毎朝玄関を出ると、真向いの道路で必ず掃除をしているおばさんがいる。
無口で不愛想で目も合わせない、当然挨拶はしてこない。
365日いつも淡々と道路を掃いている。
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一度ぐらい、こちらから声をかけてみようかと思うが、
なぜかとても気が重い。結局、声をかけずに通り過ぎる。
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2年ぐらいたっただろうか?
いつものようにおばさんを見てみると、
おばさんは向かって来る車に指をさして、叫んでいた
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「あいつが…、撥ねた、私を撥ねた!」
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その時、おばさんと初めて目線があった。
その顔は、大きくえぐれて半分が潰れていた。
ドロドロと血が滴り、車が近づくにつれて、えぐれた顔面から血が「ブッシュ-」と噴き出した。
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右腕の関節は「ボキッ」っと鈍い音をたてて、真逆に折れ「ググッ」っと捻じれていく、
左足首がパックリとはじけるように裂け、真っ白い骨が突き出てきた。
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おばさんは瞬く間に倒れ、吹き出る血であたり一面が血の池のようになっていった。
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指さしていた自動車は、おばさんの上をゆっくりと通り過ぎようとしている…
運転手がたばこを咥えながら一瞬俺を見た。そしてふてぶてしく目線を戻した。
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悲惨な事故現場は何事もなかったように消えていた。
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俺は見逃さなかった、いつの間にか運転手の真後ろにおばさんが乗車していたこと、
そしておばさんは、運転手の首に両腕をぐるりと伸ばし、しっかりと絡めていた…
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それ以降玄関先の道路で、おばさんが掃除をすることはなくなった。
作者NIGHTMARE