風呂に関する短い話 十一

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風呂に関する短い話 十一

卓弥さんが夜道の住宅街を歩いていると、ある一軒家の前に差し掛かった。

風呂場の窓が歩道に面した家である。

入浴中だからなのか、他の部屋には灯りがついていない。

風呂場だけが暖色の照明に照らされ、複数の人型のシルエットが見えた。

大人の影が二つ、子供の影が一つ。

三人家族だろうか。

声は聞こえないが、三人の黒い影は手を振り回し、激しく踊っているようだった。

その賑やかさに思わず吹き出しつつ、通過。

後日、その一軒家は過去に火事を出しており、現在の家屋は建て替えられたものであることを知る。

おそらくあの三人家族が前入居者で、火事の犠牲者なのだろう。

《よく考えれば踊っているように見えたのは、火の粉をふりはらっていたのだと思う》

と卓弥さんは言った。

現在の家屋には別の住人が居るようなのだが、このことは伝えていない。

Concrete
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