江戸のむかし、麹町は平川天神そばに、山田浅右衛門というお侍がおりまして。
このかた、お試し御用と申しまして、罪人で試し斬りをするのが家業だったんですナ。
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伝馬町牢屋敷の片すみに、死罪場がありまして、そこで獄門首をスパーッと一刀両断。
それは見事な腕前だったと言われております。
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さて、あるとき平十郎という大泥棒が捕まりまして。
こいつがとんでもねェ悪党で、商家へ忍び込んじゃ一家皆殺し、盗んだ金で賭場へと通いつめる。
ところがあんまり派手に遊び歩いたもんで、地回りの連中に目ェつけられ、あえなくお縄になったというわけで。
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さっそく刑場へ据えられたんですが、この男まるで猪みたいに首が太い。
浅右衛門のほうは、赤字企業の人事課長と同じで首を切るのが仕事ですから、万が一にも斬り損じがあってはならぬ。
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「すわっ」てんで普段より力を込めて切ったところ、勢い余って首はポーン
見ていた検視役人の鼻にガブリッ
もう大騒ぎになりましてナ。
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あわてて引き離そうとするんですが、よほど捕まったのが悔しかったとみえ、テコでも離れない。
どうにも困っているところへ、斬首の順番を待っておりました、ある博徒の親分が
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「どうかここは、あっしに任せてください。
ついては首尾よくゆきましたならば、なにとぞ罪一等を減じ遠島ということに」
役人もほとほと困り果てていたので
「では、やってみよ」
ということに相なりました。
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さて、親分なにをするのかと思えば、用意させたつぼにサイコロを投じまして、ダンッ!
ゴザのうえに叩きつけますってェと、ひと声。
「ちょう」
すると平十郎ニヤリと笑って。
「はん」
そのとたん、首はゴトリと地に落ちたそうで。
作者薔薇の葬列
掌編怪談集「なめこ太郎」その四十六。