JR○○町駅の路線を乗り換える経路でモスキート音が鳴っている。
ジィー ジィー ジィーと、下手くそなコオロギが鳴くような音であまり気持ちの良い音ではない。
本来、モスキート音は人を不快にさせる音であり、聞き続けると頭痛や、吐き気などの症状を起こすものだ。
また、高齢になると聞こえにくくなり
主に子供や若者が被害を多く受ける。
いつも疑問に思っていた。
なぜこの経路だけモスキート音を鳴らしているのか?
毎日通勤で通るため、いつも嫌な思いをしていた。
耐えきれなくなりとうとう駅員に聞いてみることにした。
駅員「あ、いやーね……。理由はありまして、まずネズミ対策、もう1つが若い不良グループのたまり場にならないようにするため鳴らしてるんですよー……。はははは……。」
なんとも言えない苦笑いで申し訳なさそうに話した。
なるほど。
それなら仕方ないかと思い、なるべく気にするのをやめるようにした。
しかし、1つ気がかりな事があった。
終電間際の0時45分。
残業などで終電で帰ることになると必ずこの時間帯に経路を通る。
その際、この時間だけ
ジィー ヴヴぁヴヴ ジィー ジィー ヴヴア゙ア゙ア゙ア゙ア゙
という感じでモスキート音の他に何かが鳴っているのが気になっていた。
モスキート音に関しては気にしていなかったが、この終電間際の0時45分の異様なモスキート音には気になっていた。
何とも不気味な音だった。
まるで、女性の唸り声に聞こえ、時間帯も重なり気味が悪かった。
ただ、朝と夜とで、音を変えてるか、機械の調子が悪いんだろうと自分で納得して、考えないようにしていた。
ある日のこと、仕事帰り同僚、仮にAとして、
Aと遅くまで飲んでしまって、Aの終電がなくなってしまった。
しょうがないので俺の家に泊まることになり、
終電間際、少し早歩きで、駅構内を歩いていた。
時刻はちょうど0時45分になろうとしていた。
「そうそう!ここだよさっき話した気味悪モスキート通路www」
その通路に入った瞬間Aの表情が変わった。
A「え……。おいまじか……。やばいやばいやばい。
う、う、は、は、はしれぇー!!!!!」
Aが絶叫して俺の手を引っ張り走りはじめた。
「なんだよなんだよ!!どうしたんだよ!」
問いかけてもAは返答せず、ボロボロと涙を流しながら何かに怯えるように絶叫して走っていた。
その通路を抜けた後、Aは気絶。
近くにいた駅員に救急車を呼んでもらい、そのまま着いて行き、Aを病院に送った。
命に別状はないが、何かの大きなショックにより気を失っている。
記憶障害や、他の後遺症があるかもしれないとのことだった。
わけも分からず、気を失っているAの手を握り泣いていた。
元々、Aは多少霊感があったため、あの通路のモスキート音が何か影響しているんじゃないか……?
と思っていた。
次の日
偶然、昨日の駅員が居て、話しかけてきてくれた。
駅員「昨日の彼はどうでしたか……?」
俺 「まだ気を失ったままです」
駅員「そうですか……。」
俺「あのー……。昨日彼が気を失ったあの通路で何か事件とか起きていませんか?」
単刀直入に聞いてみた。
駅員「事件?あー、ありましたよ……。私も長いものでしてね。20年前程前でしょうか……。」
駅員が話してくれた。
以前、もう取り壊されたが、この乗り換えの通路にトイレがあったようで、その女性トイレで痛ましい殺人事件があったらしい。
犯人はそのトイレ周辺でたまって酒を飲んでいた不良グループのメンバーで、ナンパしたら逃げられ、頭に来て女性を殺してしまったらしい。
その時間は深夜で、助けもおらず、不良グループに女性トイレに連れ込まれ、レイプ、殴打、リンチと喰らい最終的には死んでしまったようだ。
噂ではその死体も悲惨なものだったらしく、
髪、性器はライターで焼かれ、両目は潰され、手足の骨が折れて、骨が剥き出しになっていたらしい。
駅員「そのモスキート音に混ざってるような声……。私には聞こえませんが、もし本当ならその女性が貴方にずっと助けを求めてたのかもしれませんね…………。」
駅員が青白い顔で言った。
2日後
丸3日立ってようやくAが目を覚ましたと
Aの両親から電話があった。
しかし、彼の様子がどうも可笑しいらしい。
なにか知らないかと泣きながら訴えかけられた。
急いでAの病院に向かい、病室に入った瞬間。
言葉を失った。
短髪で綺麗に整えていた髪の毛は、
まるで焼かれたかのようにチリチリになり、
手足が上手く動かせないのか、無造作にバタバタさせて、白目を向いたまま狂ったように叫んでいた。
ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!ジィー!
どこか聞き覚えのある、あの音で。
作者ブラックスピネル