中編5
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カフマンという男 X-10

古代の神々の生き残りについて。

SIC特別フロア極秘資料室兼会議室

今回の上海空港に現れた黒尽くめの集団は手当たり次第に、人々を生きたまま焼き殺している現状。被害の拡大を防ぐため上海空港を隔離。

隔離から4時間経過…。

上海空港が映し出されるモニターを見つめる3人の人影の内の一人が喋り出す

「対策はどうなってるんだ?」

「警察隊が我々の指示で空港の隔離に成功していますが、突破されるのも時間の問題かと」

暗い会議室の中で二枚の資料がテーブルの上に配られる。

「相手は古代の神の生き残りで「断罪の神」です」

今から39年前に「断罪の神」を崇めていた最後の崇拝者が死んだことで生贄を捧げる者がいなくなり、自ら生贄を探すようになった。

姿を現す際には石器の仮面を被り、黒い姿で人間の姿で現れる。

男は眼鏡を外し、目の前に座る男に懐疑的な視線で睨み

「神だと?」

「ええ、人間たちは神と呼んでいますが」

「彼らを総称して古の者と呼んでいるのです」

遠い昔、神々と呼ばれた古の者達は遥か彼方から来訪し、地上を支配していた。

しかし、人間は神々の力だけでは物足りなくなり、次第に神々の力を我が物にするという人間たちが現れ始めると、神々は純粋な崇拝者だけを箱舟に乗せ洪水を起こした。それぞれの古の者達は自分の崇拝者だけを箱舟に乗せ救済した。

もちろん、洪水から免れても被害は甚大だった。

自分の崇拝者が全滅し、絶望した古の者もいた。

僅かな人間たちに己の力を崇拝者の代表に与え人類の再興を図ったが、そこで誤算が生じてしまう。

一部の古の者が覚醒し、反乱を起こしたことがきっかけで古の者達の狩りが始まった。

生き残った古の者達は姿を変えて現代に潜んでいるのです。

もしくは封印さていたが解放された。

「話が飛躍し過ぎていないか?」

眼鏡の男は溜息交じりに話す。

「信じられないのも分かります。だが、真実です」

「カフマン、あなたを信じていないわけではないがね」

カフマンは会議室の電気を点けると上着を脱ぎ

「証拠が欲しいと?そうですね?ルワンド議員」

扉の横に立つドルマンに退出するように促したカフマンはルワンド議員の前に立つ

体に力を入れ狼の怪物に変身したカフマンを見たルワンド議員は汗を流しながら

震える手で眼鏡を取る。

「これで信じてもらえますかな?ルワンド議員?」

「まさか本当に実在するとは…」

ルワンド議員は元の姿に徐々に戻るカフマンに驚きながらも

「SICにはあなたのような怪物が他にも?」

カフマンは笑いながら答える

「ええ、勿論。怪物という呼ばれかたは気に食わないですが」

「すまない、話を戻そう。今回の上海には誰が派遣されている?」

豊かな香りがする紅茶を口に含み

「ヒヅキ、ラクの二名が現場の近くで待機している。」

ルワンド議員は渡された二人の資料を眺め

「随分と若いな」

「この二人は最初は一般人だったが怪物と戦った経歴を持っている」

ヒヅキは吸魂鬼と戦いで生き延び、後に最少年齢で対アンデッド部隊の隊長になった男

一方、ラクは幼少期に吸血鬼に両親を殺され、ダンピールの下で吸血鬼殺しの技術を磨いた少女。

「どうです?経歴には問題は無いでしょう?」

「だが、相手は古の者なんだろ?二人で大丈夫なのか?」

カフマンはテーブルの資料を集めながら笑う。

「二人なら問題ありません」

ルワンド議員は何かを言いたそうな表情だったが、言葉を飲み込んだ。

「…。」

「では、何か進展があればドルマンから連絡させますので」

「わかった」

二人は握手をしてカフマンだけが部屋に残った。

紅茶を淹れ直し、椅子に座って寛いでいると携帯が鳴った。

「もしもし、新しい客?分かった、今からロビーに向かう」

淹れ直した紅茶を残念そうに眺め上着を着て部屋を後にした。

その頃、ロビーでは。

「ここで雇ってもらいたいんですよ」

火縄銃のように銃身が長い銃を背中に担ぐ一人の男が騒いでいた

「だから、困りますって。」

珍しくドルマンが手を焼いていると

「どうした?何事だ?」

男はカフマンに気づくとドルマンを押し退け

「あんたが偉い人?」

男は懐から一枚の紙を取り出しカフマンに見せる

「こいつを知ってるだろ?」

下手くそな絵が描かれていたが彼には、その絵が誰なのか分かった。

「ヘルシングの報告にあった黒鬼の秋元だね」

ドルマンは腕を組みながら男に尋ねる

「それで?あなたの名前は?」

男は落ち着きを取り戻し

「私は「ヤマト」って言います」

「わかった、ヤマト君。ここには何の用で来たんだ?」

ヤマトは一冊の古びた本を取り出し

「鵺を狩るために来た」

ドルマンは本を開き書かれた中身を確認する。

「これほどまで鵺の詳細が書かれている本は中々無い。どこでこれを?」

「私の師匠の記録だよ。長年、日本で鵺狩りをしていたんだけど師匠が行方不明になって探してる最中に、秋元に出会ったってわけです」

カフマンは火縄銃に視線を送ると

「これは鵺や妖怪を殺すのに有効な「神威」と呼ばれる特別な銃です」

「これのどこが特別なんだ?」

ヤマトは神威を取り出し構える

「これはヒヒイロカネ鉱石で造られた銃なんです」

神威はヒヒイロカネで造られた銃で妖怪退治には欠かせない武器です。

日本の妖怪は並大抵の武器では倒せないし、今だと陰陽師なんて存在しない。

まあ隠れ陰陽師はいるかもしれないけど、政府から認められた陰陽師なんて存在しないからね。大抵、偽物が多い。霊感があるだけで陰陽師気取りのやつが多くて

トラブルが起きたりする。その中で神威は陰陽師の祈祷が無くても妖怪を倒せる武器なんだ。多分、ヒヒイロカネが吸血鬼に有効な銀みたいな役割をしているんだと思う。でも、神威を誰が製造したのかは判明していない。

師匠は神威を魔導具の一種だとも言っていた。

所有者が石ころを手にすると神威に装填できる弾丸に変化するんだ。

大きさ関係なく小さな弾丸になる。

装填された弾丸が発射されると元の形状に戻り時速1600㎞で飛んでいく。

所有者が触れた物質はヒヒイロカネと同じ性質に一時的に変化させる。

最大の大きさは1tトラックだが、速度は落ちた。

カフマンは長い説明を聞きながらドルマンに視線を送る

「ここに来た理由は、日本で意図的に鵺を繁殖させている組織ヤマナリを潰すためだ」

「たった一人で?」

ヤマトは銃を担ぎ笑う

「一人で?ありえないだろ」

カフマンの表情を見てドルマンは呆れながら

「必要なものは?」

「そうこなくちゃ!忙しくなるぞー」

カフマンは微笑みながら

「あとはドルマンの指示に従うように」

To be continued…

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