中編4
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天愚  X-3

天愚 Ⅹ-3

前回、意を決して防空壕から出た一行は、既に天愚の猛攻を受けていた。

鏑木が前方から走ってくる天愚の頭を拳銃で撃ち抜き、動きが鈍ったのと同時に刀で頭部を焼き斬る。

「数が多いな…仕方ない最大出力で焼くぞ」

「!」

その言葉を聞いたスサノオは二人を抱え鏑木に背を向ける。

右手を向かってくる天愚に拳を、ゆっくり向け力を溜める。

核がある胸が熱によって赤くなり、その熱が右腕に流れていくと拳を開いた

「消し炭になるがいい」

掌から出たカメラのフラッシュのような強烈な閃光が天愚を襲う。

強烈な閃光は前方だけでなく、閃光を見た者の眼球も焼き尽くす。

「もう大丈夫だ。最大出力の光を見ていたら目玉が潰れていたぞ」

「もっと早く言ってもらえます?」

藤田が汗を垂らしながら言うのを鏑木は微かに笑いながら軽く何度か頷いた。

最初の奇襲は鏑木の攻撃によって殲滅することに成功したが、四方八方に焼け焦げた天愚の異臭で藤田達が鼻を指で塞ぐ。

「それにしても数が凄いですね」

鏑木は辺りに注意を払いながら

「これは少数の群れにしか過ぎない」

スサノオが仕草で最大規模を表すが藤田達に伝わらず鏑木が笑いながら説明する

「要するに、これの何十倍もの大群と戦ったことがあると言いたいんだ」

その時、稲妻のような音が轟いたのと同時に鏑木は刀を抜き

状況が理解できない藤田、松本は刀を構える。

「スサノオ、撃退用意!」

スサノオは野太刀を抱え士気を高めるために胸を叩く。

四人の前に現れたのは巨大な蛇だった。

「こ、こんなのどうやって倒すんですか!」

「やつとは何度も戦ってきた!」

その通り、巨大な蛇の体には鏑木達による攻撃で付いたと思われる傷が見える。

煌く体を見せびらかすように頭を上げた。

「こいつ、挑発してるのか?」大蛇は鏑木の言葉を理解しているかのように頷いた。

松本は足が震え尻餅をつくとスサノオが拳大の石を拾い大蛇に投げつける。

瞬時に大口を開け石を飲み込んだ。

「!」

スサノオは野太刀で斬りかかる。最早、人間の身体能力を超えていたスサノオは大蛇の頭がある位置まで飛び上がり野太刀を振り下ろす。

しかし、大蛇は素早く攻撃を避けたが、その先には鏑木が待ち構えていた。

「お遊びは終わりだ」

刀を構え熱を帯びさせたまま斬りつけようとしたが大蛇の尾が鏑木を吹き飛ばす。

大蛇は藤田達を狙い大口を開き襲い掛かる

「やばい!?」

慌てて藤田達がしゃがむと大蛇の攻撃をスサノオが両手で大口を押さえていた。

「スサノオ…。そのまま!」

鏑木が大蛇の頭に乗り刀を脳天に突き刺そうとした時だった、どこからか声が響く

「降参!降参!負けたよ!」

大蛇の体が煙のように消えると鏑木とスサノオに挟まれるように両手を上げて若い男が立っていた。

「本当にあんたたち強いね、ほんとに人間なのかい?」

鏑木は刀を男の首に当て質問する

「貴様は何者だ?」

「俺?自来也だけど。そっちこそ何者なのよ?」

自来也はジロジロと摩訶不思議な姿の二人を眺めた後、その後ろにいる藤田達に

「さっきはごめんね!食べるつもりなんてこれっぽっちもなかったから!」

スサノオは文句を言いたげな表情で腕を組み自来也に詰め寄る

「な、なんだよ」

「なんで俺たちを襲ってきた?」

鏑木は刀を納め問い詰める

「そのことだけど、この辺に気色悪い怪物がいるだろ?最初は奴らを倒していたんだが、飽きてしまってな」

最初は修行するために、この近くの秘境で瞑想していたんだ。

そしたら見えない壁に阻まれて帰れなくなった。

そんで気色悪い怪物を倒せば出れると思ったんだけど倒しても倒しても増えるわ増えるわで。

怪物退治にも飽きたころにあんたらを見つけて

あ、なんか強そうだし戦ってみようって。

笑いながら話す自来也に全員が冷たい視線を向ける

視線に気づいた軽く咳き込むと

自来也は地面に手を当てて呪文か何かを唱えると1メートルほどの蛙が姿を現した

「互いにここから出るために協力しようじゃないか!」

自来也が蛙に乗ると思い出したように

「名前を聞いてなかったな!」

鏑木は辺りを警戒しながら

「私は鏑木、こっちはスサノオで迷い人の藤田、松本だ」

一通りの自己紹介が終わるのと同時に天愚の群れが雄叫びを上げながら現れた。

「来たぞ!噛まれたりするなよ!特にそこのお二人さん!」

スサノオは野太刀を背中の鞘に納め拳で対処しようとしていた。

二人を守りながら戦うのに野太刀は必要ないと判断したのだろう。

鏑木は刀を構え叫ぶ

「頭を狙え!頭部を切り離せば殺せる!」

自来也は蛙の名前を叫び戦闘準備に入る

「五郎丸!修行の時間だ!」

五郎丸がゲコっ!と鳴くと口から緑色の炎を吐き出し、その炎に触れた天愚は瞬く間に溶けていった。

鏑木は体内の熱を刀身に宿し天愚を切り伏せていく。

スサノオは二人を守りながら拳で迫りくる天愚の頭部を吹き飛ばしていった。鏑木、スサノオの体はヒヒイロカネで形成されているため、全身が武器と化している。

藤田と松本はスサノオがやり損ねた天愚を切り倒す。

残りの天愚を始末すると雄叫びが辺りに響き、鏑木が叫ぶ

「お決まりのデカいやつが来たか!」

普通の天愚の倍もある巨体の天愚が現れたのと同時に自来也が蛙から降りて

「鴉天愚か」

鏑木は刀を自来也に向けた

「なぜその名前をお前が知っている!」

「話すと長い。こいつを早く片付けよう、仲間を呼ばれる前に」

鴉天愚が大きく体を膨らませ耳を劈く雄叫びを上げると一斉に木々が騒ぎ始めた。

To be continued…

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