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短編1
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風呂に関する短い話 二

英樹さんは、いわゆる事故物件に好んで住む変わり者だ。

《地球上のあちこちで数えきれない人や生物が死んでいるのに、住人が死んだという理由で家賃が安くなるなら住まない理由がない》

とは本人の弁。

昨年は、若い女性が亡くなったという物件に移り住んだ。

家賃が相場のおよそ半分。駅から徒歩三分と好条件で、まったく不自由のない生活ができた。

あるとき、風呂掃除をしていた。

スポンジで浴槽を磨いていると、どこからか声が聞こえてくる。

か細い、女性の声だ。

近隣のテレビかラジオかと思ったらしいが、それにしてはやけに鮮明であった。

耳をすませると

《……ひとごろし……》

と再度、声。

排水口の、穴からであった。

《ひとごろし、ひとごろしぃ……》

声は昼も夜も止むことはなく、ずっと続いた。

さしもの英樹さんも不気味に思い、ほどなく引き払ってしまった。

女性の死因は

《居間での自殺》

だと聞かされていたというが、なぜ風呂場の排水口から声が聞こえたのか。

《ひとごろし》

という彼女の訴えにヒントがあるような気がするが、真相は闇の中だ。

死体処理をする者が浴室を使うのは、犯罪映画などでお馴染みではあるが。

なにかパイプ内部に、掃除できていないものが残っていたのだろうか?

Concrete
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