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スーパーカブと女子高生 ①

中編3
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スーパーカブと女子高生 ①

この頃、年をとったせいか歩くのがすごく苦になってきた。

昔取った杵柄でバイクにでも乗るかと思い、何に乗るかを考えてみた。

そう言えば、日本には世界に誇るホンダのスーパーカブがあるではないか、

生誕60周年で、全世界で1億台も売り上げたモンスターマシンだ。

どうせ乗るなら、「スーパーカブだ!」と思い、早速バイク屋にいってみた。

なんと、最近のカブは「カッコいい!」

実に洗練されている、新聞屋さんや郵便局、蕎麦屋の出前を想像していたが

完璧に裏切られた、もちろん良い意味でだ。

特に、クロスカブには絶句した。

「欲しい、これがいい!」と思ったが、乗り出しで32万円…、直ぐにあきらめた。

そそくさ帰ろうとすると、バイク屋の主人が声をかけてきた。

「こんにちは、お客さん、何探してるの?」

「カブです、クロスカブ凄くいいですね~、でも高くて手が出ませんよ」

「かなりの人気車種だからね、割賦もできますよ」

「いえいえ、久しぶりのバイクなので、慣れるまで中古で我慢します」

たわいもない話をして、新車はあきらめて帰ろうとした、

「お客さん中古でいいのなら、下取りのカブがあるよ、見てみます?」

「えっ、それは助かります~見せてもらえますか?」

「どうぞ~」

店の奥へと案内された。

別棟のへと続くドアを抜けると、そこにはバイクが30台ほど並んだ倉庫があった。

どのバイクも中古なのか、整備されて綺麗ではあるがどう見ても新車ではない。

中には、ブルーシートをかぶった整備前のバイクもあった。

バイク自体に損傷はないし、ほぼ完ぺきに修理されているようだ、

しかし、完全に事故車だと分かるバイクも数台あった。

なぜなら、それらのバイクの隣には、それぞれ以前の所有者が寄り添っているからだ。

大型Harleyの隣には、全身がブラックの革ずくめで、革ジャンの胸部が引き裂かれ、

肋骨が2本飛び出している男が、

真っ赤なGSの脇には、赤と黒のつなぎを着た男が、右手にヘルメットを抱え込み

失ってしまったらしき左手首をなぜかヘルメットに差し込み、

左腕でおさえ切断面をくっつけようとしている。

白いスクーターの脇には、かろうじて数本の血管のようなものでぶら下がった左目を

ぶらぶらさせて、激しく貧乏ゆすりをしている男がいた。

そんなバイカーたちに気づかないふりをして中へ進むと、一台のカブに目が止まった。

そのカブだけが、他のバイクにはない独特の雰囲気を醸し出している。

理由は明白だった、他のバイクのバイカーたちとは違って、そのカブの脇には、

紺の制服を着た清楚な女子高生が立っているからだ。

どこをどう見ても事故った形跡が見当たらない。

それどころか、小首を傾げ、笑みまで浮かべて嬉しそうに立っている。

どう考えても、この場所にはとても似合わない存在だ。

彼女が隣に立っているだけで、所有していただろう何てことはないカブすら素敵に見える。

俺は思わずバイク屋の主人に聞いていた。

「すみません、これも売り物ですか?」

「それなら、込々8万円でいいよ!」

彼女に一目惚れなのか、そのスーパーカブを衝動買いしてしまった。

そして、その女子高生とスーパーカブとの出会いから、この先、世にもおぞましい恐怖体験をすることになるのだった。

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