには不自由な生活をしてもらうことになるけど
我慢してもらおう