これは母が小さい頃体験した話です。
その夕方、母は母の母、つまり祖母と一緒に歩いていたそうです。
すると、祖母が「あっ、火の玉だ」と空を指差します。母が見ると、たしかに夕焼けの中、中空に1つ、火の玉が漂っています。火の玉はガス火を思わせるような青い燐光であり、火の中には顔が1つ、進行方向を向く横顔がはっきりと見えたそうです。2人で、じっと見ていると、一度母達の方に顔を向けたそうですが、すぐに向き直し、そのまま飛んでいったそうです。
母が唯一見たものだそうですが、祖母と一緒に見たため、あれは間違いなく火の玉だと今でも信じているそうです。母の人柄を考えると、嘘だとは思えない話です。
作者ター坊