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中編4
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飽きた

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確か高2の時だったと思う。

ネット掲示板で見かけた「異世界に行く方法」ってのを実際にやってみたことがある。

そんなことを昨日1人寂しく宅飲みしている時に思い出した。

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俺がサイトで見た方法は、

まず5㎝×5㎝の紙に出来るだけ大きく、赤いペンで五芒星を書いて、その五芒星の真ん中にこれまた赤いペンで「飽きた」って書く。

で、その紙を持って寝て朝起きた時にその紙が無くなっていると成功、そこは異世界ですってやつだった。

今も検索すれば出てくるんじゃないかな。

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学校の昼休みかなんかの時間にサイトを読んで、その日に早速実践した。

なんでそんなことをやろうと思ったのかはよく覚えてないけど、多分若気の至りってやつだと思う(笑)

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その日学校から帰って、母親が仕事から帰って来る前に準備を整えた。

学校のPC教室からくすねたコピー用紙をきっちり5㎝×5㎝にカットして、五芒星と指定の言葉をちょっとだけ丁寧な字で書いた。

その紙を2回折って、枕の下に隠しておいた。

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そのあとは、まあいつも通りに夕飯を食べて入浴をすませて、友達とLINEしながらネットで改めて手順の確認をして、なんてやってたらいつのまにか寝る時間になった。

布団に潜り込んで、さっき隠しておいた紙を右手にギュッと握り込んで目をつぶった。

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ちょっとだけ怖いような、でもワクワクしてるようなで変に緊張してなかなか寝つけなかった。

興奮のせいか耳鳴りがしていた。

それでも時計がてっぺん回る前には眠りについた。

朝、けたたましい目覚ましの音で目が覚めて、枕元を見たら紙は開いたままそこに落ちていた。

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そういえばそんなことあったなぁと、酒を飲みながら、なぜか変に気になってずっと考えていた。

そしたら、ふとあることに気がついた。

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(そういえば…あの日の目覚ましって6時半に鳴ってたような……)

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当時、家から学校まで自転車で20分くらいだったから早起きする必要もなく、いつもは7時過ぎに目覚ましが鳴るようセットしていた。

それに当時使っていた目覚ましは、漫画なんかでよく見る時計の上に2つベルがついた古典的なものだったので、スマホのアラームみたいにいくつも時間をセットすることはできないはずだ。

スマホのアラームを併用していたわけでもない。

それなのにあの日は鳴るはずのない時間に目覚ましが鳴った。

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それを思い出したことをきっかけに、「飽きた」をやる前と後と変わったことが思い出された。

高校時代、友達との約束が自分だけ違った日付を記憶していたり、実家や学校の造りになんとなく違和感があったりとかだ。

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もっと具体的にいうなら、

約束はみんなの言う2日後だったはずだとか、

実家の階段は2回曲がっていたはずなのに今は1回しか曲がる所がないとか、

学校ではみんな当たり前に通ってるけど図書室って外から入れる扉なんかついてなかったよな、みたいなことだ。

もちろん、全部俺の記憶違いだと言われてしまえばそれまでだ。

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あともう一つ、これは「飽きた」を実践した当日の話だ。

今まですっかり忘れていたことだが、紙を握って眠りについた日、俺は夢を見た。

なぜ忘れていたのか不思議なくらい怖い夢だった。

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俺は夢の中で目を覚ました。

辺りは真っ暗で、カーテン越しに見えるはずの街灯の明かりも、何もなかった。

目は覚めたが布団から出たくなくてゴロリと寝返りを打つ。すると普段使わない物置と化した勉強机が見える。

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そこに何かが立っていた。

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まるで真夏のよく晴れた日にアスファルトに映る影がそのまま起き上がってきたような感じだった。

ただ、影というには異様に立体感があった。

それがゆっくりと俺の方へ歩いてくる。

身体が勝手に震えてきた。

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気がつけば影は目の前まで来ていた。

そこから俺の右手に握られている紙を奪おうとする。

取られてはいけない、そう思うが震えて手に力が入らない。

そしてとうとう紙が奪い取られ、影は紙を開いて覗き込む。

そこで気を失い、次の瞬間には頭上で目覚ましがなっていた。

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そんな夢だった。

思い出しても鳥肌ものだが、これだって変に緊張して寝たせいで見た悪夢だと言われれば納得できなくはない。

いや、できることならそう納得したい。

でもこれは、この記憶だけはどう説明できたものか。

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俺は本棚にしまわれた、高校の卒業アルバムを引っ張り出して写真を眺める。

写真の中で俺はブレザーにスラックスを履いて、友達と無邪気に笑っていた。

(やっぱり…そうだよな……)

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今日まで、ついさっきまで忘れていた。

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高校時代、私はプリーツのスカートを履いていなかったっけ……?

Concrete
コメント怖い
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初コメント失礼します。
普通に怖いです!

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