短編2
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大泥棒の首

江戸のむかし、麹町は平川天神そばに、山田浅右衛門というお侍がおりまして。

このかた、お試し御用と申しまして、罪人で試し斬りをするのが家業だったんですナ。

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伝馬町牢屋敷の片すみに、死罪場がありまして、そこで獄門首をスパーッと一刀両断。

それは見事な腕前だったと言われております。

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さて、あるとき平十郎という大泥棒が捕まりまして。

こいつがとんでもねェ悪党で、商家へ忍び込んじゃ一家皆殺し、盗んだ金で賭場へと通いつめる。

ところがあんまり派手に遊び歩いたもんで、地回りの連中に目ェつけられ、あえなくお縄になったというわけで。

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さっそく刑場へ据えられたんですが、この男まるで猪みたいに首が太い。

浅右衛門のほうは、赤字企業の人事課長と同じで首を切るのが仕事ですから、万が一にも斬り損じがあってはならぬ。

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「すわっ」てんで普段より力を込めて切ったところ、勢い余って首はポーン

見ていた検視役人の鼻にガブリッ

もう大騒ぎになりましてナ。

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あわてて引き離そうとするんですが、よほど捕まったのが悔しかったとみえ、テコでも離れない。

どうにも困っているところへ、斬首の順番を待っておりました、ある博徒の親分が

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「どうかここは、あっしに任せてください。

ついては首尾よくゆきましたならば、なにとぞ罪一等を減じ遠島ということに」

役人もほとほと困り果てていたので

「では、やってみよ」

ということに相なりました。

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さて、親分なにをするのかと思えば、用意させたつぼにサイコロを投じまして、ダンッ!

ゴザのうえに叩きつけますってェと、ひと声。

「ちょう」

すると平十郎ニヤリと笑って。

「はん」

そのとたん、首はゴトリと地に落ちたそうで。

Concrete
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