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中編6
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天愚 X-2

天愚 X-2

2019年

旧日本軍の研究所が東北地方にあるという噂を聞きつけた二人の廃墟マニア。

「藤田!もうすぐ廃村の近くに着くぞ、車で来れるのはここまでだ」

藤田…廃墟マニアで動画投稿者、相棒の松本を連れて研究所に向かう。

「なあ、松本。本当にこんな山奥に廃村と研究所があるのかよ?」

車を停め助手席に座る藤田を見て

「なあに、心配しなさんなって」

ふざける松本の顔に空のペットボトルをぶつける

「わかったよ、機材を持って出発だ。テントもあるよな?」

松本は車から降りて荷物を降ろしながら

「あるよ、非常食も用意してあるから遭難しても平気だな」

藤田は呆れながら

「遭難なんてする気なんてさらさらないからな」

「備えあれば憂いなしってな」

そういいながら火を起こすためのターボライターの火を点ける

「はいはい」

顎をしゃくれながら返事をする松本に

「なんだよ、これだけで1万以上するんだぜ?」

二人は気づいていない。すでに迷い込んでいるのを。

ここまで来て引き返すわけにもいかず、鬱蒼と木々が生い茂るけ獣道を上っていく

松本が15キロのリュックを背負いながらぼやく。

「なあ、ここまで静かな山なんて他にないぞ?鳥の囀りが聞こえないんだぜ?」

「確かに…。虫の鳴き声も聞こえないなんて…」

廃墟マニアで動画投稿することが趣味である二人は、

噂で日本軍の研究所跡地が東北地方の廃村となった村の近くにあるという情報を手に入れた。

主人公たちは森を彷徨い歩いていると薄汚れた老人を発見

乱れた呼吸をしている老人が心配になった藤田は近付こうとするが

その老人は近付く藤田に気づき襲い掛かろうとする

老人の体は黒い羽毛に覆われ赤く充血した眼をした怪物に変化した。

背後から「どけ」という言葉の後に瞬く間に怪物は真っ二つになり地面に崩れると、切断面からは煙が立ち上がるのを見送った後、後ろを振り返ると刀を構えた軍服を着た将校のような男が立っていた。

「貴様たちは何者だ?どうしてこんなところにいる?」

その男の刀は赤く熱を帯びているように見える

「さ、さっきのは何ですか!?」松本は震えながら問いかける

男は死体を足で軽く蹴り

「それより…」

「僕たちは迷ったんです」

男は二人の服装で何かを察したのか質問する

「お前たちは日本人か?」

藤田は頷き辺りの不穏な雰囲気で額から頬にかけて汗が垂れる

「はい」

男は周りを見渡し、鋭い眼差しで草木が生い茂る傾斜を睨む

「ここは危険だ。安全な場所で詳しく聞こう」

将校の服装の男に案内され朽ち果てた研究所にたどり着く

「私は鏑木。で? 君たちは?」

松本は震えながら質問に答える

「俺は松本」

藤田は研究所を見渡しながら

「私は藤田です。それであの怪物は?」

鏑木は床の藁を退けて防空壕の入り口が現れた。

「まずは中に入れ」

防空壕に入ると意外なことに広く手入れがいきとどいているベッドが目に入る。

「お茶でも飲むか?」

藤田達は緊張しながらも椅子に座りお湯を沸かす鏑木を見つめ

「はい、いただきます」

鏑木は二人の持ち物に視線を送り、再びお湯の入った鍋を見て質問する

「日本は戦争に勝ったのか?」

緊張感漂う空気を鼻から吸い込み藤田が話す

「負けました」

鏑木は二人に背を向けたまま鍋を見つめ

「そうか…戦争から何年経っている?」

「1945年に終戦。現在は2019年で74年が経ってます」

「…。」

三人は鍋のお湯が沸いた音を、ただ黙って聞いていた。

「さっきの怪物は「天愚」と呼ばれている」

私は詳しいことは知らないがヒヒイロカネを探して、この地域に拠点を立てた。

探索中に洞窟を発見、最奥には謎の石碑があり奥にはソレがいた。

科学者たちはソレを「天愚」と呼びヒヒイロカネと同時に研究していたが…。

兵士、村人数名が疫病に感染した。感染者が死ぬと「天愚」に転化した。

瞬く間に拠点は「天愚」に包囲され、生き残った立木大佐、佐々木と他の兵士がヒヒイロカネを使い既に死んでいた私と桑田の遺体を使い魔導人形を造り出した。

「天愚」に対抗するために。

しかし、拠点から脱出に成功したが近い村まで1里の距離が10里になっていた。

最悪なのが見えない壁に阻まれたこと。

藤田が頭を抱え鏑木に質問する

「あなたは死んでいた?魔導人形?どういうことですか?」

鏑木は服を脱ぎ捨てると、滑らかな鋼鉄の体が露わになる。

一見、硬いように見える体は人間の生身のように柔軟に動いていた。

「これで証明できたな」

ヒヒイロカネは一枚の落ち葉を燃やした熱で湯が沸かせる。

その熱伝導性のおかげで我々は活動できている。

「例えば…」

鏑木は真っ赤に熾きた火鉢の炭の中に手を突っ込んだ。

しばらくして手を戻し熱を帯びた掌を上に翳し、天井に向け強烈な光が掌からカメラのフラッシュのように出ると、天井は真っ黒に焦げていた。

「熱を帯びていても、触れると」

真っ赤になっている手に息を吹きかけ

おもむろに松本の手を触ると、慌てて手を引っ込めた

「やけどするだろ!あれ?」

鏑木の手は先ほどまで熱を帯びていたはずだが、何故か冷たくなっていた。

「吸収した熱は動力として体内の核に保存され、体温は息を吹きかけるだけで急激に低下する。」

開いた口が塞がらない様子だったが松本がふと藤田に質問する。

「1里って?」

「日本だと3.9Km」

藤田は透明な壁について質問する。

「ここまで車で来たけど透明な壁なんてなかったです。」

鏑木はお茶を注ぎながら納得する。

「これで分かった。入ることが出来ても、出ることは出来ないということか」

飛躍する内容に頭を抱える松本は心配そうに

「ここは拠点じゃないのか?」

「この山には戦時中に建てられた拠点が39箇所存在している」

鏑木は足元にある古びた地図を取り出し指を差す

「今いるのがここ23番だ。」

藤田は細かく描かれた地図を眺め

「円を描くように見えない壁が?」

「ああ、これが昔の地図だ。比べてみると以前よりも空間自体が膨張している。」

松本は地図を見て小さなことに気付く

「この円の中心に何かあるんじゃないか?バリアを張るような何かが」

鏑木は聞きなれないバリアという言葉を復唱する

「バリア?」

「透明な壁のことです」

三人は地図に再び視線を落とし考え、鏑木が思い出したように

「紹介が遅れたな、そこにいるのが桑田ことスサノオだ。」

藤田、松本の後ろに身動きせず瞑想していた。

「こ、これが桑田さん?」

目を覚ましたスサノオは礼儀正しく頭を下げた。

よろしく。とでも言っているかのようだった。

「彼は言葉が話せないんだ」

鏑木は武器庫を漁りながらヒヒイロカネ製の刀を二人に持たせる

「これなら天愚を殺せる」

松本は思いついたように話す

「それなら一匹残らず殺して脱出しよう」

鏑木は希望をへし折るように

「無駄だ。奴らは、殺しても次から次へとやってくる」

「絶望」という言葉が二人の頭をよぎる

スサノオは野太刀を眺め地面に突き刺し、おぞましい気配を感じ取る。

「来たか」

鏑木もそれを感じ取ったのか二人に戦闘準備に入るように合図する。

「いいか?俺から離れるな、後ろはスサノオが守る」

藤田はヒヒイロカネ製の刀を握りしめ

「向かう場所は?」

「結界の中心地の近く、39番研究所に向かう!」

To be continued...

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