ここ最近、私はストーカーに悩まされています。
ストーカーと言っても男性ではなく、女性のストーカーです。同性のストーカーがいるなんて聞いた事がありません。でも凄い不気味です。
ストーカーが現れ始めたのは今から2ヵ月前の事です。
仕事終わり、帰宅のために夜道を歩いていると急に後ろから視線を感じました。
振り返ってみると数メートル離れた自販機の陰に、黒髪ロングの女性が自販機から半分だけ顔を出してこちらをジッと見ていました。
生気のないような白い顔でジーっとこちらを凝視しています。
背中にゾ~ッとした寒気を感じて走って自宅に帰りました。
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その日を境に、その女性は頻繁に現れるようになりました。
現れるのは決まって私が1人でいる時です。
ふと気付いて後ろを見ると電柱や自販機といった物陰に隠れてこちらを見ているのです。少しも微動だにせず、半分だけ出した顔でジッと見つめているだけ。それ以上、近付いてくるわけでもなくただそこにいるだけ。
どこに行っても現れるのに、どれだけ気を付けて後ろに注意していても接近している事にすら気付けません。気付いたらそこにいて、走って自宅に帰る頃にはいつの間にかいなくなっています。
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異変が現れたのは最近です。
寝ていると急に身体が動けなくなり、眼も開けられません。
いわゆる金縛りというやつです。
暗闇の中で必死に身体を動かそうとしながらもがいていると、身体の上に誰かがのしかかってくるのを感じました。
「誰!?」
その誰かは声をあげる事もなく私の首に手を回し、私の首を絞めあげてきました。
喉が絞められて声をあげる事もできず、身体も動かない中で私は段々と意識が遠のいていきました。
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気付いた時には朝になっていました。
夢だったのかなと思いましたが、首筋に残っていた指の痣が夢ではない事を証明していました。
直感で私は「あのストーカーだ!」と思いました。そして同時に、「あれは人間ではない」とも思いました。
そう考えればあの生気のない白い顔にも妙に納得できます。
でもそうだとしたらどうすればいいのか?私は1人暮らしで友達も彼氏もいないし、親ともあまり仲が良くないので頼れる人がいません。
悩んだあげく、会社の先輩に相談しました。その先輩は私の1個上の先輩で、オカルト好きな女性です。
彼女ならこの話も信じてくれると思います。
私はさっそく電話をかけ、先輩に事情を説明しました。ちょうど休みの日でしたので、これから家に来てくれる事に。
「話を聞いたけど、間違いなくそのストーカーって幽霊だよね…。ちょっと待って、ここに来る前にいい物を貰ってきたから」
そう言って先輩が鞄から取り出したのは1個のお守り。
「これ、邪気を払うお守り。私、オカルトな話を集めたりとかするの好きだから自衛のために同じお守りをいつも持ち歩いているんだけど、無いよりはマシだと思う」
いつも自分の近くに置いておいた方がいいとの事でしたので、外出する時も鞄に入れて持ち歩くようにしました。
それでも全く効果がありませんでした。ストーカー女は変わらず出てくるし、金縛りにいたっては毎日のように起こり、首を絞めつけられます。前は夜だけだったのに日中、横になっている時も起こるようになりました。
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さすがにもう限界です。ここまでくるともう本職の、お祓いをしてくれる人に頼むしかありません。
でもどうやって探せばいいのか…
考えたあげく、自宅から一番近い大きなお寺に相談に行く事にしました。
電話もせずにいきなり行きましたが、住職さんは快く話を聞いてくれました。
ひと通り事情を話した後、住職さんは仰いました。
「そのストーカーの女性は幽霊ですが、悪意はありませんね」
どういう事か聞いてみると、ストーカーと思っていた女性はどうやら私の守護霊らしい。
悪意が私に向けられているから、その悪意から私を守るために出てきていたとの事。
じゃあ首を絞めてきたのはいったい誰なのか?
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住職の話によるとそれは生霊だという事。
生霊とは強い恨みなどが原因で現れるもので、「貴女に強い恨みを持っている人に心当たりはありませんか?」と聞かれましたが、そんな人に心当たりはありません。
「それなら最近、誰かに物をもらった事はありませんか?念は物に宿る事もあります」
住職に言われて気付いたのは先輩から貰った「お守り」です。
それを住職に見せたら眉間に皺を寄せて、「これが原因ですね」と言われました。
住職がお守りを開けてみると小さな袋に入れられた数本の髪の毛が入っていました。
「女性の髪の毛は呪いの源にもなります。貴女の向けられた悪意はこの方が発しているものです」
そのお守りは住職の方で処分してもらいました。その日の夜は金縛りもなく過ごし、翌日の休みも外に出たりしましたが、ストーカーと思っていた私の守護霊も出てきませんでした。
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翌日に会社に出社したら先輩は仕事を休んでいました。どうも一昨日に急に高熱が出て病院に運ばれたとの事。
住職の話では「呪いは返されると自分に返ってくる」との事だったので、それが原因だと思います。
私は先輩のいない間にそれとなく周りの人に聞いてみました。先輩が私に対して何か思っていないのかを。
すると先輩の同期の社員が教えてくれました。どうも私が最近、担当していた仕事のひとつがもともと先輩が担当していた仕事のようで、先輩は「私に仕事を取られた」と勘違いしていたとの事。
その仕事は定期的に担当者が変わる仕事だったので別に恨むような事ではないんですが…
それから先輩は会社に出社する事なく会社を退職しました。聞いた話では精神的に不安定になっており、今は家でゆっくり休んでいるとの事。
これが他人を恨んだ事に対する代償だとすると、恐ろしい事です。
いつか先輩の中で誤解が解けるといいですが…機会があれば一度会って話してみたいと思っています。
作者村松明美
久し振りの投稿です。
拙い話ですが読んで下さると嬉しいです。